第4話 魔道具選びは慎重に
冒険者ギルドにはクエストだけではなくアイテム屋や医院、魔道具屋の広告が流れ込んでくる。売上のためでもあるがランクの高い冒険者にアイテムを売り込んでその性能を広告してくれる側面があるのだ。
商人は目ざといのか本部にいるゼノに商談が朝から何十件も舞い込んできた。いくらお金があるといっても乗り気に離れなかった。いつもは一つか二つぐらいの魔道具と刀でたいていの敵が死んでいっているので広告のために重装備になるのが逆に危なくなると感じているからだ。
「この短剣は水魔法の術式が組み込まれており、威力がロングソードと変わりません。サバイバルにも使えます。」
「この皮の鎧もきっとあなた様に似合いますよ。」
商人も必死なのだろう。なんせ相手が最高ランクの白金なのだからここで売り込みたいという意思がメラメラと目に炎が宿っている。
しかしゼノは自分の装備にそこまで興味がないのか書類を置き、
「来てもらって悪いが今は装備の強化とか武器の追加は考えていない。この性能なら俺よりも銀級あたりの連中に売り込んだ方がよいと思うんだがな。」
商人たちは目を合わせて小声で何らかの相談をしていた。
ゼノの装備はほかの冒険者と違って悪く言えば異常だった。本来冒険者の服装はせめて皮の鎧や鎖帷子、鎧をまとうのが普通だがゼノの装備は街へ女の子をナンパする若い男の服装だった。下には防御魔法が組み込まれたインナーが一枚来ているだけだった。
商人も頭がイカれているとしか思えない白金級のゼノに売り込んで来いという上からの圧力に押されてここに来たのだ。いくらギルド内暴力行為禁止とはいえ、白金級が相手してくれるなんて考えてればわかることだった。
「だがせっかく来てくれたのに手ぶらで返すというのは失礼だ。私からほかの冒険者たちにできるだけ紹介しよう。」
といってゼノはほかの冒険者パーティーに商談用の資料を見せながら歩き回った。
白金級の宣伝の効果は絶大なものであったらしく昇級を目指すパーティーに駆け出しのパーティー、白金級とコネを作りたい連中まで固まっている人たちに声をかけ続けた。
「仕事の邪魔をして済まない。君たちの商品を買いたいって人見つけてきた。販売文句すぐに出なくて君たちのすごさが分かった。私のことは機会があればこちらから来る。」
そうしてゼノはクエストを受けるためコルクボードの方へ行った。
今日の依頼は駆け出しの冒険者パーティーと合成獣キメラの討伐だった。
ゼノはキメラの攻撃をよけながら闇魔法と光魔法の斬撃と遠距離攻撃を放ちながらキメラを追い詰めていく。最初新人たちは手が出せずに見ていたがあるひとりがこのままだとダメと思い剣をもってキメラに挑んだ。
ゼノはその新人から何か異様な雰囲気を感じいったん下がった。新人は剣を構え、
キメラの胴に向かって突撃し剣を心臓に突き刺した。これで終わりかと思ったその時、新人がうなり声をあげてキメラの亡骸に何度も何度も剣を突き刺した。
「おい!《《使いすぎ》》だ!ゼノさん!俺たちコイツ引きはがすんで手伝ってください!」
ゼノは様子のおかしい新人剣士をよく見てると手首に妖しく光る鉄製の腕輪があった。どんなものかとみてみようとしたが新人が暴れるので仕方なく気絶させた。
そのあとゼノはほかのパーティーメンバーから事情を聴いた。
どうやら魔道具屋「花畑の祈り」から販売された腕輪が影響しているかもしれないのことだった。あの腕輪を付け始めてから身体能力が格段に上がったがそれに比例するにつれ性格が凶暴になっていたという。
例の剣士をパーティーメンバーに任せギルドに帰ると大きめの二~三日ほどの旅行用のカバンを持った上品そうな人間の女性が受付に立っておりゼノを見るや駆け寄ってきて
「あなたが『渡りの白金』ゼノさんですか?私『花畑の祈り』の者です。どうかお話だけでも聞いてください。」
本来ならば適当にあしらうのだが先ほどのことだ。ゼノはあえてその話に乗る。ギルドの酒場で「花畑の祈り」の社長が新人がつけていた腕輪と同じものをゼノの前に売り込んできたのだ。
「この魔道具は素晴らしいものです。使用者の力にさらなる加護を与え、強敵をも打ち破ることが出来るのです。ぜひゼノさんにもつけていただきたいですわ。そうでなくても他の冒険者たちにも広めてくださいまし。」
