片鱗
平原にある街道を外れ、しばらく進んだ先には山がある。木があまり生えていない、ごつごつとした岩肌の斜面には洞窟があった。アラン山賊団はその洞窟を拠点としており、総勢一〇〇人を越える冒険者達は、付近の林で戦の準備を始めていた。
「グレンデールの冒険者は、山賊討伐に子供も動員するのか」
そう口にしたのはヨハンだ。周りが戦いの準備を整える中、この男だけは腕を組んでそれを傍観していた。傍にはいつもの側近二人もいた。
「子供? んなもん連れてくるわけ――んげぇギルベェ!? 何でお前付いてきちゃってんのっ!」
「何でって、雑用だし」
ヨハンの言う子供とは、もちろんギルベルトのことだ。どうして――そしてどうやって付いてきていたのかと、アプリコットは仰天していた。
「雑用って、これから戦争だぞ分かってるのかっ? ――とりあえず、付いてきちまったからには仕方ない、お前は後方の支援部隊に混じってろ。そうだな、怪我人が運ばれたりしたらそれの治療を手伝ってやれ。決してあたしや、エイプリルに付いていって戦いに巻き込まれるような真似はするなよ、ボスからの命令だ!」
アプリコットはギルベルトに厳命した。最後に、「ったく、どうやって付いてきた……?」と、大人でも苦労するような整備されていない道を、子供がどうやって置いていかれずに付いてきたかと怪しむ。先日の全力とびつきアタックを回避したこともあり、疑惑の目はますます強くなっていた。
「うーむ、少しだけ『雑用』のお手伝いをしようと思ったのだが……さすがにこれ以上は勘付かれそうだな、今回は自重しよう」
ギルベルトが言うこの場合の雑用とは、戦闘のことだった。巨大な斧を担ぎ上げてギルベルトから離れるアプリコット。じとーっとした疑惑の目を向けられて、いつも腰に差している二本の剣を、今回は振るわずに過ごそうと決めるのだった。
「ちょっとちょっとるー君、付いて来ちゃってたの? ボスが凄い怪しむような目でこっち見てたよっ」
そこに、戦闘準備を済ませたエイプリルが耳打ちしてきた。愛用の剣と盾を持ち、いつもの黒いニットにショートバンツ、鉄の胸当てと、今日はバイト姿ではなく、本来の冒険者姿だ。栗色の髪も縛って戦闘準備は万全だった。
「うむ、だから今回は傍観に徹しようと思う。そこまで手強い山賊でもないようだしな。万が一形成が変化した場合は出るつもりだが――エイプリルお姉さん、早速震えているげど、大丈夫?」
「へ、へへへ、平気だわよ! お姉さんには大英雄アタッククイズがあるもん!」
かたかたと、篭手や金属のブーツが音を鳴らす程にエイプリルは震えいていた。心の準備は、まだまだ出来ていない様子だ。
「とにかく、無茶はしないようにね。戦いは引き際も肝心だよ。死なれると、僕も困るし」
「るー君……お姉さんのことを心配して……!」
「いや、借金があるからね。それとその剣が壊れる姿も見たくないし」
「るー君ひどいっ!」
借金の名義はエイプリルだが、彼女が死ねばそれがギルベルトに渡る可能性がないとも言い切れないのだ。本音をぶっちゃけられたエイプリルは、恐怖に震えながらもしっかりとツッコミを入れるのだった。
「大丈夫よエイプリル、私がカバーしてあげるから。それにあなたも、ちょっとは強くなったんでしょう?」
いつもの白いローブ姿に身を包んだアンナがやって来て、エイプリルに声を掛けた。身の丈ほどの大きな杖を手に持って、こちらも戦闘準備は万全。余裕の表情を浮かべるその姿は、非常に頼もしかった。
「一〇〇件解決のことなら事情が違うんだけど……でも! ちょっとは強くなったよ、ちょっとは! 私には大英雄アタッククイズがあるんだ!」
