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エイプリルとアンナ、コンビで初めての仕事……?

「いち、にっ。……ふう、風が気持ちいい朝だね。ほらるー君、鳥さん達が『ちゅんちゅんスーパー冒険者さんが特訓してるよ』って言ってるよ。さぁ! 今日も一日、冒険者の仕事頑張るぞー!」

「エイプリルお姉さん、現実逃避はよそう」


 清々しい朝、エイプリルは朝の鍛錬で汗を流しながら言う。その目には、深く底のない闇が広がっていた。


「アハハっ、何言ってるのるー君、お姉さんは冒険者だよっ! 半日でD級の仕事一〇〇件片付けた、A級を約束されたも同然のスーパー冒険者! お仕事禁止はきっと夢! アハハハハっ!」

「ごめんねお姉さん。壊れちゃったね」


 すると、ずっと笑っていた彼女は、ピタリと笑うのをやめてこんな一言を放った。


「るー君。夜逃げしよう」

「……あんた何子供に強要してるのよ」

「あ、アンナ!? ……や、やだなぁ冗談冗談、破産者ジョークだよ、もうっ!」


 どうやら壊れてはいないらしい。いつの間にかエイプリルの特訓場所にやって来ていた『白き魔女』のアンナのツッコみに、エイプリルはとぼけた解答をするのだった。


「D級の仕事一〇〇件解決した人の噂聞いたけど、もしかしてあなたの仕業だったの? 凄いじゃない、D級の仕事が一件もないって、他の冒険者が嘆いてたわよ。……まぁ、やり方は随分とクレイジーだったみたいだけど」


 耳の早いアンナはすでに昨日の一件を知っていたようだった。


「で、どうやったのよ。あんたの実力でそんな凄いこと出来る気がしないんだけど?」


 核心を突く質問に、ギルベルトは生唾を飲み込んだ。自分の正体を知られないよう、エイプリルには上手く言い訳してもらわないといけない。果たして、嘘の下手なこの女性にそれが出来るのだろうか。


「そんなの簡単。私の力が突如覚醒して、立ち塞がる敵をちぎっては投げ、ちぎっては投げしてたら一〇〇件解決してたんだよ」


 再び目に闇をたたえるエイプリル。やっぱりちょっと壊れているのかもしれないと、ギルベルトは思うのだった。


「はいはい、そんなの信じるわけないでしょ。まぁいいわ、謎を自分で解くのも冒険者の本分だしね。それで、借金の方はどうするのよ。そっちも凄いことになってるんでしょ? まさか本気で夜逃げする気?」


 冒険者の本分ということで、アンナは追及するのをやめた。少しからかうかのような表情で、代わりに借金について尋ねた。


「し、しないよ破産者ジョークだよ! まぁ、真面目にコツコツ返していくしかないよね……ということで、これから仕事行きます……」

「仕事って、冒険者の仕事も禁止されたって聞いたけど、どうするつもり――も、もしかして」


 そこで何かに気付いたアンナは、帽子のつばをいじくりながら言いにくそうにしてこう続けた。


「な、何よもう、そういうことなら早く言いなさいよ。私と一緒に仕事したいのね。確かに、直接介入しないで、遠目で見てさえいれば問題はなさそう――」

「えっ! 仕事手伝ってくれるの!? ありがとうアンナ!」


 エイプリルはアンナの手を握って、言いきる前に礼を被せていた。キラキラした目のエイプリルに見つめられたアンナは、ようやく一緒に冒険者の仕事をするという悲願がかなったと、顔を赤らめて視線を逸らすのだった。


 だがギルベルトは気付いていた。エイプリルの言う仕事とは冒険者のそれではなく――


「お帰りなさいませご主人様♡ 日頃の疲れ、私達のご奉仕で癒してくださいね♡」


 バイトなのである。エイプリルは城に使えるメイドのようなフリフリ衣装で、男性客をテーブルに案内するのだった。


「な、な、な、何よこの仕事ーっ! ただのメイド喫茶じゃない!!」

「こりゃアンナ! お仕事中でしょ、お客様の前ではしたないですわよ! ごめんなさいご主人様ぁ、この子ぉ、まだ新人なんですぅ♡」

「気持ち悪っ! 猫なで声出して何を――っていうかあんた、慣れ過ぎでしょ!?」


 文句を言う割りに、ちゃっかりアンナも店の衣装に着替えていた。真面目な性格が災いしたのか何なのか、受けた仕事はきっちりこなす彼女なのだった。


「こ、こんな破廉恥な格好……! 胸の形が思い切り出るじゃないの……!」

「大丈夫だよアンナ。お触り系の店は私選ばないから。ガード堅いのでね!」


 衣装は胸の形がはっきりと分かる衣装で、客からは『乳袋』と言われていた。他にも谷間が露出している衣装などもあり、なかなかに男心をくすぐる店だった。スカートの裾も長いものから短いものまで多種多様。他の街なら性的過ぎて営業出来ないだろうが、ここは新しい街グレンデール。今のところは問題ない、素晴らしい街のである。


「……さてと、エイプリルお姉さんにアンナお姉さん、二人の邪魔するのも悪いし、僕はもう行くよ。またやらかして二人揃ってクビになっても悪いし、子供用の衣装もなさそうだしね」


 隅っこのテーブルで二人の接客姿を観察していたギルベルトは、席を立って話しかけた。別に二人のメイド姿を堪能していたわけではない。


「どうしたのご主人様♡ 一人でお外出て大丈夫? おしっことか出来る? お姉さんがご奉仕してあげよっか♡」

「大丈夫なのはエイプリルお姉さんが一番よく知ってるでしょ。あと、僕はご主人様じゃないからね」


 お仕事モードのエイプリルは両手で(ハート)の形を作りながら、ギルベルトに答える。近くのテーブルの客が、「おねショタ!」「おねショタ!」と、軽く盛り上がっていた。


「ちょ、ちょっと待ってギルベェ君、だったら私も一緒にこの店出たい――」

「こぉらアンナちゃん! あんまりお痛するなら、ご主人様の前でお尻ペンペンだぞ♡」


 逃げようとしたアンナだったが、エイプリルに抱きつかれて阻止されていた。服が引っ張られてより胸が強調されるアンナ。この手の店で恥ずかしがる従業員(メイド)が珍しいのか、彼女は彼女でマニアックな客からは人気が出ているのであった。


 そんな騒がしい裏路地の店を出たギルベルトは、これからどうするかと模索する。膨れ上がった借金を少しでも返済するため働きたいところだったが、どこかにいい働き場所はないだろうか。

 ――そしてもう一つ。復活の大魔法についても探ってみようと思っていた。静かに暮らしたいギルベルトだったが、自分の出自くらいは確認したかったのだった。


 表通りに出ると騒ぎの声を耳にする。どうやらまた冒険者同士のケンカらしい。


「あたしの名前を口にするなー!!」


 ゴチン、と、ケンカしていたと思しき冒険者二人が頭と頭をぶつけて失神していた。戦いに身を置く男二人を意図も簡単に鎮圧出来るのは、冒険者ギルド長であり、A級冒険者でもあるアプリコットだけだ。


「うげっ、またやっちまった。昨日の誰かさんのせいで書類が山積みだってのに……ぐあぁぁっ! 猫の手も借りたいぞー!」

「ボス。だったら僕を雇ってよ」


 迷惑を起こした張本人が増えた仕事を頂くという、何だか詐欺みたいな手口だったが、こうしてギルベルトは仕事にありつくのであった。

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