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078 成田へGO

「そうか。ご苦労だったな」


美杉が労いの言葉をかけてくれる。いつものごとく、苦笑混じりだ。

孔雀員冒険者事務所の応接ソファに座り、美杉が淹れてくれた茶をすする。

スッキリ爽やかでありながら、喉に残る旨味、まったくわからないが高い茶葉に違いない。


「あれ? アンヌさんは?」

「彼女は、採ってきた百合根を原料に、ポーションの製造をしている。地下闘技場の一部を使ってな」

「そういえば、それが目的でしたっけ。百合根、いつのまに採取したんだろ」


「あぁ。遅れて到着した特殊作戦群に手伝わせたようだ。自衛隊のロケット発射場内に、サクユリが大量に自生していたらしいぜ」


ゴジモンと共闘して、超巨大狂人中タカアシガニを倒した。

その前に、満身創痍の身体でアンデッドの呪いを、長時間に渡って受けてしまっている。

新島のペンションでの夕食中、蓄積したダメージにより俺は倒れてしまった。

その後の記憶はない。


目覚めた時には、都内の病院のベットの上だった。

ほぼ、3日間寝ていたことになる。


「お前、今回も随分とやらかしたんだな」

「へへ。すげーでしょ?」

『だから、お前じゃないだろ!』


「肘木からも報告を受けてるぞ。ドジって敵に捕まったらしいじゃないか」


「え? あー、そっち? そっちの話かぁ」

『ほんと、お前は、どんくさいよなぁ』


「アンデッドの呪い感染は、どうやって防いだんだ?」

「木野に貰った魔石を使いました。生涼に操作してもらって」


『魔石20個も使ったからな』


「え? 今なんて?」


『残り2個だぞ。お前が、気まずくなった桃花をなだめるためにって、亜美に3個も渡すから』


「亜美が、私に任せろって言うからさぁ。なんで、その時に残りの数を教えてくれないんだよ!」


「魔石を使い切ったか? あの魔石も厄介だったからな。俺としては、重荷の減る悪くない話だ」


生涼の言葉は、美杉には聞こえていない。俺のリアクションで推測したらしい。


狂人中との戦いで、俺は「縮地」と「パリィ」と「衝撃魔法」を使いこなした。

そして、超巨大狂人中への一撃。


その様子を亜美はしっかり見ていたのである。

どうやって、たくさんの能力を手に入れたのか問い詰められてしまう。

結果、桃花との仲直りをエサに、まんまと魔石を巻き上げられたのだった。JKコワス。


「そんなにガッカリするな。おかげで命を拾えたんだろ。ゾンビになったお前を、誰かに討伐させずに済んだ」

『そー、そー。感謝しろよな』


残りの魔石2個は大事にしなければ。北条に魔石をまだ渡していない。その件は忘れよう。


「呪術師のサカキを逃してしまったのは残念だったな」


「ええ。まったく。タカアシガニに、みんなが気を取られている隙に消えたらしいです」

「ふむ」


サカキについては、美杉も多少の知識はあるはずだ。巫女の里での話を聞いているだろうから。


「今日は、いつもの軽自動車じゃないんだな? レンタカーか?」


「成田に両親を迎えに行かなくちゃいけなくて」


「軽自動車は、特選群の孤門が、新島から運んでくれたんだって?」

「みたいっすね。お礼言わないとなぁ」


孤門にも、魔石をねだられたらどうしよう。あげないけど。


「孤門は、軽自動車の車内いっぱいに、カニ肉を積んで運転したらしいぞ」

「カニの臭いが染み付いちゃって大変なんすよ。それで仕方なくレンタカーを」

「ふふ。誠君と澄子ちゃんによろしくな」

「はい。えっと、それはいいんだけど」

「ん? なんだ?」


俺は、退魔師たちから聞かされた祖父の話が気になって仕方がない。

成田には、午後6時頃に着けば問題ない。

午前中から、美杉に会いに来たのは、報告だけが目的ではないのだった。


「えっと。最近、忍者さん見ないなー。って思って」

