第61話「起・発言権」
咲はまず信条戦空の、致命的なバグから考える。
「まずさ、戦空は考えた事をそのまま声に出す。を修正しなきゃいけないし、実際は沈黙しているという所とかの矛盾を何とかしないといけない」
まずは戦空が喋ってるのか喋って無いのかどっちなんだい!? という所の修正である、身から出たサビというか真に受けた人も真に受けた人なのだが。本気で信じてた人を悪く言うのもアレだが。そもそも外部に流出しているのを知らなかったら〈どっちもどっち〉と言う所が正しい。
知っているなら教えれば良いし。言いたくなければ言わなければ良かった訳で。
「例えば締切日を口で呟いただけで勝手に言いふらすとかの矛盾とか」
「まあ声の伝承と、無言での作業と。戦空が考えた事をそのまま喋る、が絶妙に噛み合っていない」
頭のいい桜愛夜鈴は、まあ戦空のバカはバカなりの悩みがあるんだな。と思った。
「小説という文字媒体で、単純明快なバカと組めない、という思想は。まあ小説を書く身としては解らないでも無い」
咲は、少年用の漫画雑誌の理屈と。小説特有の文字文学の差異は同じではない、と結論づける。変換して同じ物だと言うのは自由だが、どうみたって違う。漫画は漫画、小説は小説である。変換したところで何処かでボロが出る。……まあそれは下手な変換は……という意味になるが。
桃花先生がまず致命的なバグの修正から始める。
「行動と意思が一致してない、って所がまず無理過ぎる。リアルタイム制なら真心込めて演説すれば良いだけだけど。こっちは、同じ工程を何度も回さなきゃならない訳だから。同じ感情なはずがないんだよ……」
例えば、ランニング中に。毎回同じ〈走れ、走れ、走れ〉と念じなければならない。とか発声しなければならないと言っているようなもので飽きるし、そんな人間機械じゃ無きゃ不可能だ。というか人間じゃ無い。無理難題を押しつけている。
作業工程が別物なのだから一致するはずがない。
「ゲームマスターのお姉ちゃん的にはどう思うのコレ?」
咲は姫に判決を求める。
「んん~~、自然放置でまぁ、ある意味バカみたいに話にならない事態になっているのなら。制限というより整理整頓の〈整然〉をするべきだよね、……とは思う。てか現実世界で沈黙し続けた結果、リアルに影響を与えたのならば。単純にコミュニケーション不足……?」
まあGM姫の意見としてはそう。
だが作家と編集者とのコミュニケーションはそう簡単に取れるものじゃ無い。特に毎日の矛盾などは特にだ。
「でもリアルで声を出さなきゃ、声を出していない判定になるのは聴いてないよね……?」
咲の言い分はそう。本当だったら小説の「カッコのセリフ」は喋って良い判定になるはずなのに。肉声じゃ無いからダメ。または紙だからダメ。というルールは聴いていないのである。
そこでGM姫は監督責任として、判定する。
「ん~。じゃあ物理法則と言うより、法律的なルールだからプラス保証かな? ならこうだ。+事象を知っている状態では、シナリオのセリフ部分を肉声で発声しても何ら問題は無いが。内容の取捨選択は発言者に発言権はある+ ……こんな感じかな?」
+確定した真実のプラス保証+は次の意味合いが大きい。
+このプラスは人間側が空想に挑む為の確定した真実の保証である+
今回打ち込んだのは。
+事象を知っている状態では、シナリオのセリフ部分を肉声で発声しても何ら問題は無いが。内容の取捨選択は発言者に発言権がある+
まずこの場合、事象を知らなかった場合とは。元ネタが自分達である事を知らない時点での時系列は含まれていない、が。ルールの対象外になる。
続いて、セリフの発声を現実世界でしてもいいか? になるが、これは個々人の意思が尊重されるので。例えば、上司・または教祖に言われたからやった、または言った。では困る訳である。選択肢は常に発声した自分自身にある。
つまり、世界種クールマが出現した頃に発生した。叶えても良いのと叶えなくても良いの。これと同時に、セリフを言う、言わないは個人の自由意思に委ねられている訳である。
だから、何でもかんでもセリフ通り、または変換したセリフ通り声を発声する。は無責任者になる。
◇
「あーなるほど、風の妖精リスクの世界観の神楽スズが、変態うさぎが幻想入り紅の湘南桃花の行動に介入した現象に名称と解説が付いていないのか」
GM姫はそのように結論づけた、と同時に読解力のある咲は、実験していた鍵付きの箱の効力が、想像以上にデカかった事を察する。ちなみに映像での現象は目撃されているが、公式解説は何一つされていない。外の外界によりその現象をどうにか言語化するための名称が。各作品群によって違う事から、発見が遅れた。