「な、何その死ぬほどダサイやつ……」
エイプリルの言うそれが何なのか皆目見当の付かないアンナは、死ぬほどダサイと本音が漏れた。
「まぁ……何だか分からないけど、期待してるわよ。それとギルベェ君、君は大人しくしているのよ。エイプリルお姉さんは、アンナお姉ちゃんが守ってあげるから」
「うん、お願いするね。ただアンナお姉さんも、人のこと気にしすぎて自分のこと疎かにしないようにね。戦いは一瞬でも気を散らすと、それが決定的な隙になっちゃうから」
「ふふっ、ギルベェ君は相変わらずおませさんね。ありがとう、決して油断はしないように頑張ります」
大英雄として戦いのアドバイスをすると、アンナは冗談めかして応えた。どこまで伝わっているかは分からないが、伝えないよりかは遙かにましだろう。
「よし、お前ら準備はいいな? 作戦は伝えたとおり、正面突破! 死人ゼロでアラン山賊団の頭を捕らえ、グレンデール冒険者の恐ろしさを他の山賊共にも知らしめるぞ!! おっしゃあ、あたしに続けぇ!」
やがてアプリコットが小高い場所に立つと、冒険者達に号令を下した。自ら先陣切って進む、グレンデール最強の冒険者。その後に、アンナやエイプリル、他一〇〇名の冒険者が続いた。
異変に気付いたアラン山賊団の手下達が、続々と洞窟から出てきて、交戦し始めた。乱戦となり、あちこちで雄叫びが上がっていた。
「山賊側は籠城戦は不得意のようだな、早々に打って出るとは。冒険者側も、腕が良い者が多いせいか上手くいってはいるが、統率はイマイチだな。自分勝手な戦い方だ」
一〇名程度の後方部隊に混じり、ギルベルトは遠目から見る戦をそう評した。戦いから離れたいと願う少年の体がどうしても疼いてしまうのは、戦いがもはや生活習慣として刻まれているからだろうか。今すぐ飛び込みたい欲求を抑えるのが大変だった。
「さてと。彼女達は無事かな?」
細かく観察したいギルベルトは、傍の冒険者から双眼鏡を借りる。その先に映るエイプリルは――
「――も、も、も、問題でし。け、剣のだだあ、いゆうは、お名前、なぁ?」
「何言ってるか全然分からねぇぞ女ぁ!」
「ひぃぃぃっ!」
ダメみたいだった。読唇術なんて技はギルベルトは持ち合わせていないが、彼女は口をかたかたとさせ、言葉になっていないのがよく分かる。遠く離れたギルベルトの耳にまで、歯のかち合う音が聞こえてきそうだった。
「しまった、恐怖で問題が聞き取れないほどに口が回らなくなるとは。くっ、盲点だったな。――エイプリルお姉さん、死なないでね。借金一人で背負うの嫌だから」
剣にしか興味のない男はそう言い残し、どうにか死なずに立ち回っているエイプリルから、傍のアンナに双眼鏡を向ける。
「ど、どうしたのよエイプリル、いつもと何も変わってないじゃない! くっ、私がカバーするから、あんたは防御に徹しなさい! ――いくわよ、〝ファイアストーム〟!」
アンナが杖を横に払うと、炎の竜巻が山賊二人を飲み込んだ。戦い慣れしたアンナは群がる山賊をことごとく焼き払っては追い返す。
「ほう、炎属性の魔法使いか。自信に満ちているだけあって、卓越した魔法の腕だ。しかし――ここの山賊とは相性が悪いようだな」
彼女は炎属性に特化した魔法使いだった。紅蓮の炎は高く立ち上って渦を巻き、群がる山賊を次々焼き払う。
しかし、アラン山賊団は炎耐性持ちが多かった。それもなかなかに高い耐性。焼死させるには至らず、そんな強力な炎に巻かれても尚立ち上がる者も多かった。
アラン山賊団は共通の戦法を取っていた。青いオーラを放つ魔法の短剣で直接斬りつけたり、投げたりしていたのだが――
