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69 ハーフエルフっ娘、領地繁栄に奔走する

【カデン小話4】

ラントゥーナは最初、男性を予定していました。

だけど女性の方が面白そうだったので、女性に変更し、男性パートとして新たにイペブラクオンを登場させました。

「ラントゥーナ、遅かったわね。もうパーティー始まってるわよ」

「男爵様。これでも大急ぎで仕事を終わらせて来たんですからね」

 ラントゥーナが戻った時には、すでに領邸の大広間にはフォーリィの家族やイペブラクオン達など、カデン領の主だった者達が集まってパーティーを楽しんでいた。


「しかし、やっと国王様への報告も終わって、元ラトゥーミアの王都の管理も国王様にお任せする事ができましたね。男爵様、お疲れ様です。そして戦勝おめでとうございま……す……」

 メイドからワインのグラスを受け取り、フォーリィに祝いの言葉を述べていたラントゥーナが、壁の横断幕を見て硬直した。

 そこには、こう書いてあった。


『祝い。借金二憶クセル突破』


「ん?どうしたのラントゥーナ。顔が赤いけどもう酔っちゃった?」

 顔を覗き込んで尋ねるフォーリィを、ラントゥーナは青筋をたて、目を吊り上げて見下ろした。


「何を祝ってるんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 この日、カデン領都に季節外れの雷が落ちた……



「いやぁ、きりが良い数字だと何だか嬉しくなっちゃうじゃない?」

「嬉しくありません!むしろ心配してください!」

 あの後、ラントゥーナに横断幕を書き換えさせられて、戦勝祝いとしてパーティーが再開される事となった。


「昨日王都に輸送された元ラトゥーミア国王は、今後どうなるのでしょうか」

 イペブラクオン内政担当がフォーリィに尋ねて来た。

 彼はカデン領内の治安維持を含め、領都だけでなく領地全体の運営を指揮してもらっているため、今回の戦争を含め、外交的な情報については一般領民が知っているレベルのものしか無かった。


「近日、公開処刑になるらしいわよ。テレビ中継をお願いされたわ。まあ、生かし続けていたら元国王を奪還して国家再建を目論む人たちも出てくるだろうし、何よりも元国王に対するラトゥーミアの民の怒りが収まらないでしょうからね」

 彼らの怒りを(あお)りまくった張本人はフォーリィなのだが、その事をツッコむ者はいなかった。


「今回の戦闘中、あなたに内政のほとんどを丸投げする形になってしまったわね。ごめんね。大変だったでしょ?」

「いえ、滅相もない。それに、アールヴゥーレ男爵様の側近だった私を信頼して下さっての事です。私は今、とても充実して職務をまっとうしています」

 申し訳なさそうにしているフォーリィに、イペブラクオンはとても生き生きした顔で答えた。


「緊急性のそれほど高くない案件については報告書にまとめていますので、後日、目をお通し下さい」

「分かったわ」

 イペブラクオンの言葉に、フォーリィは少し顔を引きつらせる。

 ここ一か月余りの周辺領地鎮圧などで、緊急性の高いものは即断で対応を指示していたが、その他の事案などがまとめられた書類の山が増えてきているのが見えていたが、そこまで手が回らない状態だったため、放置されて来たのだった。


「と言うわけで、お姉ちゃん、お願いね♪」

「えええぇぇぇぇ!?」

 いきなり、とんでもない事を押し付けられたヴェージェは、危うくワイングラスを落としそうになった。


「そんな、無理よ私は」

 これまで彼女はフォーリィの助手的な立場で、彼女と行動を共にすることが多かった。

 領邸に残っている時でも、資料の整理や会計のチェックなどの事務仕事がメインだった。

 そこにいきなり、パーティーの場でお願いと言われても困惑するだけだ。


「大丈夫よ。取り敢えず自分で判断できるものだけを処理して。それだけでも大助かりだから。あと、少しでも迷うような場合は、ママやラントゥーナに相談して。それでも対応できないものは私がやるから。ね?お願い」

「ま、まあ、それでいいなら取り敢えず頑張ってみるわ」

 可愛い妹に懇願されては断り切れない。

 こうしてヴェージェは内政に関わるようになった。


「パパァ♪お疲れ様。モヤシの生産など農作物の管理、ありがとう♪とても助かったわ」

「なあに、フォーリィが頑張っているんだ、パパも頑張らないとな」

 父親に飛びついて頭をグリグリ押し付けるフォーリィ。


 顔を上げてニコニコ笑顔でスタニェイロを見上げるフォーリィ。

「もう四の月(クァトゥオルバー)に入ったけど、春の作付けは、いつ頃から始まるの?」

 モヤシは今も生産が続いているが、すでにホーズア王国の許可を得てフロレーティオ男爵領との交易が始まっている。

 領地内消費を差し引いた食料は全てフロレーティオ男爵領に回しているが、まだまだ足りない状態で、未だ向こうでは、かろうじて餓死者が出ていない状態だった。


「春野菜は今月の半ばくらいからだな。でも今年はガラスハウスがあるからな。あれは真冬でもなければ暖房装置無しでも十分に野菜が育つから、先月半ば頃から作付けを始めさせている農家もあるぞ」

