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はじめてのラブレター

彼女のことは、いつも教室の片隅から見ていた。


肩まで伸びたきれいな黒髪に、透き通るようなくりくりとした瞳。

少し丸みのある顔には、いつも穏やかな笑みが浮かんでいた。


彼女はクラスの人気者だった。

いつも教室の隅でひとりぼっちでいるぼくとは違い、周りにはたくさんの友達がいる。

きっとみんなも、あの眩しい笑顔に惹かれているのだろう。


ぼくは彼女のことが好きだ。

こんなに胸が締め付けられるような気持ちは、今までの人生で経験したことがない。

心臓がドキドキして、どうしようもなくなってしまう。



彼女のことを明確に意識したのは、ある日の移動教室のときのこと。


その日、ぼくはどうしても体調が優れず、一人で個室にこもっていた。

ようやく落ち着いて教室に戻ると、そこには誰もいなかった。

どうやら、ぼくがいないことに誰も気づかないまま、みんな次の場所へ移動してしまったみたいだ。


みんながどこへ行ったのかも分からず、ぼくはぽつんと、静まり返った教室で途方に暮れていた。

そのとき、ガラッと扉が開いて、彼女が突然教室に現れた。


「忘れ物しちゃった。……あれ? きみも?」

「ううん。……みんなに、置いていかれちゃって」

「そうなんだ! それじゃあ、わたしと一緒にいこう!」


彼女はそう言うと、ぼくの手をぎゅっと握って走り出した。

差し込まれた光の中で、差し出された小さな手。

その手のひらの温もりが伝わってきた瞬間、ぼくの心臓はうるさいくらいに跳ね上がった。

ぼくは一瞬で、簡単に彼女のことが好きになってしまった。



ぼくと彼女は釣り合わない。

そんなことは分かっている。

けれど、どうしてもこの溢れる気持ちは抑えられなかった。


ぼくは、彼女に手紙を渡すことにした。

手紙なんて書いたことないけれど、ぼくの中にある精一杯の言葉で、この思いをつづってみようと思った。


その日の放課後、たまたまぼくと彼女は二人きりになった。

チャンスだ……!

意を決して、ぼくは彼女に声をかけた。


「……あの!」

「なあに?」

「これ! 書いたんだ……。読んで……」


たどたどしく差し出した、一生懸命に折った手紙。

彼女はびっくりしたように目を見開いたけれど、やがて頬を赤らめて、こう言った。


「ありがとう……! じゃあ、明日一緒に砂場で遊ぼうね!」


「うん!」と答えたぼくの視線の先、教室の入り口では、お迎えに来たお母さんがぼくたちを優しく見守っていた。

ぼくの人生で初めてのラブレターは、夕暮れの園舎に、小さな幸せを咲かせてくれた。

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