「炎に強いとか、燃えるじゃない。いいわ、それなら――最大火力で吹き飛びなさい! 〝ファイアボルケーノ〟!!」
地の底が割れ、まるで火山が噴火するかのように灼熱の炎が飛び散った。その赤い輝きだけで目が焼き切れそうな炎には、さすがの炎耐性持ちでも耐えきれなかったようで、戦闘不能に陥るのだった。
「相性の差は更なる火力で跳ね返す、か。強くなるな、彼女は」
強大な魔法を放った後でも、アンナは疲れを見せずに次々と山賊を討ち取っていく。誰の目で見ても、一番活躍しているのはアンナだろう。
「うがあぁーっ! ぶっ飛べえぇぇ! ――大丈夫かお前ら、やばかったら後方に回れよ!」
続いて観察するのはボスことアプリコット。冒険者数人がかりでようやく持ち上がるような大斧を、全身白の戦化粧を発現させることで自在に操る彼女は、所構わず暴れ回っては、アンナの次に山賊達を撃破していた。
「う~む、暴れてるなぁ。しかし――」
だがそれを見ていたギルベルトは、アプリコットがただ暴れ回っているだけではないことに、気付いていた。
「……おっと、次はあっちか。お前ら、これに勝ったら祝勝会だ、それまで生きろよっ!」
アプリコットは信じられない身軽さで遠く離れた山賊の元へ飛んでいた。その山賊は、短剣を投擲しようと一人の冒険者に狙いを定めていたのだが、アプリコットの襲来によって、標的を目の前の彼女に変えざるを得なくなった。
「そうはさせんぜ山賊さんよ! そぉら、そこに寝てな!」
大斧でなぎ払うと、山賊は一撃で横倒しに倒れる。斬撃耐性もあるのか体がバラバラになることはなかったが、彼の後ろにあった岩肌だけは、綺麗な横筋が入り、崩れ落ちるのだった。
「素晴らしいな、ボスは。ボスがいなければ、多くの冒険者が討ち取られていたことだろう」
そんなあちこち跳び回るアプリコットをしっかりと追う。久し振りの現場仕事に、水を得た魚と彼女を見る冒険者も多い中、ギルベルトは彼女の働きを決して見逃さなかった。
「完璧な立ち回りだ。周囲の冒険者の危機をことごとく摘み取っている。いや、周囲だけではない、遠く離れた投擲兵の動きと、その狙いまで見透かしている。戦闘技術も卓越しているが、たった一人で一〇〇人の仲間を守るとは」
アンナの戦い方が功を上げる戦い方なら、アプリコットのそれは真逆に位置する戦い方。冒険者ギルドのギルド長である彼女は、豪快に大斧を振り回しているだけに見えて、全ての冒険者の安全を確保していたのだ。未然に防いでいる分も合わせたら、それはもう計り知れない働きだった。
「彼女の功績に、果たして気付いている者がどれくらいいるか。……A級冒険者か。この街で一番強いと言われるわけだ」
この戦いで最も功績を挙げたのがアンナなら、最も仲間を救っているのはアプリコットなのだった。
「そういえば、大英雄の弟子は――」
ギルベルトがヨハンを探し始めたその時――アプリコットの働きをも超える者が現れた。
「……そんなボスのフォローをかいくぐって負傷するとは……やるね、エイプリルお姉さん」
「うぅ、これ絶対バカにされてるやつぅ……」
エイプリルだった。他の冒険者に肩を貸して貰って後方に下がってきた彼女は、どこかを負傷したのだ。アプリコットという尋常ならざる人物の働きを、ではどうやって超えたのか。
「で、どこをケガしたの? 血は出てないみたいだけど」
「脚震えすぎて捻りました、治療してください」
「うん、それはボスもフォロー出来ないね」
自分で捻って自爆したのである。ギルベルトも納得の理由なのだった。
「はぁ……ダメだねお姉さん。こんなんじゃ、いつまで経ってもアンナと一緒に仕事なんて出来ないよ……」
