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6月20日のこと(終)


カーテンの隙間から、淡い光が差し込み、

まだ眠る彼の頬を優しくなでる。


赤ちゃんのような、安心しきっている寝顔。


昨晩の、必死なオスの顔とは似ても似つかなくて、

小さく笑ってしまう。


結局二人とも寝落ちしてしまったので、

部屋はひどく散らかっていた。


ベッドの横には、脱ぎ捨てられたままの服。


サイドテーブルには、飲みかけの水。


空になった避妊具の箱。


つけっぱなしの常夜灯。


昨日の夜を思い出して、

ちょっぴり鼓動が早くなってしまう。


もちろん私は初めてで、

余裕なんて無くて、

何をしたかなんてほとんど思い出せない。


でもとっても気持ちよかったのと、

あたたかい幸せだけは覚えてる


軽く息を吐き、


まだあちこちが痛む体で、

ベッドのふちに座って、


昨日のことを、しっかりと振り返ってみる。


「知りたい」って、強く思ったし、


彼は待つことで、

私を想ってくれていた。


そして、もう貰うだけじゃない。

はじめて自分から彼へ返せた。


そんな時間だった。


振り返ってみて初めて、

ちょっとした達成感を感じる。


ベッドに座ったまま寝っ転がって、

そのまま瞼を閉じた。


前までは。


彼のようになりたい、とか。

でも彼に依存してしまいたい、とか。


気持ちがいくつもぶつかり合って、


胸が苦しくて、怖くて、


自分がわからなくて。


そんなことでずっと悩んでた気がする。


これじゃない、あれじゃないって焦って、

同じ道を行ったり来たりしてた。


不思議なもので、

どうしてあんなことで悩んでたんだろうって、

今は思う。


確かに、今だって明確に答えが出せる訳じゃない。


依存はどう対処すべき?とか、

どう付き合っていくのが正解?とか。


説明しろって言われたら無理だし、

これから先も、また同じようなことでつまずくかもしれない。


でも、そのままでいい気もする。


…たぶん、分からないけど。


彼っぽく言うなら、

「今の私のかたちを認める」

ってやつだと思う。


自分の気持ちなのに分からないのも。

人としゃべるたびに言葉が出なくて、辛くて、みじめで

自分自身のことが、どうしようもなく嫌いだった自分も。


ぜんぶぜんぶが地続きで、

私を象っている。


それを大事にしたいって、今ではそう思う。



考え終わった瞬間、自然と肩の力が抜ける。


知らない間に、体に力が入ってたみたいで、

深く深呼吸をする。


気づいたら、静かに時間が過ぎていた。


少し体を動かして、

彼と向かい合って添い寝する形になる。


キスしてもばれないくらい無防備な顔を、

じっと見つめる。


昨日何度もキスをした唇を、

ちょっとだけつついてみる。


舌を絡ませる度に頭が蕩けて、

体から力が抜けていったのは、鮮明に覚えている。


髪の毛も、汗でちょっと顔にはりついている。


彼の顔を見てるだけで、

体温が上がって呼吸が浅くなる。


もう、もらうだけじゃない。


彼にぎゅーってしてもらったら、私もしてあげたい。


彼のためにしてあげたら、胸が満たされる感じがする。


体をよじって彼に近づき、

横になったまま抱きしめる。


すると、抱擁が返ってきた。


「…いつから?」


「うーん」


と、まだ眠そうな声で答える。


「えっちな顔して、俺のこと見てた時」


一気に顔が熱くなる。


「…っ見て、ない」


「みてたよ」


かすれた声が、耳元で聞こえる。


からかう感じじゃなくて、

静かに、私に全てを預けるような響き。


彼が、こちらに体重を預けてくる。


それで改めて自覚する。


ああ、もう貰うだけじゃないんだって。


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