「試してはみる。ただしょうもないものだったら使わないぞ。」
「ありがとうございます!」
酒場だったこともあってか社長のもとに次々と冒険者が集まっていった。押し寄せてくる人波をよけてゼノはギルドを出た。
ギルドを出たゼノは路地裏へ足を踏み入れる。歩みを進めていると小さな工房が目に入った。
「緑の弓」ゼノが首都に来た時にいつも訪れているいわば行きつけの魔道具屋だ。
扉を開けると中には白髪のボブヘアの少女がボロボロの作業着を着ていてゼノを見た瞬間カウンターに身をかがめていた。
「久しぶり、またこっちに戻ってきた。少し見てもらいたいものがあってきたんだ。」
「お・・・お久しぶりです。み・・・見てもらいたいものって何でしょう?」
ゼノは彼女の前にあの腕輪を差し出す。
「これを解析してくれ。あとこれの修理を頼む。」
カバンから二つのブレスレットを取り出す。それぞれ赤い石と青い石がはめ込まれておりボロボロであった。
「いいですけど、そっちは買い換えてください。解析始めますんでそこに座っていてください。」
言われた通り待っていること三十分、彼女がゼノに話しかけてきた。
「あのっ・・・これが出回っているって本当ですか?早くしないと・・・」
「その反応だけで分かった。あとは誰が来ても『何も知りません』で何とかしろ。」
ゼノは金貨の入った小袋をドンと乗せ、工房を出た。取り残された少女は大きなため息をついて袋をもち店じまいを始めたのだ。
三日後ゼノは社長を連れ、クエストの野盗退治にいった。本来ならばクエストに民間人を連れていくことはないが、白金級のゼノということもあり許可がおりたのだ。
「わが社の製品を使ってくださるのですね!本当ありがとうございます!」
「野盗がでた。物陰に隠れてろ。」
ゼノは腕輪をするふりをして懐に隠し込み、野盗に向かって、光魔法の遠距離射撃を行った。自分の射線をよけながら逃げる野盗どもを切り伏せて行った。
野盗を生かしたままにして縛り上げた後物陰から社長を呼び寄せる。
「さすがですわ!どうでしたか?わが社の腕輪は最高でしたよね?」
ゼノは答えず野盗どもの指を全部切っていった。悲鳴を上げる野盗の喉に蹴りを入れ、叫び声をつぶしていく。ゼノの行動に社長は理解が追い付かなかった。
「あの・・・ゼノさん何をなさっているのですか?」
「腕輪の効果を見てみたいんだったな。」
と懐から腕輪を取り出す。それを見た社長が顔を真っ赤にして叫んだ。
「なによあなたつけていないじゃない!嘘はいたわね!」
するとゼノが呆れたように
「嘘ついたのはそっちだろ。禁止魔法が組み込まれた腕輪なんか売りやがって。」
とたんに顔を引き攣らせる社長。三日前「緑の弓」で腕輪を解析したら法律で禁止されていた禁止魔法の一種依存魔法の術式が出たのだ。
依存魔法とは持ち主に身体能力を高める代わりに高い依存症状を引き起こすもので症状に凶暴化や判断力低下などがある。いわゆる術漬けになり最終的に廃人と化す恐ろしい魔法なのだ。
「おい、無実を証明したいならお前がこれをつけてこいつらをぶっ殺せ。」
さらにゼノは野盗を切り刻み体中が傷だらけになった。
「あ・・・あの・・・これはあなたの・・・仕事じゃ・・・」
「身ぃ張って俺に商品実演してみろ。その腕輪が安全ならな。」
とうとう追い詰められた社長は逆切れをしてしまう。
「たかだか冒険者の下民風情が調子乗るんじゃねえ!そんな安い命を有効活用してやっているんだから感謝しろ!バケモンも余計な真似すんじゃねえ!」
ゼノは社長の首をつかみ静かに言った。
「死体が一つ追加されてえか」
そう脅すと社長も野盗も黙ってしまった。
その後「花畑の祈り」は禁止魔法を使ったとして社員のほとんどが逮捕されてしまった。ゼノは「緑の弓」へ赴いた。
「お嬢さん、防御特化のブレスレットと攻撃特化のブレスレット二つくれ」
奥から少女が赤い石と青い石が付いた二つのブレスレットを差し出した。
「いつも・・・ありがと・・・」
「お礼を言うのはこっちの方だいつもいい魔法道具を作ってくれて感謝しているよ。」
「また何かあったら言ってね。」
ゼノは金貨を十枚ほど出すとブレスレットをつけ、工房から出て行った。