自爆した人の治療を任せるのもと思い、ギルベルト一人でエイプリルの治療を始める。すると、エイプリルは大きなため息をついた。
「アンナお姉さんは、そんなエイプリルお姉さんとでも、今すぐにでも一緒に仕事したがってるよ。……もしかして、実は気付いてるの?」
「そりゃもちろん! だってあの子、コンビ組みたいオーラブリブリ出してるもん!」
ブーツを脱がし、患部に回復薬を塗り込む。エイプリルは、アンナが一緒に仕事したがっていることに気付いていた。
「気付かない振りしてたってこと? ……僕のことは喋りそうなお姉さんが、そんな器用なこと出来るとは思えないんだけど」
「ま、まぁ、普通に気付かなかったことも、一回や二回くらいあったかもだけど」
「……僕と会ってからに関しては、ずっと気付いてなかっただけでしょ、絶対」
「そ、そんな細かいこと今はいいの! とにかく、エイプリルお姉さんは気付いていない振りをしていたってことで!」
何だか腑に落ちないギルベルトだったが、そういうことにして話を進める。
「気付いているからこそ、私は頑張らなくちゃいけない、あの子に応えなきゃいけない。なのに、体はこんなでさ……多分この戦いで、すごく失望させちゃったと思う」
「それでもアンナお姉さんは、一緒に仕事したいって言うんじゃないかな。一度くらい一緒に仕事してあげたら?」
気付いていながらどうして断るのか、人付き合いが苦手だったギルベルトには分からない。エイプリルの答えは、首を横に振ること。
「ダメだよ。だってお姉さん、ただの足手まといだもん。今だってそうだった、守ってもらってばっかりで……。それじゃ仲間とは言えない、コンビとは言えない。いつか私のせいで、あの子の命だって脅かしちゃうかもしれないんだよ。そんなの……ダメだよ」
しょぼくれるエイプリル。普段アホみたいに明るい彼女が落ち込んでいる姿を見て、悲しみとも、苛立ちとも違う得体の知れない感情をギルベルトは感じる。剣以外に興味がないというのに。
「一回の失敗がどうしたの。今日ダメだったら、それをまた次に活かせば良い」
「でも……」
それでも悩むエイプリルを、ギルベルトは単純明快に切り裂いた。
「仮に一〇〇回目の失敗だったとしてもだよ。アンナお姉さんに見限られるまではチャンスがあるんだ。諦めることは、見限られてからでも十分間に合うことなんだ。君には次がある」
そうして最後に、こう言った。
「だって君はまだ、生きているんだから」
「あいだだだだっ! るー君、力加減おかしいよっ!?」
つい力が入ってしまったギルベルトは、エイプリルの脚を折りそうになってしまう。伝わったのか不安だったので、もう一度言おうか迷っていたところに、彼女は応えた。
「るー君、ありがとう。――そうだよね、諦めるのは、後からでもいいんだよね。るー君、辛い自分の過去を思い出しながら励ましてくれて、ありがとう。お姉さん、頑張るねっ!」
自らの死を引き合いに出すようにして、賢明に励ましてくれるギルベルトを見て、エイプリルはすぐに立ち直った。エイプリルの良いところは、剣や盾を磨くところと、もう一つあるとギルベルトは感じた。それは――
すぐに前を向くところだ。
「まぁ、僕はそんなのでミスったことなんて一度もないけど」
「るー君ひどいっ!」
大英雄の一言に、エイプリルは元気にツッコむのだった。
戦いはアプリコットとアンナの活躍によって、冒険者側が断然有利だった。勝利は目前となり、後方部隊の緊張も解かれ、心に余裕が出来ていた。
その瞬間を待っていたのか。数本の短剣が、後方支援部隊に飛来した。
「――何っ!? 完璧な奇襲を防いだだと!?」
驚く声がすぐ近くの足元からした。泥だらけの男達が、地中から這い出てきていたのだ。
