第46話 女子会②
それから買い出しを済ませて、家に着いたのは夕方五時程になった。
「おぉー。ここがナオとリタの家かー。すげぇ綺麗じゃん」
「すごいですわ! 玄関狭ーい!」
「いや、普通こんなもんでしょ。どんな豪邸に住んでんのよ」
「そうですね〜ワタクシの家はどこから何処までが玄関なのか分かりませんわ」
「それはそれで嫌だな......」
リビングに着くと持っていた荷物を下ろして、仕分けを始めた。
「人間ども! 飯は買ってきたか...... にゃ! なんか増えてるにゃ! 誰じゃお前らあああああああ!」
「ムギコただいまー。今日試験で知り合った人連れてきたー。レイとステラだよ」
「だから誰なのにゃあああああ!」
威嚇してカーテンの裏に潜っていった。
「可愛いですわね! 喋る猫は初めてみましたわ!」
「しゃべった......つかそんなんいんの? おかしくね?」
「入居したらいたんだ。ずっと住んでるらしい」
「どゆこと? 」
「まだ昨日入居したばっかりだから片付いてないけど、適当にくつろいでね。手洗い場はあっち〜」
レイは脱衣所に行って手を洗った。
「あら? 浴場ですわね! 狭くて可愛いー!」
「褒めてんのか貶してんのかどっちなんだ......」
「レイの家はどんな風呂なん?」
「ワタクシのは...... 何処からが浴場なのか分かりませんわ!」
「一体どんな風呂なんだ......」
「ねー、ご飯並べるの手伝ってよー」
奈緒がそう言うと、皆こぞってリビングに集まりテーブルにご飯をおいた。
買ってきたのはお惣菜や、お刺身、漬物、エールなど庶民的なものばかりだったが、お酒が進む肴には十分だった。
「んじゃ! 無事ブレイブになれたということで! カンパーイ!」
奈緒はぐびぐび飲むとおっさんのような声を出した。
「かーーーーっ! うめぇ」
リタはしとやかに、レイはグラスに移して飲んだ。
ステラは両手で包むようにして飲む。
「ステラ。聞いてなかったがお前年幾つだ?」
「ウチ21歳。皆んなは?」
「若いな。アタシとナオは26」
「ワタクシは25になりますわ」
「うーわみんな年下だー。萎えるー」
「そう変わりません事?」
「25と26じゃ全然違うよ〜。もう見える世界が違う」
「そんな壮大な話なん?」
「21なんてまだなんでもできるよ。いいなぁー」
4人は肴をつまみながら、話していった。
「もう周りは結婚とかしていくしさー。レイは結婚とかしないの?」
「ゴホっ! んー。ワタクシ、実は縁談がありまして、今年結婚する予定なのです......」
「えぇ!」
「まじか」
「けけけけ、結婚......」
3人はそれぞれの感情で驚いた。
「でも、まだお嫁に行きたくなかったので、逃げてきました! おっほっほっほっほっほ!」
高らかに笑った。
「おっほっほっほ、じゃねえよ。大丈夫なんそれ」
「面白っ。なんで嫌だったの?」
「だって、今までずっとお家の言う事を聞いて生きてきて、好きな事何にもしてこなかったので、このまま結婚したらもう何もできないで御座いましょ? なのでやりたいことやってみようと思って逃げましたの」
「それは凄いな......」
「うん、懸命な判断だね」
「逃げてきた、かぁ。逃げて大丈夫だったん?」
「知りませんわ。今頃大騒ぎでしょうが、構いません」
「つよ」
「ステラさんは、殺し屋を辞めようとは思わなかったのですか?」
「うん。それが当たり前だったし。その他のこと、世界のことも何も知らないからね」
「どんな成り行きでそうなったんだ?」
「ウチらはみんな捨て子なんだ。拾われた場所がそういう所で、小さい頃から鍛えられきた。だから正直、こういうご飯も初めてなんだ。みんな携帯食料とか任務中にパパッと食うくらいだから。あの時、二人に奢ってもらったのも、すごく美味しそうに見えたから。興味本位で......」
「なるほどな」
「それは辛いですわね...... うわーん」
急に泣き出したレイ。
「別に辛くはないよ。それが普通だからさ」
「それで? どうだったの?」
「何が?」
キョトンとしてステラは聞いた。
「ご飯は美味しかった? 今食べるご飯は美味しい?」
奈緒は端的に聞いた。
「うーん。まだ、わかんない」
リタは微笑んで見せた。
「ナオさん達は? どうしてオアディールにいらしたの?」
「そりゃ、ブレイブになる為よ」
「やっぱりそうですか! 夢ありますよね〜ブレイブ〜」
指を組んで目を星にした。
「でもあのライブラからっしょ? 大変な時期だろうに」
「ライブラ!? そんなところから来たのですか? よくぞご無事で.....」
「実際もっと、深い理由がありそうだけど、どうなん?」
言葉に詰まった奈緒の顔に視線が集まった。
リタは視線を切るように口を開いた。
「まぁ、色々あったんだ。知っての通り、ライブラは魔王に壊された。奴は強すぎた。何も出来なかった」
「だから、ここに入ったの。最強と謳われるこのギルドに」
「ライブラじゃ、強くなれなかったん?」
リタはボロボロのスイを思い返した。
「負けたからな。アタシ達、みんな」
沈黙がリビングに流れた。
「まぁ、それだけじゃないよ。ブレイブっていう仕事を単純にやってみたいのもあるんだ。復讐だけに囚われてしまうのも、何か違う気がするしね」
「そうですね。素晴らしいと思います......」
涙を流したレイ。
「アンタよく泣くねー」
冷めた目で見るステラ。
「貴方には感情がないのですか!?」
「無いよ〜ウチには。でも、アンタらの事は、ちょっと分かったかも」
「何が?」
「だから、強いのかなぁとか」
ポカンと天窓を眺めて言った。
「確かに。二人ともアホみたいに強いですもんね〜」
「そんなことないよ。あっ、ムギコ〜魚買ってるよ〜」
話を逸らすように立ち上がった奈緒。
魚の切り身を皿に置くと、ムギコはやってきた。
魚を咥えた瞬間、またカーテンの裏にすぐに戻っていった。
「ま、一歩ずつ、やっていくよ。明日は早速仕事を受けてみようかな」
その後も4人は色々話し込んでいき、あっというまに日は落ちていった。
ワイワイと弾む楽しい声は外まで漏れた。
そんな一軒家を、見つめる男が一人、道に立っている。
しばらくすると男は歩いて去っていった。
ステラとよく似て、その男の瞳は深く沈んでいた。




