第21話 彼を追いかけて
ゼノとミキは東部の町デール行の馬車を待っていた。深夜なので来るのに時間がかかるのでミキはゼノに問いかけた。
「ゼノさんはいつから冒険者やっているんですか?」
「結構前、時間とか気にしてないから正確なのは忘れた。」
「ゼノさんはパーティーをなぜ組まないんですか?二人でも行けるところが大きく広がりますよ。」
「人間にはいい思い出もあるがそれを超えるような嫌な思い出があるから組みたくないんだ。連れていきたい奴ならいるけどな。」
「ゼノさんが連れていきたいというほどの人物気になります。きっとすごい才能のある方なんでしょうね。」
アンデッドのような冒険者が徘徊する街中でミキとゼノとのたわいもない会話が続いた。ミキには冒険者の兄がいたが数年前ダンジョンで片腕をなくして以来ずっとふさぎ込んでいたこと。そこに学術院が魔道具で義手を作るプロジェクトに被験者として兄が選ばれた。時々動かなくなることを除けば日常生活に支障がないぐらいまで兄が持ち直したことがきっかけで学術院に入ったそうだ。
「だから今でも信じられないんです・・・学術院がこんな事をするだなんて・・・確かに人体実験と言われればそうとも言える実験をやってきましたけどそれは志願者ありきで決して強制的にさせることは今までなかったです。」
「自分の所属しているところがまさか真っ黒なことをしているだなんて信じたくもねえよなだがこういう騒ぎが起きた以上向こうは責任取ってもらわねえと。」
「冒険者ギルドはそういう風なところなくていいですね・・・」
ゼノは下を向いたまま黙ってしまった。沈黙のうちにダンジョン近く行きの馬車が到着したのだ。
馬車の中には誰もおらずゼノは月あかりを頼りにマップを確認した。ミキも横からマップを覗いて確認する。すると御者のおじさんがゼノ達に話しかけてきた。
「あんたらも冒険者かい?一便前にほかの冒険者パーティーが「赤い蛇」にいくってここに乗り込んだんだ。こんなご時世なのに冒険だなんて心臓に毛生えているかと思うね。」
ゼノは御者に手元を光で照らしながらレミスの似顔絵を見せた。御者はびっくりしたような顔で
「そうそうこの兄ちゃんだったよ。あんたの知り合いかい?なら一緒に行けばよかったのに。」
荷台に戻ったゼノは刀に手をやった。まさか指名手配犯が堂々と乗り込んでくるとは思いもしなかったのだろう。それに彼は学術院と深いつながりがあるかもしれない。
「ミキ、お前は極彩色の感覚についてどう思う?」
突然の質問にミキは戸惑いながらも応える。
「私は違法魔法による幻覚作用の一種と考えます。」
またしても御者のおっちゃんが口を挟んできた。
「さっきのあんたが見せた兄ちゃんは『人類が進化する必要な能力』だって言ってたぜ」
「人類の進化・・・?」
ゼノが思案しているうちにダンジョン付近に着いた。ゼノは御者に金貨三枚を渡した。
「こんな大金貰っていいのかい?この様子じゃ商売あがったりだからうれしいけどよお・・・」
「情報提供料だどうか受け取ってくれ。」
二人はダンジョンの奥へと入っていった。ミキは手持ちランプに火をつけゼノと横に並んで進んでいった。まだ入り口付近ということもあってか魔物は少なくどんどん進んでいった。
歩く二人をじっと垣間見る陰があった。ゴブリンとコボルトの群れだった。一人は魔人と人間の混血、もう一人はおいしそうな女のまだ子供といえる体つきの持ち主特に女の子は美味でゴブリンやコボルトの間では絶品ともいえるのだ。二人が指定のポイントに着く前にゴブリンのリーダーとコボルトのリーダーがなにやら言い争っていた。
「オイアノガキハオレレガクウ!」
「ハア?ナニイッテンダオマエ?オレタチガクウニキマッテイルンダロ!」
「オレタチゴブリンハカシコイカラサッキノレンチュウハクワナカッタンダ!」
「ソレハオマエラノキメタコトダロ?アンナキミノワルイノオマエラガクウベキダッタンダ!」
双方が言い争っているうちに二人が通り過ぎようとしたらコボルト、ゴブリンが一斉に襲い掛かってきたがさっきの会話が聞こえていたのかゼノは両方の大半を光の剣を下からだし串刺しにした。
残されたのはゴブリン一匹とコボルト一匹だった。勿論刺し損ねたのではない、情報を引き出すために生かしたのだ。
「おいお前ら俺たちが来る前に別の人間どもが来ただろ。どこの方へ行った?」
「ム・・・ムコウヘイッタ・・・」