「ん? 真魚まなのことか? あの娘には、長期間の任務に就いてもらうことになってな」

「えっ?! 長期間? それは危険な依頼なんですか?!」


「な、なんだよ、急に。あいつは、まだ21歳だが、Bランク冒険者だぞ。お前なんかより、冒険者歴は、ずっと長い」


「に、21歳ですって?!!」


「お前、なんか怪しいな。真魚と同じBランクの猫下たくみは、まだ二十歳だぞ」


俺は、羽田でのゴブリン戦で、猫下に熱い視線を送る真魚を思い出してしまう。

な、なんか悔しい! なんだ、この嫉妬心は?!


「ま、真魚さんに、ご家族とかは?」

「おい。なんで、そんなことを聞きたがるんだ? ダメだぞ、お前と真魚は絶対に」

「絶対に?」


「お? あれ、絶対とか、そんなこと言ったっけ?」


美杉の目が泳いだ。なんか隠そうとしている。たぶん。


「実は、朱姫さんから、いろいろ聞かされました。爺ちゃんのことを」


「な!?」


美杉は絶句する。いきなりソファから立ち上がっていた。

震える手を押さえて、美杉は俺に問う。


「お、お前、な、何を聞いた?」


「巫女の里での爺ちゃんの戦い。そこで、母に出会ったこと。そして、真鳥まちょうさんのことも」


「く。朱姫め。余計なことを。黙ってろと事前に言ったのが、裏目に出たか」

「知ってるんですね。やっぱり美杉さんも」


「え? 何が?」


『今更、とぼけたぞ!』

「今、真鳥さんは、どこにいるんです? 直接聞きに行きたいんすけど」

「え? まちょ? 誰それ? えー、俺知らないけど〜」


「ククク。美杉さん、もういいでしょう。私から話しますよ」


作務衣を着た剃髪の男が、美杉の背後に突然現れた。

棒空ぼうくう。孔雀院現住職であり、Bランク冒険者である。

登場が久しぶりすぎて、簡単に説明しておくのだ。

『そういうの大事よね』


「こら、棒! びっくりするだろうが! 寿命が縮んだじゃねーか」

「いたわりが足りず、申し訳ない。ククク」

「ちっ」


「棒さんのお父さん、幹空さんのことも、少しだけ聞いてます」

「そうですか。巫女の里でのことですね?」

「はい。フリーの拝み屋で、孔雀院の先代住職さんの弟さんだったって」

「えぇ。院主いんじゅのお子さんは、皆さん寺に興味がなくてね。私が住職を継ぐことに」


「ちなみに、棒の嫁は、真魚の姉だから。お前ら、他人じゃないから。人類皆家族だから!」


『おっさんが、とぼけたふりして爆弾発言を!』

「マジっすか?!」


「ええ。真魚と姉の真弧まこは、涼君の推察通り、津神翔一さんの実の娘です。君の叔母に当たりますね」


「って、ことは棒さんも?」

「ええ、義理の叔父ですかね」

「な、なんで、そんな大事なことを最初に言ってくれないんすか!!」


「知らねー方がいいこともあるんだよ」


27年前に出会って、二人も子供を作ったのか、爺ちゃんは。

『おい。他にもいるんじゃねーか? 二人だけとは、とても思えん』

怖いこと言うなよ。


「お、俺の祖母は、それを知ってるんでしょうか?」


美杉と棒空は、揃えたように首を横に振っていた。


義母はは、いや真鳥は、巫女だった澄子さんを守るために、隠れて津神家を護衛していました。翔一さんが奥様を、どれだけ愛していたかも知っていましたよ」


「罪作りな人だ。翔一さんは」


祖母・津神可奈は、本当に知らなかったのだろうか。確かめる勇気なんて、俺にはない。


「澄子ちゃんと可奈さんを守るために、翔一さんは闇ギルドを徹底的に叩いたんだ」

「そういうことか」

「ええ。自分のワガママで連れ込んだ澄子さんを、奥様は受け入れてくれた。涼君のお祖母様を、誰かに傷つけられたくなかったのでしょう」


それが、津神翔一の『責任』の取り方だったのかもしれない。

いや。だからと言って、真鳥に手を出したのは論外だろ。

信じられん。俺の爺ちゃんって、なんなんだよ!


