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賞与ゼロの万年事務員、異世界ボーナス無双  作者: 海月 恒


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23/29

第23話  3回目と2回目の約束

目を開けると真っ白な空間にいた。



「なんで今なん? ふざっけんな殺すぞこらあああああああああ!」




文字通り沸騰する奈緒。




『制限時間内に全ての箱を壊してね。時間は2分!』




無数に分裂した赤い箱は縦横無尽に飛び回り、尚且つレーザー攻撃を放ってきた。



奈緒は顔を逸らして避ける。



「2分もいらねぇよ」



『よーーい!』



「瞬殺だ......」



『ドーーーーーン!』




奈緒は光の如きスピードで、赤い箱を粉砕。






『チャレンジクリア! おめでとう! ボーナス獲得ぅー!』


紙吹雪が舞う。


お金の音と共に奈緒の頭の上に数字が降りてくる。



『報酬を選んでね!」



「あぁ? 報酬?」




プロジェクターのように浮かぶ文字が三つ並んだ。



『経験値』  『マニー』  『アイテム』 



「なんだ? 今回からこんなふうに変わったのか?」



アナウンスは何も答えない。


「じゃ、じゃあいつも通り......いや。最近力が強過ぎて気を遣ったから、マニーで」



『マニーボーナス獲得完了! 次のボーナスは1週間後だよ! またね!』




「いくらよ!」




視界は真っ暗になり、また一気に明るくなった。





気がつくとアンセルの顔が鼻につきそうな距離だった。






ふぁあああああああああああああ!




奈緒は目を瞑った。




「ヒッポグリフだ!」







「......ん?」




小さな小鳥を掴んでみせるアンセル。

顔は遠ざかり、小鳥を手の平に置いてはしゃぐ。


「すげぇ、絶滅危惧種だぞ! 可愛いなーお前!」




「なによそれええええええ!」




思わず奈緒は叫んだ。



「びっくりしたー! なんだよ!」


ヒッポグリフは震えてるアンセルの手に隠れる。


「いや、なんか、あの。もういいや。大丈夫」



額を抑えて項垂れた。






――ちょっともう疲れた。

感情がジェットコースターだ。

つかジェットコースターから落ちた感じ。





「そろそろいこうか。次もあるし」


アンセルは立ち上がってお尻をはたく。


「う、うん。その子どうするの? 食べるの?」


ヒッポグリフはまたプルプルと震える。


「食べるか! 保護してる人に渡すんだよ!」


優しく撫でるアンセル。



「そっか」

奈緒は微笑んで言った。









「よし俺たちも移動だ...... ポイントK、出番......」



「......もうやめましょう」

涙ながらに誰かが言った。


「なに?」


「もう放っておきましょう。良くないわこんなの」


「しかし、まだ奴が白だと決まったわけじゃ......」



「人の純粋な恋路を邪魔する資格は、誰にもないわ!」



ハッとする訓練生。


「ま、まぁそうだな」


「あいつはいい奴だった。魔物なわけないな」


「そっとしとこうぜ」




「よし。全兵に告ぐ。これにて尾行任務を終了する。みんなよくやった」



水晶の音声が消える。



リタは思う。




――モリーさん。アンタが魔物とか言い出したんだろうが。














夕暮れ時、噴水広場に戻ってきた二人。



「今日はありがとう。本当。色々楽しかった」

アンセルは優しい声で言う。



「うん。私も」

髪を耳にかけて、足元を見ながら言う。



「本当に送らなくていいの?」


「うん。みんなに変な目でみられるし面倒だから」




噴水の音が、少し寂しげに聞こえる。




「じゃ、じゃあまたな! いつでも店きてくれよ?」


少し戸惑いながら言う。


「う、うん! 来るよ。リタと。またね!」


奈緒は気まずそうにして振り返って歩いて行った。



2歩、3歩と遠ざかっていく奈緒のスラリとした背中。



アンセルは動き出せなかった。


我慢できなくなって咄嗟に声を出す。



「あ、あのさ!」




奈緒はピタリと止まった。





「もしよかったら、また..... いや、」



アンセルは拳を握る。



「俺と、」



腹に力を入れる。



「こんな俺だけど、付き合ってくれないかな?」




奈緒はそのまま停止して振り向かなかった。



「もっと一緒にいたいって、思ったんだ......」



少し間をおいて背中越しに、


「んーどうしよっかなぁ〜」


悪戯な顔で微笑んだ。




「給料だろ!? 俺めっちゃ働くよ! めっちゃ!」




「ふふ。君はそのままでいいよ」

奈緒は微笑んで颯爽とアンセル近づいていく。



目の前にくると、奈緒は眉を八文字にした。



「付き合うかどうかは少し、考えさせて?」



「そ、そっか。わかった」

アンセルは悲しそうに呟く。




「でも次のデートは、私がご馳走するから」




奈緒はそういって、アンセルにギュッと抱きついた。



アンセルは少し驚いたが、安心したかのように笑って抱きしめて返す。



「分かった」



「またね。連絡する。予定決めようね」


「ああ! 帰ったら連絡くれよ?」






二人の帰り道の足取りは羽のように軽かった。



顔を照らす斜陽が、



背中を温める夕日が、



二人の世界を美しく、塗り替えていく。



期待や不安が高まる未来も、今の連続だとすればきっと、



幸せなものであると。



疑うものは誰もいなかった。


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