第22話 クエストの事後処理
俺たちは少し休憩を取ったあと、ゴブリンたちの討伐証明部位や素材として使えそうなところを回収してまわり、ゾンド村長に報告しにソンへ向かう。
マーチを通り過ぎて1時間、ソンへ辿り着く。村のつくりはマーチによく似ているが、人の数は多く感じる。まあ今は避難者がいて実際に普段より多いのだろうけど。
村の人にマーチの村長がどこにいるのかを聞いてみるとこの村の首長の屋敷にいるということで場所を教えてもらった。
「よくぞ無事に戻ってまいりましたな!!」
屋敷に行くとゾンド村長が知らない老人と共に出迎えてくれた。おそらくこの村の首長だろう。
2人に案内される形で屋敷の中に入る。中の広い部屋ではマーチの村人の多くが座敷に座っていた。
俺たちはさらに奥の部屋に通される。
「この度はソンまでお越しくださいましてありがとうございます。私はソンで首長をしておりますモーリスです」
ゾンド村長の横にいた老人が挨拶を始めたがやはり首長だったようだ。村長と首長の呼び方が紛らわしいがしょうがない。
「はい、無事に侵攻してきたゴブリンの討伐に成功しました」
ライアンが首長の言葉を受ける形で喋る。
するとゾンド村長が泣き始めた。
「本当に、本当にかたじけない。今回ばかりは村を捨てなければならないと思っていた。なんとお礼をしたらよいのか、、、」
「いえいえ、これが僕たちの仕事ですから」
ライアンがさらっとカッコイイことを言う。
「して、我々はいつ戻れるので?」
「そのことなんですが、しばらくソンにとどまってもらうことになります」
そう、マーチの人々はまだ帰ることができない。
なぜならまだ全てのゴブリンを討伐しきっていないからだ。
今回マーチに襲いにきたのは軍隊だけだからほぼ全てのゴブリンが大人のオス。つまりメスのゴブリンや子供のゴブリンはまだ奥の森の中にいるのだ。
メインの戦力を倒したとはいえ、このまま放置すればいずれまたゴブリンが増え、また村に襲いに来る。
そのためにも全てのゴブリンを倒さなくてはならない。
「僕たちはこのことを報告しに明日ギルドに戻ります。そうしたら今度は完全にゴブリンを討伐するためにギルドか動くはずです」
「なるほど、そうなるのですな。でしたら安全になるまで待ちますわい」
ゾンド村長も納得してくれたようだ。
「はい、そのようにお願いします。あとモーリス首長。今日のところはこの村に泊めて欲しいのですがお願いできますか?」
今度はライアンが尋ねる。
「ぜひ泊まっていってください。この村としてもあなた方にはお礼をしないと、マーチがやられたら次はこの村でしたから」
首長も快諾してくれた。
こうして俺たちはソンで一泊することになった。
夕食には村の野菜や飼っている鳥の肉などを使って祭りのように豪華な食事を振舞ってくれる。
満腹になると俺たちは疲れからあっという間に眠ってしまった。
ーーーーー
翌日、俺たちは村の人々に別れを告げギルドへと向かう。
その後丸一日かけてカーイルまで戻ってきた。
そのままの足でギルドへと向かう。
「いらっしゃいませ。今回はどのようなご用件ですか?」
この前と同じ人がカウンターに立っていた。
「ゴブリン討伐に行ってきました。それと相談があるのですが」
ライアンがクエスト受注証明書を提出しながら話す。
「はい、お伺いします」
ライアンは今回のクエストであったことを全て話した。
「ご、500匹を超えるゴブリンの群れ!?そんなのいるはずがないじゃないですか!」
受付の人はかなり戸惑っていた。
「これが証拠です」
そう言って俺は本からゴブリンの素材を大量に取り出した。戦闘でいくらかはダメになってしまったがそれでも100匹分ぐらいの素材はあるはずだ。
山のように現れた素材に後ろにいた人たちまでざわつき始める。
「か、確認します」
そういって受付の人は職員を数人呼び作業に入った。
しばらくすると。
「確かに本物のゴブリンの素材です。それにこれはプラスゴブリンですね。これが本当だとしたら500匹の群れだということも現実味が帯びてきます」
受付の人はすぐさま後ろに下がり1人のおじさんを連れてきた。後ろのギャラリーがもっと騒がしくなる。
「君たちがゴブリンを退治してきたのか。若いのにすごいな。もう一度話を聞きたいから部屋まで来てくれるか?」
いきなり話しかけられたので俺たち全員誰だこのおっさん?という顔をしていると。
「ああ、すまんすまん。名前を言うのが先だったな。私の名前はアデル、ここのギルドマスターだ」
ギルドマスター!?
それから俺たちはマスターの部屋に通されもう一度説明をした。
マスターは黙って目をつぶり腕を組んでその話を聞いていたが、俺とライアンが説明を終えるとゆっくりと口を開いた。
「その話は本当のようだな。よし、明日には調査員をその場所に向かわせる。1週間以内には高ランクのパーティーを向かわせ完全に討伐してもらうことになるだろう。君たちには礼を言う。ありがとう」
俺も含めパーティー全員がマスターの言葉にガチガチに緊張していた。まず佇まいが違う。決して威圧しているような雰囲気ではないがこの人が本気を出したらこの街にかなう人はいないだろうということは分かる。
【やはりギルドマスターになると強さも段違いですね。私でも苦戦するかもしれません】
あ、勝てるとか言ってる人ここにいたわ。
「報酬については詳細な調査が出なければなんともいえないから後日になる。ただ、君たちのランクは私の権限で今すぐ上げることは出来る。パーティーランクはDランクに、そしてEランクだった5人も個人Dランク、そしてタクミ君は個人Bランクに昇格だ」
いきなりの昇格決定に最初は反応できなかったが徐々にその凄さが分かってきた。
これって相当異例なことなんじゃ?
「ああ、その通りだ。入りたての冒険者がすぐにDランクまで上がることは余程のことが起きない限りないからな。それに個人Bランクとなれば前例はほとんどない」
やっぱりそうですよね。
「さて、私からの話すことは以上だ。あとのことはギルドに任せてくれ。みんなゆっくり休むように」
その言葉を聞いて俺たちは部屋の外に出た。
ふう、これで一件落着だ!それにランクも上がったことも嬉しい。
そのまま俺たちは上機嫌で帰宅の途についた。
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アデルは部屋の窓からタクミ達がギルドを出ていくのを眺めていた。
「タクミか、また面白い奴が現れたな」
アデルが浮かべた微笑みは誰にも見られることはなかった。