「ダカラ・・・イノチダケハ・・・ア・・・アトオンナモイタ」
「そうか情報ありがとうミキこれから俺がいいというまで振り返るんじゃないぞ。」
ゼノ達は二匹を後にして先に進んだ。その瞬間に二匹はミキに襲い掛かろうとしたがどこからともなく光の刃が二体を貫いた。
さらに先に進むと少しひらけた場所にたどり着いた。ミキはリュックから解析道具を出し魔力を込めた。
「赤い蛇」が近年まで踏破されなかったのは罠の多さである。単純な罠から魔法が複雑化した罠まで多種多様であるため、冒険者の行く手を阻んできた。ここが踏破できたのもギルドが何年も冒険者を派遣して一つずつ犠牲を払いながら罠を解除してきたわけだ。
「どうだミキ。魔法罠の数と位置は?」
「うんとね、ここには魔法の罠は一つもないね。」
「もしかして物理の罠があるのかもしれん。慎重に行くぞ。」
ミキはゼノに引っ付きながら歩いていくと上から網らしきものが降ってきてミキは抱き着いたがゼノは彼女を前面に抱きなおして腰のあたりから闇の太い触手を生やし網をひっかけて壁に叩きつけた。
そのまましっぽのような触手で地面を叩くと落とし穴が露呈した。ミキが覗き込もうとした瞬間鉄の歯の生えた魚型自動人形が底から襲い掛かってきた。ゼノは魚をつまんだまま覗き込むと下には無数の血がついて錆びた剣が天を向いていた。
「網からの落とし穴、さらに落とし穴に落ちた仲間を救おうとする心理を利用して魚の罠か・・・考えたものだな。」
「ここだけでも寿命が縮まりそうです。」
「今度ここソロで行ってみようかな。」
「正気ですか・・・」
次は狭そうな通路だった。先ほどの洗礼を受けた彼女は通路にも解析魔法をかけた。今度こそ魔法の罠を探知できた。ここは歩いたものを氷の矢で攻撃し足元を氷漬けにして鋼の刃で命を落とすという罠だ。
ミキは足元にある氷魔法の解析をした。幸い単純化していたので術式解除は比較的速く終わった。高速で飛んでくる鋼の矢もゼノは避け、ミキは魔眼を駆使しながら避けた。階段を慎重に下っていくと大広間が見えた。こんな地下にデカい部屋があるだなんてと感心していたがそこには先客がいた。
大広間には大きさが役四、五メートルほどのあるゴーレムがあたりをうろついていた。
「ミキ、俺があのゴーレムたちを引きつけるからお前はこの場所の解析を急いでくれ。」
「えっ・・・でも・・・」
「このゴーレムおそらく学術院の奴らが足止めに使ったものかもしれない。情報にはゴーレムがいるという証言がなかったからな杞憂であってくれよっ」
ゼノは二体のゴーレムに目がけて突撃した。ゴーレムは拳に魔方陣を展開させ目にもとまらぬ速さでゼノを殴り飛ばそうとしたがすんでのところで刀と全身を使って避けたがその先にゴーレムが手のひらから魔方陣を展開して巨大な雷を発生させた。それも光魔法を纏った剣で流し、地面に着地したその時だった。ゼノの足元が光り消えたと思ったら突然ゴーレムの前に飛び出していたのだ。急いで防御するがゴーレムの拳がゼノに当たった。もう一体のゴーレムが追撃しようとしたがゼノはそれを避けようとしたがまた魔方陣の光が出て転送されてしまった。
「ミキ!早くしろ!この魔方陣は法則性があるのか?」
「これはランダムで発動するので解析が間に合いません!場所だけはお伝えします!」
「そうならこれを利用するまでだ!」
ゼノはゴーレムたちに対してほぼ棒立ちに近い構えをした。ゴーレムの拳が近づいたと思ったらいきなり消えたと思ったらゼノはゴーレムの腕の上を駆けていって一直線に首を狙って刀を当てた。首に防御魔法がかけられているが光で剣を加速してゴーレムを一閃した。残りのゴーレムが魔方陣を展開し雷を出した。ゼノは光を纏った刀でその雷に突撃した。当たる寸前ゼノは《《刀で雷の上に乗る》》という曲芸でゴーレムに近づき心臓を光の刃で突き刺した。
「終わったと思うがゴーレムの解析を頼む。とどめは刺しておきたいからな。信じられないという目でミキはゴーレムを解析していく。ゴーレムはコアによって動く自立人形であるため停止させるにはコアを破壊しなければならない。解析でコアが心臓位置にあるとわかったら首を斬ったゴーレムの胴体を縦に真っ二つに斬った。
「ミキ。怪我はないか?解析で疲れただろうからここで休もう。」
ミキは持ってきたパンを口にしながらあっという間に巨大ゴーレムを倒したゼノをどこか誇らしく見えてきたのであった。
アレが見えるまで。




