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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第59章 未確定の王たち

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未確定干渉

 光は、まだ収束している。


 だが。


 完全ではない。


 ***


 王都の空は、

 一本の線で分割されたまま、


 その内側だけが

 “正しい形”を保っている。


 ***


 それ以外は。


 崩れている。


 歪んでいる。


 残っている。


 ***


 《天環執行者》アストラエルは、

 その境界の中心に立っている。


 ***


 環は回る。


 速く。


 正確に。


 揺らぎなく。


 ***


「是正率、再計算」


 声が落ちる。


 わずかに遅れて。


「九十八・七パーセント」


 一拍。


「誤差、拡大傾向」


 ***


 “誤差”。


 それは本来、

 存在してはならないもの。


 ***


 だが。


 ここにはある。


 ***


 ミリアが、剣を握り直す。


「……上がんねぇのかよ」


 皮肉。


 だが事実だ。


 削っているのに。


 整えているのに。


 届かない。


 ***


 エルドが低く言う。


「削り方を変えてくるぞ」


 一拍。


「今までは“減らす”だった」


「次は――」


 ***


 リュカが補足する。


「“合わせる”だな」


 ***


 その言葉に。


 空間が応答する。


 ***


 アストラエルの環が、

 一段、速度を上げる。


 ***


「是正工程、更新」


 一拍。


「誤差適応開始」


 ***


 空気が、変わる。


 ***


 今までは。


 ズレを削っていた。


 ***


 だが今は。


 ***


 ズレに“合わせてくる”。


 ***


 ミリアが踏み込む。


 半歩ずらす。


 わざと。


 ***


 今まではそれで、

 補正が乱れた。


 ***


 だが。


 ***


 剣の軌道が。


 “そのズレに合わせて”修正される。


 ***


「は!?」


 ミリアの声が漏れる。


 ***


 当たる。


 当たるはずの軌道。


 ***


 だが。


 ***


 その瞬間。


 アストラエルの位置が、

 “同じだけズレる”。


 ***


 結果は変わらない。


 ***


 当たらない。


 ***


 エルドが前に出る。


 盾をずらす。


 守りの角度を崩す。


 ***


 だが。


 ***


 攻撃の軌道が、

 それに合わせて変わる。


 ***


 守れるはずの位置に、

 “守れない結果”が来る。


 ***


「……対応してきたか」


 ***


 エルフィナが繋ぐ。


 わざと不完全に。


 弱く。


 浅く。


 ***


 だが。


 ***


 その“弱さ”に最適化された結果が来る。


 ***


 回復が、足りない。


 補助が、間に合わない。


 ***


「……っ」


 ***


 リュカが観測を外す。


 角度を崩す。


 誤差を増やす。


 ***


 だが。


 ***


 観測対象が、

 そのズレに合わせて変化する。


 ***


「……最悪だな」


 一拍。


「ズレが意味を失う」


 ***


 カイラの思考が走る。


 乱数を混ぜる。


 非最適を選ぶ。


 ***


 だが。


 ***


 その乱数に対して、

 “最適な修正”が即座に上書きされる。


 ***


「……潰しに来てる」


 ***


 ノウンが告げる。


「誤差適応型是正」


 一拍。


「未確定、吸収開始」


 ***


 それは。


 最悪の形。


 ***


 “未確定”が武器ではなくなる。


 ***


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


 いつも通り。


 ***


 光の上。


 線の上。


 そのまま。


 ***


 アストラエルの環が、

 わずかに反応する。


 ***


「未定義対象」


 一拍。


「適応不能」


 ***


 その言葉に。


 レインの目が細くなる。


 ***


 そこだけ。


 例外。


 ***


 レインは、一歩踏み出す。


 ***


 補正がかかる。


 適応が走る。


 ***


 だが。


 ***


 止める。


 ***


 完全に動かない。


 ***


 “未確定”を、

 維持する。


 ***


「……そうか」


 小さく言う。


 ***


 動かない。


 決めない。


 合わせない。


 ***


 それは。


 ***


 適応できない。


 ***


 アストラエルの環が、

 一瞬だけ遅れる。


 ***


「……誤差」


 ***


 レインが、静かに言う。


「合わせるなら」


 一拍。


「合わせられない場所を作る」


 ***


 ミリアが振り返る。


「どうやってだよ」


 ***


 レインは、答える。


「決めるな」


 一拍。


「動きも、位置も、役割も」


 ***


 エルドが、わずかに頷く。


「……固定を拒否するか」


