第24話 ゼノ臨時同盟を組む
あの光景が夢に蘇る。俺は施設で火事に遭って外に避難したと思ったらまさか異世界に入り込んできただなんて・・・
ヤマムラカズトは「銀の天秤」の自分の部屋で自分がこっちの世界に来た時のことを思い出していた。カズトには幼いころ事故で両親を亡くし親戚に頼れない中施設で育っていった。施設には気の合う友達もいればそりが合わない子もいた。そんな中でもカズトは周りの大人たちに支えられて育ってきた。カズトが十六の時施設に何者かが火を放った。外へ逃げようと光のある方向へ進んだらそこには火事の惨劇とは無縁の煌びやかな中世いや近世のヨーロッパの王宮に似た異空間に入り込んでしまったのだ。近くにいた神官らしき人がうれしそうな顔で
「王よ!ついに異世界からの勇士を召喚することができました!これで我が国の国力は安定しますぞ!」
カズトは目の前にいる人が王様だと気づくのに時間がかかってしまった。着の身着のまま異世界へ転移したカズトはこの国の騎士団団長のもとで暮らすこととなった。
この世界にはスキルというものが存在していて異能持ちがいることが当たり前にある。カズトは日本では何のスキルはないが転移した時の影響でスキルが発現したのだった。その代わり髪の一部が白くなってはしまったが。カズトには二つのスキルが発現した。一つは光を操るスキル、もう一つは氷を操るスキル、この国には稀に二つスキルを持つ者がいてカズトは大いにもてはやされた。
カズトは団長の娘であり「銀の天秤」副リーダーのシルヴィアとお目付け役の全身鎧のレードナと「銀の天秤」リーダーとして今日まで活躍してきた。
ある日、カズトがいつものように身支度をして書類をまとめ上げていた時下のフロアが何やら騒がしい。何事かと降りてみるとカズトにとって思いもよらない客人が来ていたのだ。
ゼノが来ていたのだ。
思いもよらない客人にカズトは戸惑っていた。既にシルヴィアとレードナが対応していたので椅子に座ってみた。
「あ・・・あの~ゼノさん?うちに何の用でしょうか・・・?」
「急にきて申し訳ない。カズトさん。」
「いえいえ!そんなことはありませんよ!ご用件は何でしょう!」
「単刀直入にいうと私と君たちで違法魔道具関連で臨時同盟を組みたくてここに来たのだ。」
ゼノからの同盟の誘いにカズトは心の中で情けない声を出しそうになった。
(えええええ!あのゼノさんが協力を求めてきたってこと!ダンジョンも一人でこなす人が?どうしよどうしよ・・・)
「わかりました!違法魔道具事件一緒に解決しましょう!!」
「亜人の俺に同盟まで組んでくれるとは噂通りカズトさんは優しい方だ。」
「亜人なんて関係ありません!(それよりもエルフとかドワーフとか獣人とかいろんな種族いるからわかんないだけだけど)ゼノさんはゼノさんですよ!」
カズトはゼノに手を差し伸べた。ゼノは少しためらいながらもその手を握り返した。
「同盟を組んだからにはお互いの利益となるようなことを心掛けてくれ。なにか目的があってきたのだろう。」
シルヴィアがゼノに少しばかり警戒の目を向ける。ゼノはその目線に慣れたように見つめ返した。
「ああ、実はだな・・・君たちに少しお願い事があってきたのだが聞いてもらえるだろうか・・・」
ゼノは「赤い蛇」で起きたことを話した。レミスという違法魔道具関連で全国に指名手配されていた男が学術院の息のかかったメンバーとパーティーを組み身柄を抑えようとしたところ一人逃してしまいバディの女の子を人質に取られ連れ去ろうとした時彼女を取り返すべく本気の姿で応戦してしまい彼女を怖がらせてしまったことを話した。
「本気の姿・・・あるんですかそんなの。」
カズトは感心したように言ってきた。ゼノが暗い顔をしたのでカズトは慌てて平静wを保った。
「強敵相手に短期決戦用の姿があってな・・・魔力の消耗が激しいからあまり使わないんだ。ここ最近すぐ倒れちゃう敵が多いから使う機会なんて彼女に見せることしなかったんだ・・・」
「で、そのレミスたちはどうなったんですか?」
「肉片にさせて死んじゃった。彼女の目の前で。」
一堂に沈黙した。先に声を上げたのはシルヴィアだった。彼女は呆れたような顔をして
「人を肉片にするだなんて冒険者でも引きますよ!もしかして私たちに同盟を組んだのは彼女をどうにかしてほしいのもあるのではないでしょうか?」
ゼノは目を逸らした。どうやら図星だったみたいだ。シルヴィアの雰囲気が悪くなる前にカズトは慌てて二人の機嫌を取ろうとした。
