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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第26章 帝国編

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残った場所

帝国は、静かだった。


暴動もない。

祝賀もない。

制度は、いつも通り動いている。


再編区域の境界線は、引き直された。

だが、前より少しだけ――曖昧だ。


理由は、どこにも書かれていない。



《非裁定(ひさいてい/ノーリトリート)》は、

任務から外されていた。


処分ではない。

評価でもない。


「待機」


それだけだ。


「……切られてないけど、

 使われてもいないね」


ミリアが、ぼそっと言う。


怒ってはいない。

拗ねてもいない。


ただ、事実を確認しているだけだ。


「一番、

 扱いづらい位置だ」


リュカが答える。


「制度にとってはね」


エルドは、盾を磨いている。


前線に立つ必要はない。

だが、しまってもいない。


「……前に出なくていいのは、

 楽だな」


そう言ってから、

少しだけ黙る。


「楽すぎる」


レインは、窓の外を見ていた。


帝国の街は、今日も整っている。

人は歩き、

商いは続き、

誰も空を見上げない。


《完全模写理解(かんぜんもしやりかい/フル・アナライズ・コピー)》は、

静かだ。


呼ばれていない。

だが、消えてもいない。


「……皇帝から、

 何も言われてないね」


ミリアが言う。


「うん」


レインは、頷く。


「多分、

 言えないんだと思う」


「何を?」


「“正しかった”とも、

 “間違ってた”とも」


沈黙。


それは、

この章の結論だった。


リュカが、記録帳を開く。


久しぶりに。


「……書けることは、

 少ない」


「でも」


ペンを走らせる。


「削れなかった場所は、

 残った」


エルドが、顔を上げる。


「俺たちのことか?」


「いや」


リュカは、首を振る。


「判断を、

 一度止めた場所だ」


「裁定不能ってやつ?」


「そう」


ミリアが、少し笑う。


「嫌われるやつね」


「うん」


リュカも、笑う。


「でも、

 消されなかった」


その事実は、

小さい。


だが――

確かに、世界に残った。


夜。


レインは、一人で外に出る。


風が、冷たい。


ふと、

どこかで聞いた声を思い出す。


――やっぱり、後味悪いねぇ。


バル婆は、もういない。

だが、

掃除だけは済ませていった。


「……終わった、のかな」


誰にともなく、呟く。


答えはない。


だが、

次に進める程度には――

空気は澄んでいた。


翌朝。


新しい任務書が、

机に置かれている。


帝国名義ではない。

世界機関でもない。


差出人不明。


内容は、短い。


判断不能事例

現場観測のみ

裁定不要


ミリアが、紙を覗き込む。


「……これさ」


「私たち向けじゃない?」


エルドが、息を吐く。


「逃げ場がないな」


リュカが、記録帳を閉じる。


「書く場所は、ある」


レインは、紙を手に取る。


《非裁定(ひさいてい/ノーリトリート)》は、

選ばない。


だが――

呼ばれる場所が、確実に増えている。


「行こう」


それだけ言って、

レインは歩き出す。


帝国は、守られている。

制度は、続いている。


それでも。


裁定できない場所は、

消えなかった。


そしてそこに、

彼らが立つ。


判断しないまま、

前線に。


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