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雑魚モンスターしかコピーできないハズレスキルとして追放された俺、 魔導書を読んだら“世界の前提”が見えるようになった  作者: Y.K
第59章 未確定の王たち

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概念是正

 環が、重なる。


 三つ。


 完全ではない。


 だが――ほぼ完全。


 その状態で、アストラエルは動かない。


 動く必要がない。


 すでに“前提”を握っている。


「是正工程、更新」


 声は静かだ。


 だが、世界が従う。


「――概念是正、開始」


 その瞬間。


 空気が変わる。


 重くなるわけではない。


 圧がかかるわけでもない。


 ただ――


 “意味が確定する”。


 ミリアの手にある剣。


 それが“攻撃”として固定される。


 斬るもの。


 壊すもの。


 前に出るもの。


 その全てが、逃げ場なく定義される。


「……っ」


 踏み出そうとする。


 だが足が止まる。


 違う。


 止められているのではない。


 “前に出る存在”として、固定されている。


 選べない。


 その形でしか動けない。


 エルドの盾も同じだ。


 守る。


 防ぐ。


 耐える。


 その役割が、絶対になる。


「……窮屈だな」


 低く呟く。


 だが、その位置から動けない。


 動けば“守らない存在”になる。


 それは許されない。


 エルフィナの繋ぎ。


 回復。


 補助。


 支援。


 その全てが“正しい形”に押し込められる。


「……これ……」


 指先が震える。


 強くもできない。


 弱くもできない。


 “適切”以外、存在できない。


 リュカの視界。


 観測。


 記録。


 分析。


 それ以外の選択肢が消える。


「……観るしかないのか」


 思考が狭まる。


 判断の幅が消える。


 カイラの頭の中。


 最適化。


 演算。


 決定。


 それが“強制”される。


「……最適しか選べない」


 一拍。


「最悪だな」


 ノウンが告げる。


「全員、概念固定下」


 一拍。


「逸脱、不可」


 ピコだけが、変わらない。


 ぽよ、と跳ねる。


 定義されない。


 意味を持たない。


 “存在しない”かのように。


 アストラエルの視線が、一瞬だけ動く。


 だが、やはり処理しない。


 対象外。


 例外。


 レインは、立っている。


 何もしていない。


 だが。


 それすら、意味を持ち始める。


 判断。


 選択。


 決定。


 “判断者”として固定される。


 視線が集まる。


 選べ、と。


 決めろ、と。


 空間が強制する。


「……」


 息が、重い。


 思考が狭まる。


 決めれば楽だ。


 正しいか、間違いか。


 進むか、止まるか。


 敵か、味方か。


 そのどれかを選べば――


 この圧は消える。


 だが。


 それは。


 終わりだ。


「……やらねぇよ」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 空間がきしむ。


「判断拒否、確認」


 アストラエルの声。


「是正対象、優先度上昇」


 光が強くなる。


 意味が、さらに固定される。


 ミリアは攻撃者。


 エルドは防御者。


 エルフィナは補助者。


 リュカは観測者。


 カイラは演算者。


 ノウンは報告者。


 レインは――判断者。


 その枠から、出られない。


 完全な役割。


 完全な構造。


 完全な正しさ。


「……これが」


 カイラが呟く。


「天界の“完成形”」


 誰も否定しない。


 完璧だ。


 だからこそ。


 逃げ場がない。


 ヴァルが、玉座の前で笑う。


「どうする」


 一拍。


「決めるか?」


 その声は軽い。


 だが。


 試している。


 レインは、目を閉じる。


 決めない。


 だが。


 このままでは。


 全員が“固定”される。


 未確定が、消える。


 そのとき。


 ぽよ、と音がする。


 ピコが、レインの隣に来る。


「……ねえ」


 一拍。


「それ、きめるの?」


 レインは、目を開ける。


 ピコを見る。


 何も定義されていない存在。


 意味を持たない。


 だから。


 縛られない。


「……いや」


 一拍。


「決めない」


 ピコが、こくりと頷く。


「……じゃあ」


 一拍。


「そのままでいい」


 その言葉で。


 ほんの僅かに。


 空間が揺れる。


 アストラエルの環が、強く光る。


「概念固定、強化」


 意味が、さらに圧を増す。


 逃げ場が消える。


 だが。


 完全には揃わない。


 わずかに。


 ほんのわずかに。


 ズレが残る。


 アストラエルが、告げる。


「……誤差、残存」


 一拍。


「是正率、再計算」


