表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/41

地獄の番犬、東へ

 コルキス。


 魔女の城。


 その地下深く――。


 巨大な扉が、ゆっくりと開いていた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い鎖。


 腐臭。


 そして。


 闇の奥から響く、低い唸り声。


「グルルルル……」


     ◆


 エキドナは笑っていた。


「久しいな、我が子よ」


 その視線の先。


 闇の中で、三つの眼が開く。


 赤。


 赤。


 赤。


 そして。


 ズシン――。


 巨大な魔獣が姿を現した。


 黒い毛並み。


 三つの首。


 毒を滴らせる牙。


 燃える瞳。


 冥府の番犬――ケルベロス。


     ◆


 その咆哮は、空気そのものを震わせた。


「ガァァァァァァァァッ!!」


 城が揺れる。


 魔物たちですら震え上がる。


 だが。


 エキドナは愉快そうだった。


「日本へ行け」


ぬえを滅ぼした者どもを喰らい尽くせ」


 ケルベロスの三つの首が唸る。


 そして。


 ドォォォォン!!


 その巨体は、大地を砕きながら駆け出した。


     ◆


 一方。


 大陸東部。


 山岳地帯。


「……来たか」


 玉藻のたまものまえが静かに目を細める。


 その背後には、孫悟空たち。


 悟空が如意棒を肩へ担いだ。


「すげぇ気配だなオイ」


 三蔵法師も険しい顔をしている。


「これは……魔獣というより、もはや災害」


     ◆


 次の瞬間。


 山が吹き飛んだ。


「ガァァァァァァッ!!」


 ケルベロス。


 その圧倒的な巨体が、大地を蹂躙しながら現れる。


 悟空が目を見開く。


「デカッ!?」


     ◆


 玉藻の前が術式を展開した。


 狐火。


 結界。


 無数の妖術がケルベロスへ降り注ぐ。


 しかし。


 ガァァァァッ!!


 咆哮。


 それだけで術式が吹き飛んだ。


「なっ……!?」


 さらに。


 ケルベロスの口から毒液が降り注ぐ。


 ジュゥゥゥッ!!


 山肌が溶ける。


 悟空が飛び退いた。


「やべぇ!!」


     ◆


 さらに。


 ゴォォォォォッ!!


 黒炎。


 大地を焼き尽くす地獄の火。


 猪八戒が吹き飛ばされる。


「ぶべぇぇっ!?」


 沙悟浄も水術を展開するが――。


 瞬間。


 石化。


「うおっ!?」


 腕が石へ変わり始める。


「見んなァァ!!」


 悟空が叫んだ。


     ◆


 だが。


 ケルベロスは止まらない。


 圧倒的。


 まさに“災害”そのものだった。


     ◆


 玉藻の前は静かに息を吐いた。


「……撤退じゃ」


「え?」


 悟空が振り返る。


「勝てねぇのか?」


 玉藻の前は苦く笑った。


「流石にあのレベルは無理じゃ」


 そして。


 東を見た。


「やはり……」


「奴らに賭けるしかないか」


     ◆


 その頃。


 日本。


 都。


 陰陽寮。


 安倍泰親あべのやすちかは静かに目を閉じていた。


「……来る」


 物忌み様の神託。


 巨大な怪異。


 西より来る災厄。


 陰陽師たちが緊張した表情で並ぶ。


     ◆


 次の瞬間。


 ドォォォォォン!!


 都の外壁が吹き飛んだ。


「ガァァァァァァァァッ!!」


 地獄の番犬。


 ケルベロス。


 その姿を見た瞬間。


 御家人たちの顔から血の気が引く。


     ◆


 毒液。


 咆哮。


 そして――青銅のような音。


 ゴォォォォォン……!!


 耳ではない。


 魂へ響く。


 恐怖。


 理性が削られる。


 御家人の一人が膝をついた。


「う、動け……!」


 身体が震える。


 戦意そのものが削られていく。


     ◆


「怯むなァ!!」


 安倍泰親が叫ぶ。


 式神が舞う。


 結界。


 呪符。


 陰陽術の嵐。


 しかし。


 ケルベロスは火炎で吹き飛ばし、毒液で溶かし、視線で石化させながら暴れ続けた。


     ◆


「このままでは……!」


 陰陽師が叫ぶ。


 だが。


 泰親は静かだった。


「黄泉送りの術を使う」


 空気が凍る。


 禁術。


 冥界封印。


 だが発動には――。


 時間がいる。


     ◆


「動きを止めろ!!」


 御家人たちが突撃する。


 陰陽師たちも術を重ねる。


 だが。


 ケルベロスは圧倒的だった。


 隙が作れない。


     ◆


 その時だった。


「海外の昔話より俺の話の方がおもしろいだろ!!」


「いや、いや、桃太郎さんの話は勢いだけなんですよ、この作者の作品みたいに!!」


「それ言うと作者に出禁にされるぞ!!」


 明らかに場違いな会話。


 全員が振り向く。


     ◆


 そこにいたのは――。


 一人の男。


 桃色の陣羽織。


 犬。


 猿。


 キジ。


     ◆


「……なんだあれ?」


 御家人が呟く。


 泰親の目が見開かれる。


「まさか……」


     ◆


 男は、巨大なケルベロスを見上げ――。


 ニヤリと笑った。


「おっ、なんかPV稼げそうなのいるじゃねぇか!!」


 日本昔話最強の問題児。


 桃太郎。


 海外旅行から――帰還。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