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第25話 白金の潜入作戦

 ミキが復帰して翌日、ゼノはギルマスに同盟のことを伝えるのとギルマスから新たなクエストを受けるため本部を訪れた。

ミキが入るとアリアが仕事中にもかかわらず彼女の復帰を我が事のように喜んでくれた。

ゼノが一人で部屋に行っている間アリアは仕事の間を縫って待機しているミキの隣に座った。


「おかえり、アリアちゃん。調子はどう?ご飯食べれている?」


「その節はお世話になったのといろいろご迷惑をおかけしましたこと申し訳ありません・・・」


「元気ならよかった。じゃ私は仕事だから行くね!」


アリアが仕事に戻ってからミキは長らくゼノを待つことになった。酒場でただ座っているのも失礼な気がしてマスターに地酒を一杯と煎り豆を頼んだ。


一方ゼノとギルマスは室内のテーブルに置かれたギルドが押収した違法魔道具が並べられていた。


「君が『銀の天秤』と臨時同盟を組んでいたとは驚きだね。だが彼らを選んだのは実に幸運なことだ。今回の作戦に役に立つ。今回は絶(・)対(・)生け捕りだからね?」


「はい、わかっています。今回は彼らもいることですし俺がこの作戦を伝えていきます。」


ギルマスの頷いた顔を見てゼノは収納魔法の魔道具で押収品を全て収納した。


ゼノがミキの元に帰ってきたときには彼女は二杯目の地酒とサイコロステーキを頬張っていた。待たせたと思うがこんな時間の潰し方には初めて見るものがある。


「おう、待たせたな。ステーキ美味しいか?それ食べたら『銀の天秤』に行くぞ。」


「おいゼノ、お前も何か食べてけ。もうお昼の時間だぞ。彼女待たせたからお前の奢りな。」


ゼノはいつものメニューとしてジェノベーゼパスタと地酒一杯を頼んだ。出されたパスタを食べ酒を喉に流しいれる。腹ごしらえを終えた二人は「銀の天秤」の拠点に向かってギルドを出たのだった。


 「銀の天秤」は王国騎士団近くに構えており、一等地ともいえるような良い立地である。ゼノとミキは訪ねる前にお互いの身だしなみをチェックした。ミキはあれから残った三つ編みを切りショートヘアに変えたのだ。

「銀の天秤」に入った二人は人員の多さ団員の強さに感心しながら全身鎧のレードナに引き入れられて応接室兼団長室に足を踏み入れた。そこには昼時にも関わらず書類仕事をしているカズトの姿があった。


「ゼノさんお出迎えできなくて申し訳ない。なにか用があると聞きましたから・・・」


「ああ、“白金級”の仕事が来てな、特例としてお前らも参加していいってことになったんだ。」


場の空気が変わりカズトはレードナに外で鍛錬しているシルヴィアを連れてこさせるように命じた。


「ああ、これは極秘作戦扱いだから作戦知るのは精鋭のみでいいと思うぜ。他の連中には悟られないようにするんだな。」


 ゼノ、ミキ、カズト、シルヴィア、レードナの五人は団長室に集まった。ゼノは懐から紙を広げる。そこに書かれてあったのは学術院魔術開発部部長ナーグの仔細だった。


「こいつの身柄を確保して違法魔道具のことを訊き出す。騎士団と連携して行う。こいつは明日王都近郊の別荘で違法魔法パーティーを行うから俺が潜入して外にいるお前らに突撃して騎士団より先にこいつの身柄を捕まえることだ。」


「質問だ。この件に関しては騎士団に任せた方がいいのではないか?」


シルヴィアが普通の疑問を投げかける。ゼノはそれ来たかという顔をして


「ギルマス的にはうちの冒険者がやられているのにただ黙って指くわえてみるのは沽券にかかわるんだとさ。だからギルドが押収した違法魔道具を横(・)流(・)し(・)し(・)て(・)で(・)も(・)学術院に一泡吹かせたいわけだ。」