『さすが、爺ちゃん。そこに痺れる。憧れるぅ』


あ、こいつ、津神翔一の孫だもんな。やっぱり血には逆らえんのか。今時、異世界でハーレムとか古いんだよ!

って、こいつ、俺と同一人物じゃん!


「私、涼さんだったら。『責任』とって。お願い」、桃花の声と潤んだ瞳が脳内で再生された。


「うぉおおおおおおおお!!」ガンガンガン!


「涼君、どうしたんだ! 大丈夫か?!」


突然、テーブルに頭を打ち付け始めた俺を、棒空が止めてくれた。


「やめろ。バカ! 新しいテーブルの値段を分かってるのか! ったく。でも、さすがだな。冒険者の頭突きに傷一つ付いてないぜ。アンヌ君の見立ては素晴らしい」


新調された木製の高級テーブルは無事だった。だが、俺の頭からは血が吹き出している。







俺は、レンタカーの4ドアセダンを操り、東関東自動車道を走らせている。

それは、学生時代にサバゲでよく通っていたルートだった。


『いやぁ。衝撃だったな。すげえわ、爺ちゃん』

「俺は、親父が爺ちゃんを嫌っていた理由をさ、やっと理解できた気がするよ」


親父が、爺ちゃんのハーレムを認識していたか? それを美杉たちは知らないらしい。


『間違いなく、母さんは知ってただろうな』

「たぶんな」


しかし、これから両親に会ってしまうのだ。

この話題は、封印せざるえないだろう。

いろいろと、当事者から話を聞きたい部分もあるのだけれど。


桃花と同時に、俺はリオの言葉も思い出していた。

他の女に手を出すなら、愛梨のことは忘れてほしい。

要約すると、そんな内容だったと思う。


『俺には、もう愛梨に近づく資格はないんだろうな』


淋しそうな生涼の声が、脳内に響く。


『お前は、まだその資格を持っているんだ。羨ましいぜ』


「親父のことさ。よく知らなかったけど。女の面では、爺ちゃんと対局にいる人だったのかなって思うんだ」


『わからんぞぉ。あの爺ちゃんの息子だぜ』


「俺の願望かもしれないけどさ。母さんが、爺ちゃんみたいな男を好きになるとは思えないんだよね」


『確かに。それは言える。そうであってほしいかも』


「だろ? 婆ちゃんには悪いんだけど」


『婆ちゃんは、海のように広大な感じのアレだから』


「なんだよ。アレって」




忘れる前に、現在のステータスを簡易的に表記しておこう。

久しぶりである。長くなるのでアイテムは省いている。ご容赦を。



名前 津神 凉


年齢 24

ギルドランク D

状態 気疲れ中

所属パーティー「ハーメルン」

メンバー エル(ギルドランクE)


HP 220/220(+20)

MP 95/95(+10)


物理攻撃力 125(+15)

魔法効果 60(+10)

物理耐久力 155/155(+20)

魔法耐久力 60(+25)

状態異常耐久力 120/120(+30)

精神耐久力 55/55(+5)

即応能力 135(+25)

移動力 130(+20)

運 35(+15)


固有スキル

生霊召喚Lv.20(+12UP)

呪い耐性(強)Lv.1


スキル

パリィLv.5

縮地(小)Lv.2


魔法

低級回復魔法Lv.8(+2UP)

低級召喚魔法Lv.6(+2UP)

衝撃魔法(中)Lv.3


女性キャラ出番無し回!


お休み頂いてました。お待たせしてすみません。

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