 数字はまだ出ない。


 処理が追いつかない。


 その“遅れ”。


 それが。


 未確定。


 戦いは、さらに一段深く沈む。


 圧は、さらに深くなる。


 重さではない。


 逃げ場のなさ。


 “定義の壁”。


 ミリアは、前に出る。


 出るしかない。


 攻撃者として固定されている。


 剣を振る。


 振らなければならない。


 その動きは正しい。


 完璧だ。


 だから――通じない。


「……っ!」


 軌道は正確。


 速度も十分。


 だが。


 “攻撃である限り”、結果が固定される。


 当たらない。


 最初から。


 当たらない攻撃として成立している。


 エルドが動く。


 盾を構える。


 防御者として。


 最適な位置に立つ。


 守る。


 防ぐ。


 耐える。


 すべてが正しい。


 だから――崩される。


 “守る行為”として最適化された結果が、


 破られる形で確定する。


「……理不尽だな」


 だが、動けない。


 その役割から外れられない。


 エルフィナが繋ぐ。


 完璧な補助。


 完璧な回復。


 完璧な調整。


 そのすべてが、


 “補助として正しい結果”に収束する。


 つまり――


 足りない。


 足りない補助として成立する。


「……届かない」


 リュカが観る。


 すべてを。


 正確に。


 完璧に。


 観測者として。


 だが。


 観測結果はすでに“決定済み”。


 分析しても意味がない。


「……詰んでるな」


 カイラが動く。


 演算を回す。


 最適解を出す。


 だが。


 最適である限り、


 “最適が崩れる結果”が固定される。


「……どうしようもない」


 ノウンが告げる。


「全員、役割固定による結果収束」


 一拍。


「突破不能」


 その言葉に、誰も反論しない。


 ピコだけが、ぽよ、と跳ねる。


 変わらない。


 影響を受けない。


 その存在が、逆に浮く。


 レインは、立っている。


 判断者として。


 決めろと。


 選べと。


 空間が迫る。


 誰が正しいか。


 何が正しいか。


 どれを選ぶか。


 決めれば終わる。


 だが。


 決めた瞬間、


 全員が“固定される”。


 終わりだ。


「……くそ」


 ミリアが歯を食いしばる。


「これ、どうすんだよ……!」


 エルドは何も言わない。


 言葉が意味を持つ場ではない。


 エルフィナは繋ぎを維持する。


 崩さないために。


 リュカは観るしかない。


 カイラは止まる。


 ノウンは状況を告げる。


 全員が、役割の中に閉じ込められる。


 完全な構造。


 完全な支配。


 ヴァルが、静かに言う。


「いい形だ」


 一拍。


「完成に近い」


 その言葉は、皮肉ではない。


 本心だ。


 だからこそ。


 最悪だ。


 レインは、目を閉じる。


 考える。


 役割を外せない。


 行動を変えられない。


 結果は固定される。


 なら――


 どこを壊す。


 そのとき。


 ぽよ、と音がする。


 ピコが、近くに来る。


「……ねえ」


 一拍。


「みんな、やってること、おなじ」


 レインは、目を開ける。


 ピコを見る。


 同じ。


 役割。


 定義。


 行動。


 すべてが揃っている。


 だから固定される。


「……そっか」


 小さく呟く。


 同じだから。


 まとめて固定される。


 なら。


「バラす」


 一言。


 ミリアが振り返る。


「は?」


 レインは言う。


「役割ごとに動くな」


 一拍。


「全部、ズラせ」


 エルドが、わずかに目を細める。


「……混ぜるのか」


 エルフィナが、息を呑む。


「補助を、やめる……?」


 リュカが笑う。


「観測もしないか」


 カイラが頷く。


「演算、止める」


 ノウンが告げる。


「全員、役割逸脱行動へ移行」


 ミリアが笑う。


「いいね、それ」


 剣を構える。


 だが。


 攻撃しない。


 エルドが前に出る。


 だが守らない。


 エルフィナが繋ぐ。


 だが補助しない。


 リュカが見る。


 だが観測しない。


 カイラが動く。


 だが最適化しない。


 ノウンが口を閉じる。


 報告しない。


 その瞬間。


 空間が、大きく揺れる。


 概念が崩れる。


 定義が乱れる。


 アストラエルの環が、


 初めて、大きく乱れる。


「……誤差、急増」


 声に、明確な遅れ。


 レインは、静かに言う。


「俺たちは」


 一拍。


「そういう存在じゃない」


 その言葉で。


 概念が、ほんの僅かに崩れる。


 だが。


 完全ではない。


 まだ、足りない。


 アストラエルが、告げる。


「是正率、再計算」


 数字が出る。


「九十四・二パーセント」


 さらに下がる。


 だが。


 止まらない。


 環が、再び回転を上げる。


「概念是正、再強化」


 空間が、再び締め付ける。


