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『双星のヴァルキュリア 外伝』 シリーズ  作者: タカジン
双星のヴァルキュリア 外伝 第九話
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9/13

『双星のヴァルキュリア 外伝 戦乙女と神殺しの剣』後編

プロローグ


「我は、哀しみを選定する者

戦乙女……ヴァルキュリアなのだ」


その言葉はダンへの言葉なのか

ミストが自分へ言い聞かすための言葉なのか

それはわからない。


ただ静かに魂は消えていくのだった

本文


ミストへ記憶と想いが流れ込む。

二人の故郷の村だろうか……ダンとフィーナは家が近所だった。


フィーナは美しく、周りを明るくする存在だった。

ダンは少しドジで、放っておけないところがあり

正直な若者だった。


「ダン、もういいわ。きっと見つからない」


フィーナはイヤリングの片方を畑に落としてしまったのだ。


「お婆ちゃんの形見なんだろ?だめだよ」

「うわっ!」


ベチョ!

足を泥に取られて転んでしまった。


「ダン……ありがとう。これ以上探したら

どぶネズミになっちゃうわ。

暗くなる前に帰りましょ」


「……わかったよ」


自分のために泥だらけになってさがしてくれた。

フィーナはその姿を見て、とても嬉しかった。


「フィーナ、これを見て」


次の日、ダンの手にはイヤリングが光っていた。


「ダン……どうやって?」

「昨日は一緒に帰ったはずなのに」


フィーナは驚きを隠せない。


「それは秘密だよ」


ダンは少し得意そうに笑った。

フィーナと別れてから、ダンはもう一度探しに行ったのだ。


「おーい、フィーナはいるのか?」


村長の息子のロバートが突然割り込んできた。


「話は聞いた。イヤリングなら俺が欲しい物買ってやるよ。

ほら綺麗だろ」


手の中にはダイヤのイヤリングが輝いていた。


「……ロバートごめんなさい。

イヤリングはダンが見つけてくれたの」


「なっ……フィーナ!

そんな古いイヤリングのどこがいいんだ?

俺の方が綺麗に決まってるだろ」


ロバートはダンを睨み付けた。


「ロバート……人の心はお金や物では縛れないわ」


フィーナはイヤリングを突き返した。


「フィーナ!後悔しても知らないぞ」


ロバートはそう言い捨てて帰って行った。


「フフフッ」

「ハハハッ」


二人は顔を見合わせて笑った。


「フィーナ、楽しい時も苦しい時もずっと一緒だよ」


フィーナは静かにうなずいた。


二人は神の前で永遠の愛を誓い、指輪を交換した。


「今……動いたかも」


小さな命が誕生した。


「俺に恥をかかせた奴らは許さないからな」


ロバートは二人を許せなかった。


「自分の物にできないのなら、壊してしまえばいいんだ」


口元が不気味に上がった。


村に噂が広がる。

フィーナが小枝から種火を起こしていた。

まるで手から火を出したかのように見えたのだ

……魔女だ。


その美しさで人を惑わす魔女だ。

邪教徒の疑いが突然かかったのだ。


ドン!ドン!ドン!


「フィーナを魔女扱いするなんて誤解です!

取り消して下さい」


ダンは村長の元へ行き、扉を叩いて必死に訴えた。


「目撃者がいるのだ。フィーナは魔女だ」


周りの村人は村長の決定に従うしかなかった。


「フィーナを魔女として、処刑する。

連れてきなさい」


処刑台の上にあげられた。

柵の周りには村人たちが集まり見届けに来ていた。


「フィーナよ、最後に言い残すことはないかな」


村長が声をかける。


「いいえ、何もありません」


首を横に振って答えた。


「夫、ダンよ。

妻のフィーナが魔女であるかどうかその目で確かめよ」

フィーナの首に縄がかけられた。


「……やめて」

「何で誰も助けてくれないんだ!

フィーナが魔女なわけないだろ!」


ダンと誰も目を合わせようとしない。

村長が手を上げて合図を送る。


「やめてくれ!」


ガチャン!


「やめろー!!」


死刑執行人として足場を落としたのは

ロバートだった。


「次の村長は俺なんだぞ。

俺の元に来なかったからだ。後悔するんだな」


ダンの叫び声だけがむなしく響いた。


「みんな……何で止めてくれない!」

「何だこれは!何で何も言わない!」

「わぁぁぁー!!」


フィーナはゆっくりと下ろされた。


村人たちに叫んで訴えた。

誰も目を会わそうとせず助けなど無かった。


「あぁぁ……フィーナ」


冷たい手だ……頬だ……力一杯抱き締めた。


「なぜ……神よ……神よ!」


胸の奥底でフツフツと沸き上がってくる。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!

地面がへこみ、拳から血がにじむ。


「私は祈った!何だこれは!」


「これが答えか!許さない!人も!神も!

