第21話 いざ合戦へ その3
ー 時は少し遡る ー
「3、2、1、、今だ!」
「眠れる大樹の種よ!今目覚めたまえ!」
黄色いバラのある場所に待機していたライアンはタクミのカウントダウンとルーシーの魔法を唱える声をしっかりと聞き取った。
ザザザザッ!!!
「ガガーッ?!」
生えてきた巨大な木に行く手を阻まれたゴブリンたちは困惑の声を上げる。
(さあ、今度は僕たちの番だ!)
ライアンは息を整えると木のそばを離れゴブリンたちの前に姿を現す。
「ゴブリン!!タクミとルーシーを追いかけているところ悪いけど僕の相手をしてもらう!」
ライアンは右手で握りこぶしを作り、胸の前で左の掌を重ねる。
「大地よ我に力を授けたまえ!ガイアエンハンス!」
そういうと片膝を着き、右手で地面を殴りつけた。すると腕は地面を貫通し肘まで埋もれてしまう。
右腕を引き抜くと、元の白い肌とはまるで違う岩石に覆われた皮膚が現れた。
ゴブリンたちが一歩後ずさる。
「そっちから来ないなら僕から行くよ!」
ライアンは目の前の一匹のゴブリンに向かって走り始める。
「せいっ!」
掛け声とともに右腕でゴブリンの鳩尾を殴る。
ゴブッ!!!
いくら小さいとはいえゴブリンを簡単に吹き飛ばしてしまった。
「ガー!!」
プラスゴブリンが反撃に出る。持っていたこん棒を上からライアンの頭めがけて振り下ろす。
「そんな柔い木の棒じゃ僕には効かない!」
ライアンが右腕で攻撃を受け止めるとポキッとこん棒の方が折れてしまった。
自慢のこん棒が折れたショックから立ち直れないプラスゴブリンに容赦なく右フックをお見舞いするとあっさりその場で崩れ落ちる。
1対1では勝ち目はないと判断したのか今度はまとまって攻撃を仕掛けてくる。
(ゴブリンもそこまで馬鹿じゃないか。しかし困ったな。)
冒険者になってまだ日の浅い彼にとって、右腕を強化することが現時点での限界だった。だから複数の方向から攻撃されるとかばいきれない可能性が出てくる。
そのことを見抜いたのかゴブリンは前から2匹、後ろから1匹の3方向から攻めてくる。
(まず前の2匹を片付けてから後ろだ!)
素早く決断したライアンは右前方にいたゴブリンを吹っ飛ばし、左のプラスゴブリンにそのまま攻撃する。
しかし、その直線的な軌道を読んでいたのかプラスゴブリンはライアンの右腕を捕まえてしまう。
「ガー!」
ガッチリつかんだ右手をニタニタしながら押さえつけている。
(まずい!やられる!!!)
命の危険を感じたまさにそのとき!
ヒュン!!、、、、バタン。
ライアンが音のするほうへ目を向けると後ろから攻めてきていたゴブリンがすでに絶命していた。
《もっと慎重に戦ってね。うちがいなかったら完璧にやられてたから》
ライアンの頭の中にステラの声が響く。すると今度は彼の腕をつかんでいたプラスゴブリンも眉間を打ち抜かれ倒れた。そう、ステラが別の場所から攻撃をしたのだ。
ステラの使っている魔法は二つ。念話と一点集中の光魔法だ。持ち前の視力でゴブリンの急所を遠方から正確に撃ち抜く。
まだ同時に通話できるのは一人だけで、なおかつ30メートンの範囲しか使えないがいづれその力をさらに発揮できるようになることだろう。
《どこにいるのかはよく分からないけど助かったよステラ!僕を援護してくれ》
《わかった》
こうしてライアンがひたすら攻撃を仕掛け、念話で情報を提供しつつ彼の死角に入ったゴブリンはステラが狙撃するという連携プレーでその討伐数を苦戦しながらも重ねていく。
「ガー、、、、」
ついにライアンが最後の1匹を倒し切った。
「お疲れライアン!」
ステラも少し離れた草むらから姿を現した。
「そこにいたのか!ステラもお疲れ様。本当に助かったよ。君がいなきゃ、、、危ない!!!」
「ん?」
ライアンが目にしたのはステラのそばの木から飛び出したゴブリンの姿だった。死角になっていたステラは気づいていない。
(討ち漏らしがいたのか!!この距離じゃ間に合わない!!!)
「やめろ!!!」
ライアンの制止もむなしくゴブリンはステラの背後からこん棒を振り上げた。
バン!!!!
ーーーーー
「危なかったーー、、、」
ったく、俺たちの戦いが終わってからすぐにこっちに来てよかったぜ。
ライアンとステラの場所に着いたらステラが背後からやられそうになってるんだもん。慌てて炎魔法を打ち込んだからよかったけど本当に間一髪だった。
「本当にすまない」
ライアンが俺に向かって謝ってくる。いやいや俺に謝る必要はないって。
「それよりステラも周囲には気をつけろよな。後方で攻撃する人は最後まで見つからないようにしないと」
「うん。反省してる。タクミありがとう」
まあステラも怪我しなかったわけだしこれ以上とやかく言うことはないな。
「とりあえず2人はゴブリンを倒し切ったんだな」
「ああ、なんとか」
ライアンがため息交じりに答える。するとライアンの右腕から大量の砂が零れ落ちた。どうやら腕の魔法を解除したようだ。
「そしたらこのままオリビアとソフィアのところに向かおう。危険な目に合ってるかもしれないし」
俺たちは急いで2人のところに向かった。
しかし、実際に2人の場所にたどり着くとその心配が杞憂だったのが分かった。
すでにゴブリンを倒し切って俺たちが来るのを待っていたのだ。
「みんな無事でよかった!!!あれ?ライアンちょっと怪我してるね。私が治してあげる!」
ソフィアがライアンの頬に手を触れる。
「癒しの力よ、我の魔力を以って高まれ!」
呪文を唱えるとソフィアの手は淡く緑色に光った。
「これで大丈夫よ!まだ力は弱いけど切り傷ぐらいなら治せるわ!」
「あ、ああ、痛みも引いたよ。ありがとう」
ライアンが少し照れ臭そうにお礼をいった。いいなぁ、俺もソフィアに怪我を治してもらいたい。
【、、、そのためには怪我をしないといけませんねぇ】
嘘だよ。冗談が通じないなぁアカリ。あはははは、、、、。
その後俺たちはソフィアとオリビアの戦いの話を聞いた。
「オリビアが本当にすごかったの。私が何もしなくていいぐらい倒してたわ」
「そんなことないですわ!ソフィアのおかげでもありますわ!」
互いに謙遜しているが2人の努力のおかげだろう。
【アカリ、今回はすべて討伐したのか?】
今度は撃ち漏らしがいたから困るからな。
【はい、観察しておりましたが倒しきりました】
よかった!これでゴブリン退治は終了、俺たちの勝ちだ!




