第104話「結・刑務所」
「今、年代っていつだっけ?」
桃花が再確認を求める、吸血鬼大戦のリアル年代は2010年だったのでどうしてもそっちに引っ張られる。
「EWⅡは今現在歴2030年4月代だよ」
今現在歴2030年4月30日、姫はEWⅡの本シナリオの年代を言うが、今居る場所は2026年8月だ。
で、今度はオーバーリミッツから湘南桃花にノートに書いてあるブロードの〈罪〉という言葉、……ぶっちゃけノートの文字を消しゴムで消せば終わるのだが、文化的な意味でも歴史的な意味でも、消して無かった事にするのはいい意味でもわるい意味でも良いとは言えない。
罪人は罪人のままで変わらず……で良いが、せめて檻を作ったのなら刑務所の設備をしっかりしてくれと言われた。
どうやら生きる流れがそもそも罪人の流れで半永続的なノートで流れていたらしい。つまり真相は善人とノートに書かれていないこと、それだけ。
「最果ての軍勢用の刑務所かー……今の環境だと超能力集団や各体質、持ち物に意思が宿った場合の能力・権能・心意持ち1名以上をちゃんと刑期まで収容出来るか? って所になるんだよね?」
桃花はなんか軽いことを言っているが、例えば全知全能の持ち主、ラフティーヌ1名をちゃんと刑期まで収容できるのか……? と考えると、かなり難しい難題となる。
知らないことは何もなく、出来な良いことは何もないのだ。それらを論理的に閉じ込められる硬い檻や壁はどうやって作る? という最強の矛と最強の盾の矛盾が生まれる。
「まあ桃花は簡単なんだけどね。人が生物な以上、快楽の手錠とか、快楽の檻とかに閉じ込めておけば一応何とかなる。苦痛を与えると暴れるし……」
オーバーリミッツはそう考える。冗談のように聞こえるが真面目に考えて理に叶っている思考なのだ。
永続的な快楽には半永久的な再生能力がある生物としての桃花は、頭の中が真っ白になったり、考えられなくなる。エスパー的な現実実現の能力が快楽で上書きされる上に、動きも封じられ身動きが取れなくなる。それを永続的に続ければ極論刑期まで収容することは可能となる訳だ。
本人が望んでいなくても体が勝手に反応する。なので無理、エシパーだろうがガンマ線だろうが脳へ到達した時点で思考停止になる。壁を壊せない、脱出できない、となる。
いくら湘南大陸レベルで大きかろうが、アメリカ大陸レベルで大きかろうが、性感帯があれば効くという話である。つまり人間、湘南桃花の暴走に関しては既に対策済みである。
「……てか200年間地獄が良いって言ったの桃花自身じゃね? 自分で減刑しねーの?」
GM姫がツッコミを入れる、元ネタが自分であり、その設定を誰も変更出来ないのなら自分の意思で減刑しなければ変えられない事を意味していた。
「おいおいザナドゥ……! あれ本気にしてたのか!?」
自分の意思で言ったのに、とばっちりを受けたような錯覚を受ける桃花であった。とりあえずその事は置いておく。
自分の手で何とかしたものなら対処出来るが、イメージしただけのものに対しては忘れたり対処が難しかったりするのだが、その話は置いておいてまずは自分の手の中で完結する範囲の検証である。
「アンチヒロインとか簡単そうだけど違うの?」
対象の能力者に対して反物質の壁を檻として使うという発想である。鏡写しや影と似たような発想である。
「普通の能力者ならそれで良いんだけどねぇ~~……、咲ちゃんとか〈ログが残らない〉白形態があるから反物質作れなくなるよ」
つまり咲はアンチヒロインに対して対策済みということである、考えに考えて考えすぎたかもしれない。幸運だったのは彼女は戦闘狂じゃないことであるし話せば解る。
姫が普通に考える。
