第3話 危険地帯に行くだけの簡単なお仕事
迂闊だった。
あたりには自分の血と仲間の血にまみれている。戦士は後悔していた。
もっと手ごろなダンジョンでコツコツ稼げばよかった。体中が痛い。
ゴブリンやコボルトを倒せたぐらいで浮かれてしまったんだ。リーダーを止めなかった自分にも責任がある。ごめんなさい、お母さん、一人ぼっちにさせて。
神官ちゃんも俺がいながら何もできなくてごめん。リーダーと魔術師さんは逃げれただろうか。そろそろ体が寒くなってきたな・・・多分身体真っ二つにされて走馬灯は人生最期として上々だろう。俺は眠るよ。
そうして戦士は息絶えた。
ギルドから馬車を走らせてから二時間、そこから歩いて一時間のところに最難関ダンジョン闇の月があった。
「この辺りは馬も長居したくないから歩かなきゃいけないのはつらいな。いっつもここは薄暗いし、瘴気も立ち込めているし。」
闇の月はゼノですら地下六階までしか降りることが出来ず、最深部は未踏の地である。警戒状態に入ったゼノは闇の月入り口前でお弁当を取り出した。蓋を開くと
コッペパンの切れ込みに焼いたソーセージをいれた最近の言葉でいうホットドッグとパンを二つに分け固めたひき肉を挟んだものこちらはハンバーガーというものが入っていた。
女将さんはもう六十なのに新しい料理にチャレンジする精神性がある。
ギルドの食堂で買った熱魔法つきのレンズ豆のスープ缶を温める。その間にホットドッグを口に入れる。小麦の香りと肉の脂が絶妙にマッチしている。パンには薄くマスタードが塗られており肉と辛味がおいしさを引き立てる。
次にハンバーガーに手を出す。こちらは肉がメインとなっており、冷めてはいるが肉にスパイスが効いてて脂っこさがない。
二つ食べ終わったらあったまったレンズ豆のスープだ。中は豆だけではなくキャベツや鶏肉が入っているトマトベースで口に含んだらコクがあっておいしい。ギルドのご飯はうまいので付け合わせに買っておいて正解だった。
腹ごしらえを終えたゼノは愛用の鍔のない包帯で巻かれた片刃の刀を持った。
闇の月に突入すると新鮮な血の匂いがしており、下には血の跡が道の先へと続いていた。後を追っていくと前方からゴブリン数体飛び出してきた。武器が短剣だということはこの階にはたまたま数が少ないのか槍や弓をつかってこないあたり楽だと感じてゴブリンに刃をふるう。闇の月のモンスターは特有の瘴気によってバフがかかっており、普通のゴブリンよりも数倍強くなっているのだ。倒したゴブリンの武器をよく見ると血のりがついている。しかも新しい。
ゼノはゴブリンがいた部屋に入る。あたりなようで中には戦士と神官の遺体が転がっていた。室内にいたゴブリン全部を殺した後、放置されてる二つの遺体を確認した。
神官の遺体は頭を矢で射殺されていた。傷口からして即死だったのだろう。衣服はぼろぼろに破かれており辱められた形跡がある。彼女の髪一房切り冒険者証を取った。
戦士の遺体は神官の遺体より凄惨なものだった。全身こん棒での殴打にナイフでの刺し傷、斧で何度も何度も胴を真っ二つにしようとした形跡がある。こちらも証を回収していく。
「残り二つか。近場にあるといいな。」
ゼノが部屋を出ると女性の叫び声が聞こえてきた。声からして少し距離がある。
辺りを警戒しながら進んでいくと二階へ繋がる階段のある広間へ着いた。
闇の月一階部分は直線の通路でできており、横に小部屋があるだけの簡単なつくりだ。広間へ入っていくとおぞましい光景が目に入った。
七~八匹ほどいるゴブリンが魔術師らしき女の子を輪姦していた。顔のみならず身体中打撲痕が見られ、目は虚ろに口からは何かを言っているようだが聞き取れない。
ゼノは刀を構え、刃に闇の力を纏わせ斬撃を飛ばした。闇の斬撃は軌道を変え犯しているゴブリンの首を豆腐のように斬った。全員肉塊になったことを確認して魔術師に声をかける。
「おいあんた。生きてるか?俺はゼノだ。ギルドからあんたらを助けて来いって言われているんだ。立てるか?」