 未確定は、押し潰される。


 まだ。


 届かない。


 戦いは、限界へ近づく。


 空間が、締まる。


 さっきまでの揺らぎが、

 押し潰されていく。


 崩れかけた概念が、

 再び形を取り戻す。


 より強く。


 より深く。


「概念是正、再強化」


 アストラエルの声。


 今度は遅れない。


 完全な同期。


 完全な確定。


 ミリアの剣が、

 再び“攻撃”として固定される。


 今度は、さっきより強い。


 逸脱を許さない。


 エルドの盾も、

 “防御”として閉じる。


 隙が消える。


 だが同時に、

 動きも消える。


 エルフィナの繋ぎが、

 完全な補助に収束する。


 だがその結果は、

 またしても“足りない”。


 リュカの視界が、

 再び固定される。


 観測しかできない。


 カイラの思考が、

 再び“最適”に押し込まれる。


 逃げ場がない。


 ノウンが告げる。


「再固定、完了」


 一拍。


「未確定、圧縮中」


 ピコだけが、変わらない。


 ぽよ、と跳ねる。


 意味を持たない。


 定義されない。


 それが、

 逆に異常として浮かび上がる。


 レインは、立っている。


 だが。


 今度は違う。


 重い。


 思考が狭まる。


 さっきの“ズレ”すら、

 通らなくなっている。


「……くそ」


 小さく呟く。


 バラした。


 ズラした。


 それでも。


 押し戻される。


 完全な構造。


 完全な是正。


 逃げ場がない。


 ヴァルが、静かに言う。


「そこまでだな」


 一拍。


「形に負けた」


 その言葉は、冷たい。


 だが正しい。


 ミリアが叫ぶ。


「まだだろ!」


 だが。


 動きが鈍い。


 役割に縛られている。


 エルドは何も言わない。


 耐えることしかできない。


 エルフィナは繋ぐ。


 だが意味がない。


 リュカは観る。


 だが変えられない。


 カイラは考える。


 だが出せない。


 ノウンが告げる。


「崩壊まで、残り時間――」


 言い切らない。


 必要がない。


 分かっている。


 詰み。


 そのとき。


 ぽよ、と音がする。


 ピコが、レインの前に出る。


「……ねえ」


 一拍。


「なんで、みんな“ある”の?」


 レインは、目を向ける。


「……ある?」


 ピコは、頷く。


「……それ」


 一拍。


「“きまってるから”でしょ?」


 その言葉で。


 レインの思考が、止まる。


 “ある”。


 存在。


 役割。


 意味。


 全部。


 決まっているから、存在している。


 なら。


 決まらなければ。


「……消える、か?」


 小さく呟く。


 ピコは首を振る。


「……ちがう」


 一拍。


「“きまってないまま、ある”」


 その言葉。


 意味は曖昧だ。


 だが。


 直感で分かる。


 それが。


 今の自分たちに足りないもの。


 レインは、ゆっくりと息を吐く。


 考えない。


 決めない。


 役割も持たない。


 結果も持たない。


 それでも。


 “ここにいる”。


 その状態。


 足元の感覚が、

 わずかに変わる。


 固定されていたはずの位置が、

 ほんの僅かに揺れる。


 アストラエルの環が、

 強く反応する。


「……存在揺らぎ、検出」


 初めて。


 明確な異常認識。


 レインは、動く。


 だが。


 動いていない。


 前に出ていない。


 だが。


 “そこにいる位置”が変わる。


 定義されない存在。


 アストラエルの処理が、

 一瞬止まる。


「……定義不能」


 一拍。


「……未登録領域」


 その遅れ。


 そのズレ。


 それが。


 致命的な“穴”。


 ミリアの剣が、

 わずかに自由を取り戻す。


 エルドの盾が、

 固定から外れる。


 エルフィナの繋ぎが、

 流れ始める。


 リュカの視界に、

 誤差が戻る。


 カイラの思考が、

 一瞬だけ自由になる。


 ノウンが告げる。


「未確定状態――拡張」


 ヴァルが、笑う。


「そこか」


 一拍。


「やっと触れたな」


 アストラエルの声が落ちる。


 初めて。


 はっきりとした遅れ。


「……是正不能領域、発生」


 空間が、大きく軋む。


 完全なはずの構造に、

 穴が空く。


 レインは、静かに言う。


「まだだ」


 一拍。


「まだ、決まってない」


 アストラエルの環が、

 大きく揺れる。


「是正率、再計算」


 一拍。


 数字が出る。


「九十一・八パーセント」


 大きく下がる。


 だが。


 まだ、終わらない。


 アストラエルが、告げる。


「……再定義、開始」


 その声に。


 わずかな“焦り”。


 戦いは。


 次の段階へ進む。


 ――存在そのものを巡る領域へ。

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