「いいところに気が付いたわね。さすがパパ。頼りにしてるわ♪」

 そう言って、再びスタニェイロの胸に頭をグリグリと押し付ける。


 ガラスハウスについては、フロレーティオ男爵領に、五年間の魔石の採掘権と交換で技術供与しているので、向こうでも作付けが始まっている頃だった。

 そしてカデン領としては、不足気味で高騰している電気と光の魔石を大量に仕入れる事ができ、フォーリィ所有のカンパニーにそれらの魔石を卸して、毎月一千万クセル以上の利益を得る算段だ。

 フォーリィが、当時戦争中だったラトゥーミア国のフロレーティオ男爵に交易を持ち掛けた理由が、今後見込めるテレビの需要で高騰するであろう魔石をカデン領が大量に仕入れて、領地としての利益を得る事ができると踏んだためだった。


      ◆      ◆


「発魔力量が五倍?すごいわね」

 翌日、フォーリィはダムを視察して、新旧二基の発魔力機に設置してある魔力計の数値を見て目を輝かせた。

 この魔力計、電動モーターカンパニーが魔力モーターを開発した事により実現したものだ。

 魔力線を流れる魔力の一部を分岐して小さな魔力モーターに流し、そのモーターの回転力で針を動かす仕組みだ。


 そして、彼女が今比較しているのは、電気の魔石を使い、古い形の羽根を搭載した発電機から魔力変換した発魔力機と、魔力モーターの原理を利用した発魔力機に、新しい羽根を付けた新型の発魔力機だった。

 フォーリィは最初から、故障などへの対策のために二基の発電機を搭載できるようにダム建設を行っていたため、このように新旧型の比較ができるのだった。


 ちなみに、ドワーフ達が提案した新型の羽根は、地球ではバルブ水車として落差の低い発電所で使われている物に近かった。


「これだったら第三プランで行けるわね。旧い発魔力機は撤去して新型に替えてちょうだい。ダムの方はこのまま壁の増築を続けて、五年後の完成を目指すわよ。今開発させているクレーン車やショベルカーなどの重機は、完成しだいこちらに持って来るからね。みんな、頑張ってね」

「「「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」

 後半、何を言っているのか分からない作業員たちだったが、アイドル的存在のフォーリィが期待してくれている。それだけで、やる気が満ちていた。


 彼らはラトゥーミアとの戦闘が始まる際、突然の計画変更を強いられて大変つらい思いをしたが、フォーリィが運び込んだテレビを通じて、彼等が携わっている事業が戦闘に大きく貢献した事を知り、ますます作業に力が入ったのだった。



 こうして、フォーリィは各カンパニーを視察して、国内の生産状況を確認して回った。

 そして……

「お嬢ちゃん、もうダメだ」

 泣きついて来たのは、ガネトムートから技術を引き継いでテレビの生産をしているテレビ事業カンパニーのドワーフ技師、アラゴムートだった。


「今回の戦闘でテレビの発注が一〇倍に膨れ上がって……増産しても……増産しても足りない状態で……最近はみんな、ここで寝泊まりしている始末だ」

 よく見るとカンパニーの人達は顔色が悪く、目の下にクッキリとクマが出ていた。


「これは……至急対策が必要ね。納期を遅らせてもいいから、今日はもう解散。そして明日も休みをとって。絶対に働いてはダメよ」

 彼女の言葉に、カンパニーのメンバーは安堵の色を浮かべた。


「生産については、急いで生産工場を立ち上げるから。あなた達には今後、生産効率向上や生産の自動化の研究を行ってもらうわ」


 こうして、カデン領でのカンパニーのブラック化が一つ、改善の方向に向かったが、彼女が抱えるカンパニーは総じてブラック化に向かっていたのだった。

 その代表たるものが、彼女が旅客機の開発をお願い(むちゃぶり)している、ロックムート率いる電動モーターカンパニーだった……


      ◆      ◆


「男爵様。国王様からのテレビ電話が入っています」

「国王様から?」

 ラントゥーナからの報告に首を傾げるフォーリィ。

 ラントゥーナはその理由について、何となく予想はついていたが、確信があるわけではなかったので、口にはしなかった。



『褒章式が三日後に決まったので登城するように』

 ホーズア国王の言葉に、フォーリィは首を傾げる。


「誰の褒章でしょうか」

 本当に思い当たる節がないと言う顔で尋ねるフォーリィに、国王は呆れた顔を見せる。


『そちの褒章に決まっているだろう。まさかラトゥーミア国を制圧した其方(そなた)に何の褒章も無いと思っていたのか?』

「ああ、そう言われれば、そんな事もありましたね」

『そんなことって……』


 彼女はわざととぼけている訳ではない。

 彼女にとって、ラトゥーミアを滅ぼしたのは兄を守るためであって、国家間の領土問題や権力闘争などどうでも良かった。

 そして兄を救い出し、今後の火種も潰した今、彼女にとって大事なのは領土の発展だけであり、あの戦争の事など興味もなく、彼女の意識から完全に追い出されていた。


「分かりました。三日後にそちらにお伺いします」

『待っているぞ』


 こうして、褒章式への出席が決まった。

 その褒章式は、彼女が思わぬ方向に、国が大きく変わる結果となる事は、この時フォーリィは想像すらしていなかった。

次回、カデン領が大きく変わります。

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