魔術師はたくさん叫んだのか声がかすれて言葉がうまく出せなかった。ゼノは水筒の水を魔術師に分けてやる。潤いを取り戻した彼女はか細い声で話した。
「あ・・・ありがどうございまず・・・」
「しゃべれるようだな。リーダーがどこに行ったのか教えてほしい。」
そう言いながらカバンからポーションを取り出そうとしたときに魔術師は近くにあったゴブリンの武器の短剣を自分の陰部に刺したのだ。
「汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い」
何度も刺したせいか失血死してしまった。彼女からも髪の毛と証を取る。広場を見回したがリーダーらしき男はいない。ゼノはそのまま二階へ降りて行った。
二階は一階とは打って変わって部屋が多く通路も曲がりくねっており簡単な迷路のようなものとなっていた。ゼノは人間の気配が濃い部屋を見つけ出し、扉を開けた。
そこには椅子に括り付けられ拷問を受けている剣士の少年の姿があった。
周りにはゴブリン二~三体、それにコボルトが一体いる。コボルトの手には豪華な剣を持っている。おそらくあれが家宝だろう。ゼノは刀を構えてまずはコボルトの腕とついでといわんばかりに胴体を目にもとまらぬ速さで斬った。矢が飛んできたが手で掴む。斬撃を飛ばして一体倒す。残ったゴブリンが剣士を盾にし出した。
「やっぱりここでもゴブリンは頭悪いな。」
ゼノは闇を死角から這わせ、ゴブリンをケツの穴から串刺しにした。部屋のモンスターを殺し終えたゼノは剣士にかけられてた拘束を外す。剣士はコボルトが持っていた豪華な剣を慌てて掴んだ。
「み・・・みんなは・・・どこで・・・すか・・・助けて・・・ありがとう」
「君以外助からなかった。ごめんね。走れる?早くこのダンジョンから抜け出そう。」
怯えていながらも剣士の少年は素直に従った。家宝の剣を抱いて一人でぶつぶつ言っていたか歩けているし、まだ正気が残っていたので部屋に遭ったロープで猿轡を作り、自殺しないよう腕をきつく縛った。お荷物が増えたがまだ二階と一階だったので血の匂いを嗅ぎつけたゴブリンどもを一掃しながら闇の月を抜け出ることが出来た。
「まったく闇の月なんておまえらひよっこが行くもんじゃねえぞ。」
「でもお前だけでも生き残れたの運がいいな」
荷馬車の中猿轡をしている剣士にゼノは明るく話しかける。剣士は涙をぽろぽろこぼしながら家宝の剣を抱きかかえていた。
剣士をギルドと提携している病院へ入れ、ゼノはギルド本部へ向かった。
冒険者が死亡した場合、冒険者証と呼ばれる階級が刻まれた首飾りを回収する義務がある。ゼノは本部のアリアに三人の冒険者証と女性の髪の毛を手渡した。アリアは悲痛な表情でそれらを受け取り、レーナの指示に従って処理していった。
ギルドマスターから多額の金銭を受け取りギルドを後にした。
ゼノは疲れた体を癒すため街に出た。街は活気にあふれておりどこの店も人が多くあふれていた。そんな中、ゼノはある洋菓子店を見つける。店に入るとモダンな内装にチョコレートの甘い香りが広がっていて店内にはお茶が飲めるスペースがあった。
「ここのブラウニー一つ店内で。もう一つ持ち帰りでお願いします。」
店員はゼノの容貌に驚いていたがこの辺りは冒険者ギルドの近く変わり者も多い街なので特に気にすることはなく対応してくれた。
テラス席でゼノはブラウニーを口にする。しっとり濃厚なチョコの味に中に入ってるナッツ類がアクセントとなって甘さが口に広がる。そこに苦めのコーヒーと相まってクエストの疲れが取れていくように感じた。
宿に帰ったゼノは女将さんに土産のブラウニーをわたすと飛び上がるほどに喜んでくれた。その日の晩御飯いつもより多く感じた。
次の日ゼノはいつも通りギルドに行くと昨日の剣士の少年がいたのだ。気になってみてみると皿洗いのクエストを受けていた。受付嬢にも聞くとあの後家から勘当されてしまい無一文になってしまったのだという。ゼノはクエストを探しながら煙草に火をつけた。