「お・・・起きたことは仕方がないと・・・思う。でも助けを求めてきたんだ同盟抜きに彼らを助けようじゃないか!ねっ!」
「彼女に心の傷を負わせたまま田舎に帰らせるのは自分でも許せないと思っている。だが俺一人ではどうしようもないのを知っているから君たちにならと助けを求めたんだ。」
「よし!レードナ、シルヴィア!ゼノさんも彼女に会いに行きましょう!」
カズトのこの重苦しい空気を破るような声で彼らはミキの元へ行くこととなった。
「銀の天秤」とミキのいる寮は少し離れているものの馬車を使うほどでもなかった。歩きながら作戦会議を練る。
「ミキちゃんが部屋から出てこないとなると引きずり出すのにどうするか?」
「私が本気出して彼女の前に君たちが戦って勝つという方法でもいいのかもしれない。」
「いやいやそれは俺たちの命が持ちませんよ。」
「君たちなら私たちを超えられる。信じているよ。」
そうこう言っている間にミキの住む学術院の寮にたどり着いた。事前に連絡を受けていたのか「銀の天秤」担当のフィリが出迎えてくれた。
「みなさん、おはようございます!今日はわざわざ来ていただきありがとうございます。他の人たちは所用で出払ってしまいました。」
「君がフィリか。私はゼノ。ミキの臨時バディを務めている者だ。私が言えたことではないが彼女の容体はどうだ?」
フィリは初めて見る亜人のゼノに圧倒されながらもカズトの傍に寄っていった。それを見たシルヴィアはどこかムスッとした顔をしたがレードナにこっそり諫められた。
「あの・・・あなたがゼノさんですか・・・ミキと何があったんですか?正直に答えてください。」
「君には少し刺激の強い話になるかもしれないが・・・」
ゼノは同じようにダンジョンのことを話した。想像以上の出来事にフィリは言葉を失っていた。すると突然シルヴィアが立ち上がりフィリを掴んでいった。
「私が引きずり出して見せますわ!さあ部屋に案内して頂戴!我々はゼノさんと同盟を組んだのですからこれぐらい許容しても問題ないですよね?」
シルヴィアがどんどん進んでいってミキの部屋の前に立つとドアを乱暴に叩いた。
「ミキさんいますよね!『銀の天秤』副リーダーのシルヴィアです。今日はあなたのバディと同盟を結びにきたのとあなたを連れ出すために来ました!入りますね!」
カズトとレードナが止めようとしたがシルヴィアがずけずけと入っていった。
シルヴィアが中に入るとベッドの上で髪はぼさぼさに乱れていて顔もどこかやつれているようなミキの姿があった。シルヴィアはミキの隣に座ると真っ直ぐ彼女を見つめて諭すような声で語り掛けた。
「ミキさん。あなたが受けたショックという物を私は知りえませんが冒険者は遅かれ早かれ経験します。ミキさん、ゼノさんは一度でもあなたに敵意を向けましたか?そうでなければこのままでいるのはそこで待っているゼノさんに不誠実です。言いたいことがあるならはっきり言ったらいいんです。もしものことがあれば我々『銀の天秤』が止めて見せます。」
カズトとレードナは顔を青くして抱き合った。白金級と戦って無事で済むわけがないと
(治癒魔法あってもゼノさんに勝てる算段ないのに~シルヴィアのバカ~)
ゼノはシルヴィアから引き継いで彼女の目の前に来て跪いた。
「ミキ。あの時は怖い思いをさせて本当にすまなかった。私のことを責め立てても構わない。降りる選択をしてもいい。ただ私はちゃんと君のことが心配で来たんだ。」
ミキが小さく口を開いた。
「ゼノさんのせいじゃありません。あの時逃げなかった私が悪いんです。ゴーレムを倒したゼノさんをみて私もなんだか強くなったような気がして浮かれていて甘えていたんです。あの時も私を助けるために必死になってくれたのを知っています。でも私は怖かったんです。あの後ゼノさんに会うのを恐れて引きこもっちゃてアリアさんたちに迷惑かけて・・・」
ミキの目には大粒の涙がこぼれた。シルヴィアは横からそっと抱きしめる。ゼノ達は彼女の嗚咽をただただ聞くことしかできなかった。
一通り泣いた後ミキはゼノの前に同じように膝をついて
「ゼノさん、心配かけてごめんなさい。まだ怖いと思うのが正直な気持ちですがゼノさんがこうやって誠意を見せてくれているのなら私ももう一回ゼノさんのバディでいてくれますか?」
「ああ、勿論だ。」
「なら着替えないと、それに・・・髪も整えないといけませんしね。」
また彼女の明るい顔をみたゼノはほっとした気持ちになっていた。と同時にゼノと戦わなくてほっとするシルヴィア除くカズトとレードナがいたのであった。