「やっぱり油断が最大の敵だね。みんな、ケガはないかな?」
誰もが予想しなかった奇襲。それを防いだのは、この場でただ一人の幼き少年。右手に子供用の木剣を持っていた、ギルベルトだった。
「その格好、緊急用の地下通路を通ってきた、ってところかな。見晴らしのいいこの辺りに出入り口があるかもな~、なんて思ってたけど、見事にここだったみたいだね」
城などには必ず、有事の際に退避できる避難通路があったりするものだが、どうやらこの山賊達もそれを用意していたらしい。ギルベルトは短剣を手にする山賊達を前に、臆せずに言うのだった。
「ちっ、どうやって防いだか分からねぇが、後方のザコ程度ならアラン様の敵じゃねぇ。むしろ、人質を取れて逃げやすくなるってもんだ! やるぞ、野郎共!」
アラン山賊団の頭と思しき男が複数の手下に命令を下す。その手には、この山賊団共通の戦法、魔法で出した青いオーラに包まれた短剣が。敵の数は六人、対してこちらは一〇人だが――無傷で勝つには厳しいだろう。
「お姉さん、大英雄アタッククイズのやり直し、する?」
「……あ、脚がっ!」
「まぁ……次頑張ればいいって僕が言っちゃったしね、仕方ない、今回は僕が――」
しかし大英雄が動けば話は別だ。言葉とは裏腹に、戦えることにちょっと嬉しそうにしたギルベルトだったが、一人の男によってそれは阻まれた。
「山賊のやり口は熟知している。読み通り後方部隊を狙ってきたか」
現れたのは、青色混じりの豪華な服を着た貴族風の男。貴族と奴隷の街の首長・ヨハンだった。前線に見えなかったのは、後方部隊の近くにいたということだろう。
「君達は下がっていたまえ。血で汚れたくなければな」
ヨハンは短い杖を手に取って、つかつかと悠然と歩く。山賊は前に出てきた貴族風の男を見て、その正体に気付く。だが――
「お前、ヨハン――」
「〝アイスソード〟」
一瞬だった。どういう意味かと冒険者達がヨハンに聞き返そうとした時には、六人の山賊達は皆、氷の刃によってその首をはねられていたのだ。
「……凄いな。凄まじい手並みだ。アンナどころではない。アプリコットでさえも、もしかしたら――」
杖を軽く振るっただけで、ヨハンは六人の命を簡単に奪った。飛び散った血がヨハンの服にかかるかと思いきや、それすらも凍らせて宙に止まらせ、汚れるのを回避する。鮮やか過ぎる手並みに、ギルベルトは思わず舌を巻いていた。
「うえぇぇ、血が凄いかかった。あーもう、洗濯代かかっちゃうよう」
他の冒険者達にはかからなかったが、エイプリルは思いっきり返り血を浴びていた。人の血で顔面真っ赤のエイプリルだったが、こういったことには微塵も恐怖を感じないらしい。それはそれで恐怖なのだがと、妙な感性の持ち主であるエイプリルにギルベルトは困惑するのだった。
「少年。今のは偶然か?」
「何のこと?」
「とぼけるな、その木剣で切り払っていただろう」
奇襲された時、ギルベルトは全ての短剣を木剣で切り払っていた。他の冒険者は攻撃されたこどすら気付いていないためやり過ごせていたのだが――このヨハンの青い目は、それを見逃さなかった。
「見間違いじゃないかな。ねぇ、エイプリルお姉さん」
「はっ! あ、あなたは杖の大英雄のっ!?」
エイプリルも当然気付いていなかったが、彼女は別のことに興味がいっているのだった。
「大英雄、か。……興が削がれたな。見間違いということにしておこう」
ヨハンはそれ以上追及をしなかった。大英雄という言葉に何か引っかかっていたように見えたが――ひとまず、ギルベルトはほっとするのだった。
杖の大英雄の弟子・ヨハン。彼の実力は、底が知れない。




