第25話 オセアンクルージング?
前回のお詫びも兼ねて今回は少しボリュームアップしました!
次の日の朝、俺たちは依頼主であるオセアン漁業協会へと向かった。
応対してくれたのはここの職員であるメンデルさんだ。早速応接間に通される。
「この度はお越しいただいてありがとうございます。ご依頼したいのは、、、、」
そのあとメンデルから聞いた話も店のおばちゃんから言われたことと同じで魚が取れなくなってきたという旨だった。
何が原因かもわからないから漁師の人たちにも漁協の人たちにも打つ手立てがないみたいだ。
おまけにギルドの調査員に満足の行く説明ができるわけではないから高ランクの冒険者を募集することも出来ず、Dランクの俺たちが来ることになったらしい。
とにかく実際に海に行かなければ話が進まないということで船を一隻貸してもらうことになった。早速港に案内される。
「こちらが漁協の船になります。どうぞご自由にお使いください。船を使い終わったらまた私に声をかけてください」
そう言い残すとメンデルさんは立ち去っていった。
貸してもらった船はもちろん日本で見たようなエンジン付きのものではなく、木製の中型程度の船だ。
特に装備も付いておらず、縁の近くに木製の長椅子がくっついている程度だった。見たところオールも帆もないしどうやって運転するんだこれ?
「ところでこれ誰が操縦するの?」
ステラが結構重要な質問も投げかけた。
そして当然のようにみんなが俺に目を向ける。そりゃそうですよね。昨日初めて海を見た人たちが船運転できるわけないもんね。
【アカリ、これどうやって運転するの?】
【水を操る魔法を使って船の周りに海流を起こして移動する仕組みです】
いかにも魔法を使う世界って感じの操縦方法だな。
【そしたらアカリ、操縦お願いね】
【かしこまりました。つきましては昨日の件はチャ】
【チャラになんかするわけないでしょ】
あんた俺のこと殺しかけたんだからな、そんな1回じゃ許さない。
【チッ、承知いたしました。それでは皆さんを乗せてください】
息をするようにした舌打ちは無視しつつ俺はみんなを促し船に乗った。
【水流魔法を展開します】
魔法陣が船を中心にして現れる。すると俺の腕が水中に入れた時のようにひんやりと、そして抵抗で腕が動かしにくくなった。
【タクミ様の手を船の周囲の海水とリンクさせました。あとは行きたい方向に水掻きする要領で手を動かしていただければ船を操ることができます】
アカリが使い方を教えてくれた。
「よし!みんな出発するぞ!初めて使う魔法だからしっかり船のどこかをつかんでいてくれ!」
5人とも昨日の俺のフライトを見たからなのか両腕でガッチリと長椅子をつかんでいた。
おい、ソフィア、天に向かって祈るんじゃない。
俺は慎重に平泳ぎの要領で前進することをイメージした。するとゆっくりと船は動き出した。一掻きしただけだが初速のペースでゆっくりと進んでいく。どうやら逆向きに力を加えない限り止まることはないようだ。
今度はクロールにやり方を変え、グングンと速度を上げていく。曲がりたい方向と逆の手を漕ぐことで方向転換もできるな。OK!操縦のコツは掴んだぞ!
「気持ちいいーーー!!」
俺の運転が安全だとわかったのかルーシーが身をへりから乗り出しながら航海を楽しんでいる。
水しぶきが顔に当たるのを面白がっているみたいだ。
「みんな!今のうちに船の旅を楽しんでおけよ!後から船酔いでつらくなるからな!」
俺は警告をしておいた。
「なにで辛くなるって?」
ステラが訝しげに俺を見る。まあ今はわからないだろうなぁ、、、船に乗った人に待ち受けるあの恐ろしさを。
残念なことにルーシーにいたっては爆笑している。
「お酒飲んでるわけじゃないのに、船に乗ってるだけで酔うわけないじゃん!何言ってんのタクミ!」
こ、こいつ綺麗にフラグを立てやがった!