 ***


 エルフィナが、息を整える。


「繋ぎも……未完成で維持します」


 ***


 リュカが、笑う。


「観測拒否じゃ足りないな」


 一拍。


「観測未満、だ」


 ***


 カイラが、目を細める。


「演算しない」


 一拍。


「思考だけする」


 ***


 ノウンが告げる。


「全員、未確定状態維持へ移行」


 ***


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


「……いつもどおり」


 ***


 ヴァルが、玉座の前で笑う。


「いいな」


 一拍。


「それでいい」


 ***


 アストラエルの環が、

 高速回転する。


 ***


「誤差、増大」


 一拍。


「是正率、再計算」


 ***


 光が強くなる。


 空間がきしむ。


 ***


 だが。


 ***


 揃わない。


 ***


 レインは、静かに言う。


「まだ決まってない」


 ***


 その一言で。


 ***


 世界の“前提”が、揺らぐ。


 ***


 アストラエルが、初めて言う。


 わずかに。


 遅れて。


 ***


「……この誤差は」


 一拍。


「記録にない」


 ***


 戦いは。


 次の段階へ進む。


 光が、再び広がる。


 ***


 収束していた線が、

 今度は分岐する。


 だが。


 それは自由ではない。


 ***


 “制御された分岐”。


 ***


「是正工程、再構築」


 アストラエルの声が落ちる。


「――適応補正、最大化」


 ***


 空間が変わる。


 ***


 今までは。


 削る。


 合わせる。


 ***


 だが今は。


 ***


 “先回りする”。


 ***


 ミリアが動く前に。


 剣が振られる前に。


 結果が先に置かれる。


 ***


 斬撃の“終点”だけが存在する。


 ***


 途中が、ない。


 ***


「……っ!」


 ミリアが歯を食いしばる。


 振っている。


 だが。


 振った結果が、

 すでに否定されている。


 ***


 エルドが踏み込む。


 盾を押し出す。


 ***


 だが。


 衝突が起こらない。


 ***


 当たるはずの未来が、

 存在しない。


 ***


「……未来ごと削ってるのか」


 低く言う。


 ***


 エルフィナが、

 繋ぎを伸ばす。


 未完成のまま。


 ***


 だが。


 ***


 繋がる“前”に。


 結果が確定する。


 ***


 間に合わない。


 ではない。


 ***


 “間に合った結果がない”。


 ***


「……これ、ずるいですね」


 ***


 リュカが目を細める。


 観測を走らせる。


 だが。


 ***


 未来の結果が固定されている。


 ***


 観測する意味がない。


 ***


「……予測不能じゃない」


 一拍。


「予測済みだ」


 ***


 カイラの思考が、

 何度も立ち上がる。


 だが。


 すべて潰される。


 ***


 思考の“結論”が、

 出る前に消える。


 ***


「……これ、戦いじゃない」


 一拍。


「処理だ」


 ***


 ノウンが告げる。


「未来確定型是正」


 一拍。


「行動前に結果固定」


 ***


 つまり。


 ***


 動く意味がない。


 ***


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


 変わらず。


 ***


 光の上を歩く。


 未来の上を。


 ***


 その瞬間。


 ***


 “結果”が、ずれる。


 ***


 アストラエルの環が、

 一瞬だけ乱れる。


 ***


「……誤差」


 ***


 レインは、それを見る。


 ***


 理解する。


 ***


 これは。


 “未来を固定する能力”。


 ***


 なら。


 ***


 未来を持たなければいい。


 ***


「全員」


 静かに言う。


「結果を捨てろ」


 ***


 一瞬の沈黙。


 ***


 ミリアが、笑う。


「は?」


 ***


「当てようとするな」


「守ろうとするな」


「成功させようとするな」


 一拍。


「全部、捨てろ」


 ***


 エルドが、目を細める。


「……結果を持たない、か」


 ***


 エルフィナが、息を整える。


「繋ぐ理由も……捨てます」


 ***


 リュカが、笑う。


「観測結果もいらないな」


 ***


 カイラが、目を閉じる。


「最適も、いらない」


 ***


 ノウンが告げる。


「全員、目的未設定状態へ移行」


 ***


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


「……それ、いつも」


 ***


 レインが、一歩踏み出す。


 ***


 何も考えない。


 何も決めない。


 ***


 ただ、動く。


 ***


 補正が走る。


 未来が固定される。


 ***


 だが。


 ***


 その“未来”が存在しない。


 ***


 結果がない。


 だから固定できない。


 ***


 レインの動きが、

 初めて。


 補正をすり抜ける。