「あー鍵付きの箱って結構威力デカいんだね~~」
現在、この世界で偶然? 自然? に確認されている結界は主に3つ、博麗大結界、封絶、シュレディンガーの猫箱。
で、箱と箱の間で空間がくっついてしまい、その質量が流出する現象を、ロストホール・ウルトラホール・またはゼクノヴァ。など公式が名称を明言していないのでいっぱいある。
またその定義も曖昧である。
「まずさ、スズちゃんが世界間の間に挟まって投入してきた現象を、学術的には何ていうんだろう? 一般常識の名称を知ってからじゃないと、オリジナル名称はリアリティ落ちるからさ」
咲は姫にそのように言う。
「あーワームホールとか量子トンネルじゃな、確かスターウオーズのハイジャンプでも使われてなかったっけ?」
咲はAI検索をする。
「バルク、高次元空間って言うらしいよ?」
「いや、バルクは高次であって並列した次元じゃないんだよな、同じ階級なんだよ。だから高次とはちょっと違う」
定義確認。
博麗大結界・常識と非常識の境界線。物理的な壁ではなく、「現実の科学で否定され、忘れ去られた存在〈妖怪など〉が内側に流れ込む」というフィルター機構。
封絶・結界の内部の因果〈原因と結果〉を切り離し、時間を停止させます。
シュレディンガーの猫箱・観測されるまで、内部の事象が確定しない閉鎖空間。
で、今回のスズちゃんはどの結界と関係あるかは判らないが。箱と箱を繋いで質量空間を交換してしまった現象を、通称ゼクノヴァと呼ばれている。
ゼクノヴァ・別次元・遠隔地へ質量を流出させる。基本的に一方通行だがコントロールが成功すれば、別宇宙の質量と、別宇宙の質量の等価交換が可能だと思われる。
「なんか位相空間のトンネル効果とか書いてあるよ」
「また位相か……いい加減に覚えないとな……位相……意味がチンプンカンプンなんだよ。漢字の語源から覚えないと入ってこないんじゃよな」
咲の検索に姫がややこしい名称を覚えないと行けないと頭を悩ませる。
簡単に言うと、位相は〈同じ位置にある別の状態〉らしい。
◇
ここまで経過した段階で、簡単に言うとエレメンタルワールドと、現実世界での地球での齟齬。コミュニケーション不足が露骨にあるなと思ったGM姫は導く人とは別に教える人が要るな、と思った。
「こういうのこそ、桃花先生がやったほうが良いんだけどな~」
などと申すが、桃花先生の方は渋い表情であり。
「いや……それは解るけど私の体は1つしか無いから、教えたいのは山々だけど、お前ら問題児達を束ねるので精一杯なんだよ……。もっとこう教える人を教える人達を増やさないとパンクする。それこそ身分とか階級とか無視して、天皇・大統領・アニメ監督・制作進行・漫画編集長・清掃員の社長……なんかを導けるぐらいの度量の先生っつーか……なんかこうそんな感じ。1つ1つやるのは構わないけど、それやると今起こってる最果ての軍勢のカルテットプロトコルに対応と目を配れなくなる……つーの??」
言いたいことは判る。教えたいのは山々だが、つまり教員が足りない。
しかもこの場合、話の通じない人を育てても意味無いので現場のプロの教師だ。
桃花先生はアメリカとイランの戦争の方に目を配って置かないと、原油の高騰により、食品値上げで日本どころか世界がアニメ会社を教えるどころでは無くなっている。
一応桃花先生の見立てでは、咲の行き当たりばったり戦略より。それこそストックのあるネームある状態での戦術なので一応容認している。最果ての軍勢への先生が注意をする段階では無い。と思っている。つまり桃花先生はアメリカ大統領に対して、別にやり過ぎているとは思っていない。
現状、日本政府は公務員に対しての法整備はちゃんとしているが。中小企業などの公務員外の社員に対しては何も対策はしていないという印象……そこに助言や道導を差し示したい気持ちはあるが。ぶっちゃけ手が回っていない、というのが現状である。
「あー、じゃあ桃花先生の弟子を育成しないといけないのかー……」
これはちょっと時間がかかるだろう、ちょっと教えただけで、桃花先生が手も目も離している間に。同等のレベルの育成を出来るのは……。
せいぜい安心して任せられるのは。湘南桃花と信条戦空の師匠。雪葱師匠だけだ。
桃花先生の〈生徒〉が〈教員志望〉になるのならまだ解るが、まだ準備段階である。
つまり、GM姫はエンタメに特化している以上、世界を導ける人材が桃花先生と雪葱師匠しか居ない。
「……じゃあ次のターンは教員候補を探そう」
アカウントカードの再発行も同時に行いながらの進行となった。