「、、、、笑っていられるのも今のうちだからな。」
俺にはそう言い残すことしかできなかった。
そして15分後、恐れていた時はやってきた。
「うっぷ、、、、もう無理ぃ」
ルーシーは急いで船の後方に向かっていった。早速のフラグ回収お疲れ様です。
「私も気分が悪くなってきた」
ソフィアも駆け出していく。
「こ、これが船酔い、、、人生でも指折りの気持ち悪さね。」
ステラの顔も真っ青だ。
俺も初めて船に乗ったときは死ぬかと思ったからな。気持ちはよくわかる。
「みんなどうしましたの?急に真っ青な顔になって?」
オリビアは平気なようだ。まあ空中で自在に動ける人だからな。揺れには強いのかもしれない。
「僕も大丈夫なようだ。見てると大変そうだね」
ライアンも涼しい顔をしている。
そういえば俺にも船酔いが来ないな。なんでだろ?
【魔法で海とリンクしているからでしょう。海中にいるのと同じですから】
確かに海で泳いでいて気持ち悪くなったことはないな。あくまで俺の経験なだけだけど。
【それより、皆様に酔い止め魔法をかけましょうか?これじゃ仕事にならないでしょう?】
【すまん、そうしてもらえると助かる】
「あれ?気持ち悪いのがなくなった?」
ルーシーが素っ頓狂な声を上げる。
「今酔いを止める魔法かけたから。これでもう心配はないよ」
「ありがとう!ほんと死ぬかと思った。これが船酔いの怖さなんだね」
何故か反省しているようだ。別にルーシーが悪いわけじゃないんだけどな。
こんな感じで「パーティー船酔い事件」が終了した。不味い。まだ仕事が何も進んでいない。
そこからさらに5分くらい言った場所で船を止める。このあたりが教えてもらった漁師たちの漁場なようだ。
「特に変わった様子はないみたいですわ」
オリビアが海面をのぞいてみるも周囲に異変は見られない。
手掛かりもゼロだからここから何を調べればいいのかも分からないな。
「、、、とりあえず釣りでもしてみるか」
「「「釣り?」」」
全員の頭上にはてなマークが浮かんでいる。
「なんて言えばいいかな。まあ一人で出来る漁みたいなもんだ。言うより見せたほうが早いな」
【アカリ、釣り竿作ってもらってもいい?】
【かしこまりました】
剣を取り出す要領で釣り竿を取り出す。作りはしなる長い木の棒に釣り糸と針がついているシンプルなもので、この様子だと糸を自分で引っ張る形になりそうだ。
これに持ってきた生肉を少し引っ掛ける。そして針を海に放り投げた。
「これを海に沈めておくと魚が食いつくことがあるんだ」
説明を終えたところで5人分の釣り竿も作ってもらい釣りを開始した。
ーーーーー
「釣れないなぁ、、、」
釣りを開始してから2時間経っての俺の感想だ。元々魚がいなくなったって言われている場所なのに釣りをしているのだか当然と言えば当然なのだがつまらないことには変わりない。
そして何気なくみんなと喋っていたその時!
「釣り竿に反応がありましたわ!」
オリビアの釣り竿にヒットしたみたいだ!竿が折れるんじゃないかというぐらい大きくしなる。
「みんなで糸を引っ張るぞ!」
俺たちは怪我をしないように布を手に巻きながら引っ張っていく。しかし相当の大物なのか一向に糸をたぐることが出来ない。
「こうなったら力勝負ですわ!みんな手を放してくださいまし!」
オリビアに言われて手を離すと彼女は飛び始めた。と言っても釣り竿と垂直方向に綱引きをしているようなものなのでなかなか高度が上がることはない。それでも少しずつ糸が上がって行く。
「見えてきた!」
ソフィアに言われて水面を見てみると黒い魚影が見える。
「あともう少しですわ!!!」
オリビアの声が頭上から聞こえる。頑張れ!!!
ザバッ!!!
ついに魚が姿を現した!