 ***


「……っ」


 ミリアが、目を見開く。


 ***


 続く。


 ***


 剣を振る。


 当てるつもりはない。


 斬るつもりもない。


 ***


 ただ、振る。


 ***


 その瞬間。


 ***


 軌道が、通る。


 ***


 アストラエルの環が、

 強く揺れる。


 ***


「誤差、急増」


 ***


 エルドが動く。


 守るつもりはない。


 ***


 ただ、立つ。


 ***


 盾が、意味を持たない。


 だから。


 ***


 補正されない。


 ***


 エルフィナが繋ぐ。


 回復しない。


 補助もしない。


 ***


 ただ、繋ぐ。


 ***


 その“不完全”が、

 固定されない。


 ***


 リュカが視る。


 記録しない。


 判断しない。


 ***


 ただ、見る。


 ***


 観測が、補正されない。


 ***


 カイラが動く。


 最適化しない。


 ***


 ただ、選ばない。


 ***


 それが。


 補正の外に出る。


 ***


 ノウンが言う。


「未確定状態、維持成功」


 ***


 ピコが、中央で跳ねる。


 ぽよ。


 ***


 未来の上で。


 ***


 結果を踏み潰す。


 ***


 アストラエルの環が、

 大きく乱れる。


 ***


「……是正率、低下」


 一拍。


「九十六・三パーセント」


 ***


 初めて。


 明確に。


 下がる。


 ***


 ヴァルが、笑う。


「いいな」


 一拍。


「壊し方を覚えた」


 ***


 アストラエルの声が、

 わずかに変わる。


 ***


「……脅威認定」


 ***


 空気が、変わる。


 ***


 処理対象ではない。


 ***


 “敵”。


 ***


 戦いは。


 次の段階へ進む。


 環の回転が、変わる。


 速さでも精度でもない。

 “意味”が変わる。


 今までは是正、処理、排除。


 だが今は――対処。


「……脅威認定」


 アストラエルの声が落ちる。

 わずかに、ほんのわずかに遅れて。


「対象:未確定干渉群」

「分類更新」


 空間が静まる。


 光は消えない。

 だが押し付けてこない。


 ミリアが息を吐く。


「……なんだよ。止まったか?」


 エルドが首を振る。


「違う。構えてる」


 エルフィナの指先が震える。


「……来ます」


 リュカの視界が、初めて動く。

 固定されていた数値が揺らぐ。


「……更新してる」


 カイラが低く言う。


「……学習した」


 ノウンが告げる。


「戦闘モード、変化。処理型から対抗型へ移行」


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


「……かわった」


 レインは息を整える。


 ここからが本番だ。


 アストラエルの環が、ゆっくりと位置を変える。


 三つの円が重なる。


 完全ではない。だが、完全に近い。


「是正工程、再定義」

「――概念固定」


 その瞬間、空気が変わる。


 圧でも重さでもない。


 “意味”が固定される。


 ミリアの剣が重くなる。


 攻撃。斬る。当てる。倒す。

 その意味が強制される。


「……動きにくい」


 エルドの盾も同じだ。

 守る、防ぐ、耐える。


「……役割が戻ってるな」


 エルフィナの繋ぎも固定される。

 回復、補助、支援。


「……自由が減ってます」


 リュカの視界。

 観測、記録、判断。


「……また戻されたな」


 カイラの思考。

 最適化、演算、決定。


「……やりにくい」


 ノウンが告げる。


「全員、役割再固定。未確定、圧縮中」


 ピコだけが変わらない。


 ぽよ、と跳ねる。


 意味を持たない。

 定義されない。


 アストラエルの視線が一瞬だけ動く。

 だがやはり処理しない。


 レインは動く。


 足が重い。


 動きが定義される。


 だが――止める。


 意味を持たない動き。


 踏み出すが進まない。

 進まないが戻らない。


 その状態。


 未確定。


 アストラエルの環が強く揺れる。


「……定義不能領域」


 その言葉に、ヴァルが笑う。


「出てきたな。そこだ」


 アストラエルが告げる。


「警告」


 一拍、わずかな遅れ。


「……記録外」


 その瞬間、空間が揺れる。


 レインは息を吐く。


「まだだ。まだ、決まってない」


 ミリアが笑う。


「いいね。それでいこうぜ」


 エルドが頷く。


 エルフィナが繋ぎを維持する。


 リュカが観測を緩める。


 カイラが思考を止める。


 ノウンが告げる。


「未確定状態、維持」


 ピコが、ぽよ、と跳ねる。


「……まだ、あそべる」


 アストラエルの環が再び回転を上げる。


 だが完全ではない。


「是正率、再計算」

「九十五・九パーセント」


 さらに下がる。


 ヴァルが静かに言う。


「いいな。壊れてきた」


 空の奥で、何かがわずかに気づき始める。


 アストラエルが最後に告げる。


「……この誤差は、許容範囲を超過」


 戦いは、さらに深くなる。


 そして――


 この“誤差”を最初に作った存在がいることを、まだ誰も知らない。

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