ゼノは収納用魔道具からざっと百枚にも及ぶ紐で綴られた紙束を机の上に乱暴に置いた。


「こいつは俺の情報屋が学術院で仕入れた今回の事件に関係する資料だ。構成員の家族まで記されている。後は証拠となる人物でも連れてくればギルド的にありがたいわけだ。」


四人はその情報屋からの資料に目を通した。学術院の見取り図や研究データ、違法魔道具の流通先まで細かく記されているのだ。ゼノはさらに続けて


「ギルドは今の学術院と全面的に戦争しようと考えている。今回の作戦は人質とその情報がギルトからの物であるという証拠に繋げたいからと学術院および法の女王に対しての宣戦布告になる。お前らは横流しされた違法魔道具の回収という名目で突撃とナーグを捕まえてほしいわけだ。」


カズトが声を荒くした。


「学術院と戦争だって?ギルドは被害者の立場になればいいだけなのにどうして喧嘩を吹っ掛けるような真似をするんだ?」


「あんたはここの世界に来てまだ二年だし冒険者ギルドについても知らないことが多いから教えてやる。ギルドは他の学術院とか王宮、騎士団に比べて政治的影響力が弱い。ギルドの性質もそうだが舐められたらやり返すのがギルドのやり方だ。ここで成果を上げて対抗アピールでもしたいんだろうよ。とにかくお前のいた世界での常識が少し違うのは理解してくれ。」


「わかった・・・でも潜入は誰がやるんだ?」


ゼノは自分に指を向ける。それを見た四人は目を丸くして声を出さないように器用に驚いた。


「俺が潜入するのがそんなに驚くことなのか・・・?ミキを危ない目には合わせられないし・・・これ俺の仕事だし・・・とりあえず明日までに人員集めておいでよ。捕縛魔法とロープも忘れずにね。」


ゼノは「準備があるから」といって部屋から出てしまった。四人は膨大な資料を読み込むことしか今はできなかった。


翌日ミキは一人で「銀の天秤」に向かっていた。ゼノを迎えに行こうとしたが女将さんから既に出かけてしまっているとの知らせを受けたのだ。


「おや~ミキちゃんではありませんか?遺跡以来ですねお久しぶりです。」


後ろから聞き覚えのある声がして振り返ると仮面をかぶった情報屋のミレーが立っていた。


「ミレーさん!お・・・お久しぶりです。」


「ゼノとの臨時バディだなんてやっぱりすごいじゃないですか相棒さんが嫉妬しちゃいそう~しないと思うけど。」


ミキはミレーにゼノについて考えていたことを口に出す。


「ミレーさん、私・・・ゼノさんのこと何も知らなくてその・・・お願いできますか?」


飄々とした態度から一変してミレーは真剣な表情になった。


「ミキさん、あいつのこと知りたいんだったら地獄見ることになるよ。それにあいつのことは金積んでもあなたには教えない。」


ミレーはつけていた仮面を取り外した。その顔は頭が黒の球体にピンクや黄緑、水色などの線が入った亜人だったのだ。ミレーは自身に風魔法を発生させてどこかに消えていった。


ミキが「銀の天秤」に着いた時既に団員たちは出撃の準備をしているように見えた。団員に通され団長室に入ったミキはカズトと合流した。


「おはようございます!あれ・・・ゼノさんがいない・・・もう潜入しに行ったんですか?」


「君に連絡付けないということは・・・あいつ勝手に始めたな・・・こんなのもよこしてくるだなんて。」


シルヴィアが机の上にある超小型魔道具を指さした。それは特殊な形をしており、カズトがいうにはイヤホンという形に似ているらしい。


「これをつけて情報を待てということなのか・・・」


カズトは躊躇いもなく耳に着ける。すると魔道具が小さく光りゼノの声が流れた。


『カズトくんか。聞こえているかゼノだ。私はこれからバーテンダーに変装して内部の様子を探る。パーティー開始は夕方近くになるからそれまで昨日の資料を読んで待っていろ。』


そこで音声は途切れてしまった。詳しく見てみると聞くことはできてもこちら側から話すことはできないつくりになっているらしい。


「私は何をしたらいいんでしょうか・・・」


そう思っていた時再び魔道具が光った。


『言い忘れていたがミキ。お前は俺から出す情報を逐一カズトさんたちに伝えろ。頃合いになったら俺が合図を送るから団員たちを好きに突撃させろよ。それじゃ』


ミキは突然「銀の天秤」の指揮権を得てしまって


(やっぱりこの人わからない・・・!)


と心の中で嘆いてしまったのだった。

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