全て壊れてしまえ!」


「くそぉぉぉ!!」


叫び声はこだまし、空へ消えていく。


ポツリ……ポツリ……

雨は拳の血を洗い流し、地面の水溜まりを赤く染め上げた。


「強い怒りと憎しみの血……旨いのぅ。

神など存在しないのだ」

「わかるぞ、憎かろう……苦しかろう」


心に直接重くて低い声が響いてきた。


「儂が願いを叶えよう。神殺しの剣を使うといい」


地面から短剣が浮かび上がった。


「俺は……許さない。全てを呪い、裁き続けてやる」


迷わず短剣を握りしめた。


「それでいい。お前がこれから悪を裁け。

神に代わってな」

「ふふふふふっ……」


声は消えてなくなった。


「フィーナ……俺はやって見せるよ」


ダンはフィーナの墓地に最後の祈りを捧げ

村長の家に向かった。


コンッ……コンッ……。


「ダンです。私が間違っていました。

ドアを開けていただけますか?村長」


ガチャ……


「あぁ……ダンか。悲しいだろうが

魔女に殺されなくてよかったな」


村長が扉を開けて出てきた。


「はい、許せません。……お前たちを」


ズン!ズン!ズン!


「うぅぅ……ダン。お前」


倒れた村長は震えていたが、すぐに動かなくなった。


「許さない……ロバート」


ダンを紫色のオーラが包み込んだ。


「ひいい!ダ……ダン。

すまない、俺は親父に言われただけなんだ!」


腰が抜けてロバートは動けなくなった。


「うわー!やめろー!がぁぁぁ」


ロバートの体が激しく震えていた。


ガシャン!


カーテンへ炎が燃え広がる。

炎を見つめるダンの横顔が赤く写し出した。


「はははっ……燃えるがいい」


ダンは家の中に飾ってあった白い仮面と

黒いフード付きマントを奪い出ていった。

この夜、村中に人の叫び声と

真っ赤な炎が村を包み込んでいった。


ピキ……ピキピキ……

何かが固まった……


ドクン!

「気持ちいいだろう?さぁ……もっと悪を裁け」


ダンのまとうオーラが黒くなった。


「さぁ、復讐の始まりだ……神よ」


村からダンの姿は消えた。

ミストは目を開いた。

哀しみの結晶からフィーナの姿が浮かび上がった。


「自由にしてやろう」


神の糸が四散した。

涙を溜めた瞳でダンを見つめた。


「うっ……だ……れだ」


「お願いダン!……もうやめて。

誰もあなたを責めたりはしないわ」


フィーナの涙がこぼれ落ちる。


「うがぁぁー!」


「苦しい、頭が……割れそうだ。」


手がフィーナへのびる。


「あなたは、人を憎んだり、傷つけるような人じゃない。

私達は三人で幸せになるんでしょ」


ダンはかき消すように首を降る。


「奴らを……お前を死刑にした奴らも

見ていただけの周りのみんなも許さない」


「全てを奪ったんだ!」


涙ながらに叫ぶ。


「私はもう……大丈夫だから……もういいの」


柔らかいフィーナの感覚……力が抜ける。


「守りたかったんだよフィーナ……この感覚」


フィーナがお腹にそっとダンの手を当てる。


ドックン!


お腹からダンへ命の鼓動が伝わる。


ピシッ!ピシッ!

仮面が崩れ落ちた。


ドックン!


「……すまない。誰も幸せにできなかった」


鼓動が全身に伝わる。

憎しみに包まれた心に亀裂が走る。


ドックン!


「……フィーナ」


ダンは心を取り戻した。


シュッ……


「……小娘が!儂等の邪魔をするでない!」


神殺しの剣がフィーナ目掛けて襲いかかった。


「……ぐはっ!!」

「守れた……やっと」


口から血があふれ出る。


「ダン!……しっかりして」


ダンはフィーナを力なく見つめる。


「今は……引くとしよう」


短剣が地面に抜け落ちた。


「ダンよ……神へ刃を向け、人の魂を冒涜した罪は重い」


ミストは掌をダンへ向ける。


「神よ……私は、あなたを……信じて……いた……のに。な……ぜ」


ダンの体が砂のように崩れていく。


「フィ……ナ」


片膝をついたミストは、ダンの魂を掌ですくい上げた。


「お前は……魂の消滅をもって償うのだ」


「ふぅぅ……」

目を閉じ、まるで口づけのような柔らかい吐息が

魂の灯火を吹き消した。


「我は哀しみを選定する者。

戦乙女……ヴァルキュリアなのだ」


言い聞かすようにその手をしばらく見つめ

ゆっくりと……握りしめた。


「人は形あるものにすがりたいと考える。

か弱いものだな」


そう呟くとミストは風にのり、姿を消した。


残されたのは白羽根と、月明かりに照らされた指輪が

静かに輝いていた。


これは……『哀』の物語だ。


『双星のヴァルキュリア 外伝 戦乙女と神殺しの剣』

後編 Fin

エピローグ


「神殺しの剣……一体誰が与えたのか」


神の存在を疎ましく思う存在がいるのだ。

それだけは確かだった。


「ルナ、気を付けた方がいい。

もし、哀しみから闇の者が生まているのだとしたら」

「ラグナロクの影響で人の世は乱れ

哀しみが溢れているからな」


ルナは短剣を見つめる。


「この剣を与えた者を探ってみる?」

「人の世を裏で操ろうとしているのかもしれない」


「いずれ我々と対峙する時が来るだろう」


かなり弱まっているが

ルナもこの短剣から発する憎しみのオーラに嫌悪感を抱いた。

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