「まあ全員&皆に対して対策するのは難しいから軽い壁なら、相手の体質の弱点タイプを壁や牢屋の材質にするのが一番手っ取り早いんじゃがな」
量産目的の発想である。
「レベル1が材質〈結界〉の牢屋、レベル2が対象のタイプの弱点になる牢屋、レベル3が反物質を使った牢屋、……でーレベル4か~~……」
ここで少し長考する姫。ここまで来るとキャラが飛び出して来るしログも残らなくなる。
「ルート・レイヤー・オブザーバーあたりが使えるのかな? あとはドアの世界のセキュリティレベルだけど……どっちが理論上強いのかな? 壁の強度」
桃花は概念系の壁の強度の話をしている。
「まあ利用の利便さと、ここを突破されたらマズイという意味ではドアの世界の方が重要度は高いかな? ここはガタが来たら物語的にも後でバージョンアップや補強される確率は高いし。レベル4がR・L・O理論の壁で、レベル5がドアの世界で実際に使われている理論構築の壁……とか?」
「それは神のゲーム的な意味で?」
リミッツが姫に質問を投げかける。
「真実でもないし刑務所の物理法則として実現化するにしても意味不明じゃから、神のゲームじゃないかな? ……じゃ、豆知識いくか」
-刑務所のバージョンアップ-
〈変更前〉ただの牢屋 今現在歴2010年代
〈変更後〉最果ての刑務所 今現在歴2030年代
名前◇最果ての刑務所
指標◇品質70/100_優先度70/100_コスト7000/10000円
分類◇時計塔_囚人用監獄_アルテマ島
解説◇吸血鬼大戦時、湘南桃花が捕まった時計塔の〈ただの牢屋〉がアップデートされた。最果ての軍勢が束になっても壊れないように、設計された時計型の刑務所。一度ドアを締めたらドアとして形成されている〈囚人が内側〉壁・ドア・隙間・鍵穴は消えて無くなり、部屋には天と地を分ける地平線しか無い、〈精神と時の部屋みたいな風景〉よって物理的な壁はどのレベルの牢屋にも存在せず。ドアは観測者である外側からしか開かない。牢屋・ドア・手錠には同じ材質〈ルール〉が組み込まれている。刑期は裁判所と各国・各世界の法律で決められ、満期釈放まで基本的には出られない。釈放されればしっかり断罪された事になる。罰金は無し、GMかプレイヤーに認められた場合のみ釈放が可能。ファンタジー世界なのでリアルタイム制の自動釈放は無い、外側から確定するまで同期しない。
レベル1が材質〈結界〉の牢屋。
レベル2が対象のタイプの弱点になる牢屋。
レベル3が反物質〈アンチヒロイン〉を使った牢屋。
レベル4がルート〈R・分岐〉、レイヤー〈L・多層〉、オブザーバー〈O・観測者〉の理論を使った牢屋。
レベル5がドアの世界の牢屋〈定期的にバージョンアップされる、猫箱理論やウイグナーの友人を採用しており、量子力学の干渉が起きる時まで事象が確定しない〉
で、話を桃花に戻して……。
「桃花は有罪で罪人で警察署行きなの?」
オーバーリミッツは一応、念のため、GM姫に言質を取る。
「冗談とファンタジーとしての有罪であって、実際の現実で警察官にお世話になるのは〈話が違う〉になるのだが??」
桃花は冷静に姫のいたずら心に反論する。
「お前やクールマが言うと、冗談でも、現実実現したり世界規模になってるから洒落にならねーんだよ……お前が有罪って言うと2030年に私が有罪として警察署にお世話になる未来が確定してしまうし、知ってる上でビクビクするハメになるんだよこの世の神様ぁ~~……」
どうしても姫は面白そうな方を選んでしまう。
「えー、じゃあ良いよ。プラス保証、+湘南桃花は混じりっけ無しの無罪である+こうか?」
なんとかGM天上院姫から言質を取れたリミッツと桃花はホッとざわついていた胸を撫で下ろした。




