第108話「結・式と質、重量と衛星」
久しぶりに作画的な意味でペンを手に持って握った湘南桃花は、天上院咲の時に培った言語化能力で、その時発生した感覚をメモする。
「100%良いと思った時に何か考えていたか? 答えはノーだ! 何も考えてない! つまり逆説的に、言語化能力0%の時にしか良い線は引けないし、過集中にはならない!」
断言した。考えながら描け、というのはネームの時は出来るが作画ペン入れ中は不可能だ、むしろマイナスしかない。雑念、怨念。
過集中や一心不乱、無心こそ答えだと確信した。
「例えば高速道路のバイクで100キロや300キロで走ってる時に〈考えながら走れ!〉はどう考えたって危ないだろ? それでエスパーで相手の頭の中を読み取ったて、マイナスにしかならない。判断材料にはなるかもしれないが……土台であって本質じゃない。高速道路で〈今日の料理は卵焼きでー〉、とか考えてたら普通に雑念だろ……。その思考をラジオや政治家や裁判官が口走ったらそりゃ完全にノイズだ……」
「……つまり? 小説勢やラジオ、政治家はどうすればいいのじゃ?」
〈絵描いてる時の頭の中の思考が判断材料になる〉というそこら辺の頭で考えてるエスパー思想を読み取ろうとする連中を全否定する桃花。
「話を絵に戻すけど。ミクロ的な意味で。〈何故この線を良いね!〉と思ったか? 線から逆説的に言語化理論化したほうが理想に近づく。だって線の出力100%の時、頭の中の思考は0%なんだから、頭の中読んだって意味ない。読んでてそれが正解だと信じる。盲信してるのならそれは間違いなくノイズの元になるわね。今回みたいに」
つまり線画から読み取ったほうが言語化には役立つという意味だ。そこに言語は書いていないが、〈何故その線画がいいか?〉を読み取ったほうが身になる、という意味である。
「もちろんネームは設計図だし、考えなきゃ描けないからそれは良いんだけどね。作画はやっぱ違うわ。右脳と左脳みたいな感じで。〈無心の方が良い線が描ける〉つまり何も考えてない時の方が正解であり〈本質はこっち、無心のほうが正解〉」
例えば、絵に点数を付けて。と言われた時は意識すれば点数を付ける事は可能だが。基本0点か100点かの世界だ、もしくは「なんか違う」の50点。
「何が言いたいかと言うと〈無心で絵を描くほうが普通で、考えながら描くの方が異常〉だ……相当訓練しないと無理! 反復練習しないと無理無理! 絶対無理!!」
桃花は、それだったら線から読み取ったほうが理論化言語化能力としては精確、と言いたいだけである。描いてる時の思考は当てにならない。信じ切ったらダメ。前回や今回みたいな事になる。
それだったら「なぜこの線がいいと思ったのか?」を読み取ったほうが精密真実や建設的である、と親切心で言っているだけである。
波動色の話で言ったら、作画中の思念は〈背景色〉であって、〈主線色〉ではないという意味、線画というメインの〈主線色〉の意味も読み取らずに背景色の話だけエスパーでだだ漏れ話したって〈まとはずれ〉にも程がある。……という意味である。
もちろんその主線色は言語化されて残ってはいない。確かな読解力が必要である。
「まー簡単に言うと思想だけで盲信しないでね?……て話。線画100%の時、思考0%だから」
「……はいはい、お前の愚痴はわかったよ……」
姫は逆に呆れ返った。めっちゃ力説された。
◇
「さて、次は砲撃と衛星についての思考を深めようと思う」
GM姫がまともな指針を示した。
「たぶん砲撃は大砲、つまり重量関係だと思う。威力は高い面の攻撃だけど移動には時間がかかるとか」
現代戦だと仮面ライダードライブがやった重加速とかそこら辺だろう。ポケモンの技だとけたぐりやヘビーボンバーの技がモンスターの体重によって威力が紐付いている。あともう一つ解っていることは体重は急には変わらないということ。つまり最初は赤ちゃんのような身長でも思春期や成長期で急に身長が伸び、大人になると身長はほぼ固定化される。というのが〈社会一般常識〉での体重の使い方だ。
「まあ、作品の世界観や物理法則によって、数字が淡々に変わる作劇の身長体重はあんまり役に立たないだろうね」
実写映画ならその威力はよく解るのだが、こちとら文字と絵が主戦場の場だ。加えて地球誕生から地球の終焉までの生物が同時に存在してしまうこのEWではちょっと測定定規として扱うのは難しい。
「賞味期限とか、その物が何年間保持されているのか? が重要視される現代戦なら……ん~~、例えばその〈名前〉が何年から生まれたのか? その年数が長いほど威力が増す。とかになるんじゃないかな?」
桃花先生はそのように言う。魂寿命ならぬ、言霊が生まれた年数により威力の上下幅が長いほど増す。逆もまた然り、みたいな考え方である。
物語のキャラにはぶっちゃけ身長も体重もあって無いようなものなので。名前の語源の長さがその者の言霊の重さになる。みたいな考え方である。例えば大学ノートは142年、ノートパソコンは37年とか。
「けたぐりの技効果なら、大学ノートの方が威力が高くなる技名ってことか? 羊皮紙とかも?」
