78 ハーフエルフっ娘の遊園地がピンチ3
今回、話の区切りの問題で大変短くなってしまいました。
ご了承ください。
6の月の終わりに、いよいよ王都でもダムの稼働が開始した。
こちらのダムもフォーリィ案を採用していて、第一形態として低めのダムを建設したあと、発魔力しながら数年かけて高さ数十メアトルのダムを完成させる予定となっている。
ただ、カデン領の川とは川幅が圧倒的に違うヌァイル川だ。第一形態とはいえ搭載されている発魔力機の数はカデン領の一〇倍にもおよぶ。
そこでフォーリィは、王都で魔力契約を結んでいる全てのお客様に、国営魔力会社に切り替えてもらう事にした。
それと同時に、魔力を持たない人向けのカデン製品を販売し始めた。
つまり、魔力会社から月契約で魔力を購入すれば、魔力コンセントから得られる魔力で誰でもカデン製品が動かせるようになったのだ。
お陰でカデン製品が飛ぶように売れた。
そのため、すでに開通している王都と南カデンを結ぶ列車の貨車には、連日大量のカデン製品が積み込まれて続々と王都に出荷されていく事となった。
そして7の月の半ば、フォーリィは領邸の執務室に彼女の家族、ラントゥーナ補佐官、そしてフォーリィが子爵になってから雇い入れた北カデン内政担当のクリザテーモたちが集まっていた。
クリザテーモは八〇台半ばの若いハーフエルフで、フォーリィが子爵になってすぐに雇い入れた。
そしてグァニューム子爵が残してくれたアドバイザーから引き継ぎを受けた後、北カデンの内政を担当してもらっている。
「いよいよコエリーオ王国との戦争が近付いて来たわ」
フォーリィは開口一発、みんなにそう告げた。
それを聞いた皆は、いよいよ来たかと言う顔をして、フォーリィの次の言葉を待った。
「とは言え、商人達から聞いていてるストラペイオ侯爵が購入した食料などを見る限り、どうも出兵の規模がかなり小さくなりそうなの」
「それって、どういう事でしょうか」
質問したのはラントゥーナ。でも他の面々も不思議そうな顔をしている。
「これは憶測だけど、たぶん侯爵はコエリーオ王国軍をこちらに押し付けようとしているのだと思うわ」
「それって、どういう事なの?」
ヴェージェの質問に、フォーリィはあっけらかんとした顔で答える。
「つまり、私達が攻撃したように装って適当に戦いを仕掛けたら、敵軍をカデン領まで誘導して、どこかに隠れるの。そうすれば、敵軍はそのままカデン領になだれ込むでしょ?」
「「「「「!!」」」」」
フォーリィの言葉に、この場の全員がショックを隠せないでいた。
ただ一人を除いて。
「ストラペイオ侯爵様ならやりかねないですね」
そう言うラントゥーナも、ショックこそは受けていないが神妙な面持ちだった。
「そ、それって、王国の法律に違反していますわよ!」
「お義姉さん。戦闘時に劣勢になっても退却したり隠れたりしてはいけない、なんて法律はないわよ」
「で、でも……そんなのズルいですわ!」
戦争は綺麗事ではないし、背後から味方に撃たれるなど皆無ではない。
だが、この場でそんな事を議論していても仕方が無かった。
周りを見渡しても、ラントゥーナ以外はストラペイオ侯爵に対する怒りをあらわにしている。
だからここは、無理に納得させようとはせず、話を進めることにした。
「もちろん、故意に仲間を巻き込んで、大量の兵士を失う結果を招いたら、それこそ国王様に処断されるわ」
それでも、とフォーリィは言葉を続ける。
「侯爵は確信しているんでしょうね。私達なら敵を壊滅させられるって」
全員がフォーリィの言葉を理解出来てしまう。
だからと言って、こちらが望んでいない、他者が始める戦争に参加されられるのは納得がいかなかった。
そしてフォーリィも同じ気持ちだ。
だから、彼女は不敵な笑みを浮かべると、皆の前でこう宣言した。
「もっとも、私はそんな茶番に付き合う気はないわ。だから、もしコエリーオ王国軍がカデン領に入ってくるようなら今まで封印していた兵器を惜しげなく投入して、敵を侯爵様にお返しするわ」
その後、フォーリィから聞かされた計画の概要に、皆は言葉を失った。
◆ ◆
そして7の月の終わりに、ホーズア王国から正式にコエリーオ王国に対して宣戦布告が行われ、そのようすがテレビ中継で諸外国にも伝えられた。
さらに二日後……
「大変です!昨日、ホーズア王国がサリーニョ砦に大軍を差し向け、現在交戦中です!」
「「「なにっ!?」」」
突然謁見の間に飛び込んで来た兵士の報告に、国王達は騒然となった。
サリーニョ砦はコエリーオ王国の最南端、ホーズア王国に接する国境にある砦で、万一、ホーズア王国軍が攻めて来た時に自国を守るために建設されていた。
その砦が襲われ、ホーズア王国軍がコエリーオ王国に攻め込もうとしていると言うのだった。
「まだ、宣戦布告の書簡も受け取っていないのだぞ!」
怒りをあらわにするコエリーオ王。
「まさか、テレビで放送したから、こちらにも伝わっているはずだ、とか言うのでは」
報告を受けた時には内心狼狽えていた将軍だが、何とか心を落ち着かせると、可能性を口にする。
「馬鹿な!非常識だ!」
コエリーオ王は相手国を非難しながらも、その電光石火の動きに恐れのようなものを感じていた。
こうして、宣戦布告翌日に戦闘を開始するという、前代未聞の戦いの幕が切って落とされた。
次回、もしくはその次あたりでサラマンダーを出したいと思っています。