羊皮紙だと紀元前2世紀なので、約2200年となり、魔術的には強いのだが。このけたぐりの法則だと大ダメージを食らってしまう。
保持力と同じ考え方だが、現代戦で魔術的にパソコンが弱すぎて全く通用しないので、ゲームバランス的にそういう技が1個か2個あっても良いかもしれない。……というか対抗手段がない。古ければ古いほど強い、その古いほど大ダメージを食らう。みたいな発想である。
「まー皆に平等にかかる力、だから重力関係が大変だけど難しくなるんだろうねえ~~。宇宙に重力は無くても、ロボットに重さ、体重があるように」
超能力という何でもありのファンタジー世界で戦ってきたから必要性を感じないのだろうけど。やはりどの世界にも共通に有る体重……というか重力の存在は自然で一般的に扱いやすいのだろう。
これはどのマルチバース、どのジャンル、どの二次創作でも流用出来るので。やはり再現性として大砲の重量という創作表現の方が1枚上手だった。
大砲は威力がデカくて、重くて遅い、これだけ覚えておけば良い。
つまり逆説的に、スマホは威力が小さくて、軽くて速い、これだけ覚えておけば良い。
「んじゃ次、衛星関係」
「これってさ、2007年って事は携帯で原稿の写真を撮ったあたりの年だよね?」
問題が発生してから衛星をすぐに発射した、だとあまりにも早すぎる。前もって準備する期間が相当長かったと考えるのが普通だ。
つまりこの、衛星を打ち上げた。という想いは。
テーブルの上の原稿が地球で、そこから見上げている空中が天、顔や目や作者本人が地球にラクガキをしている。というマクロ的な想いがあると思われる。
「あれ? じゃあ01から29番までの動画を消したのってマクロ的に考えてかなりヤバいのでは?」
「どうせデータだし、他社サーバーだしアレはどうしようも無いよ」
桃花の不安を夜鈴がなだめる。
つまり、桃花視点で見ると……。
「え、ちょっと待って。スマホで写真撮るってつまり……」
「うん、お前から見たら衛星を手に持ってそこから地球の写真撮ってる」
とんでもない工作だった。未熟だったから仕方がないとも言えるが。
「え? じゃペイペイってどうなるの?」
「文面をそのまま読み取ると。衛星をスキャンして料金決算して、ついでにポイントを得ている」
桃花が姫のなんとなくの推測に、驚愕しつつ。戦空が率直な感想を言う。
「え? じゃあ桃花先生のスマホって衛星だったの?」
知らんがな! ととても言いたい桃花。
で、その上でだ……内界の問題に移る。
「プラネットコアサーバーは理論上問題なかったよね?」
「問題ない、私の頭痛が困る異常がある程度のものだ」
プラネットコアサーバーは惑星型の巨大機械のPCサーバーだ。理論上安全に動くはずだが、何故か頭痛や寝る前に安眠できない。スリープモードにならない。その原因はまだ判らない。
「つまり、サーバーが機械だけならエレキフィールド判定で。エレキ、サイコ、グラス、ミストとあとゼロフォーミングのサーバーがないと上手く衛星として軌道に乗らないのでは?」
少なくともエレキだけでは眠れないのは解っている。
「ゼロフォーミングの衛星って何だよ……」
「ただの星じゃね? つまりただの土か岩の塊……??」
月じゃねーか。
ファンタジーならサイコもグラスもミストな衛星は作ることは出来る……でも現実的に考えて、サイコなスマホが手に持って欲しいかどうかを考えると……。
「いらないな……」
「もう一つ考える事がある。マスターオブマスターは地球から月を見てた」
「うん」
「スーパーマンは月から地球を見てた」
「……あーうん」
そこまで聞いて桃花はハっとした。
「つまりどっちの視点からでも見れるんだよ。ホラ、咲がやってたスキル〈鷹の眼〉の大きい版だと思えば良い」
「……あーなるほどね」
ミクロからマクロ視点に切り替わった桃花。
つまり対象の体質は何でもよくて。
自分が眼を瞑っている時に何でも見れるように調整すればいい。プラネットコアサーバーの時はその〈眼〉が機械だったからエレキフィールドになった。
「あーじゃあポケモンのシンクロマシンで一人称視点を実装して、それで遊べば何でも見れるわけか!」
別に衛星を飛ばさなくていいことだけは解った。
例えば咲のスキル〈鷹の眼〉で、エスパータイプのモンスターとシンクロして、それで宇宙からサイコパワーで地球を見てもらえればそれで終わりである。
自分は眼を瞑っている間、他のモンスターの操作や視点に切り替え可能。それだけで良いし、どんな伝説モンスターの視点にも成れる。
片方が眼を閉じている間、もう片方は開けている。逆に眼を開けていたらもう片方は閉じる。これで終わり。
「……あれ? じゃあもしかしてサーバーやっぱりいらない?」
GM姫は散々考えたサーバー必要案件を不安視する。
「安全性を考えて、やっぱいらないかもしれない。プレイヤーに相棒の体質の違うモンスターが居ればそれで衛星関係は解決する」
夜鈴はいらぬ考えだったとそう思った。
記録知らずの24番神社で座っている談笑の出来事である。




