【Episode N :Sealed Emotions Awaken as Shadows/封印された感情は、影となって目を覚ます】
<Chapter4> <79>
話は少し前に戻る。
私にようやく失った使命をを見つける所まで
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少年が部屋から出たので入れ替りで入室する。男は1人ソファーに座り、白衣の上着を脱ぎ捨ていた。私は男に声をかける
「少年は例の場所に向かわれたのですか?」
「そうだね…彼にはすまないとは思うけど、ここで“退場”してもらうしかないかな?」
私はため息混じりにテーブルのティーカップと脱ぎ捨てた白衣を回収する。
「“そのためだけ”にあの御方が下に降りて来られるってのも驚きです。それほどの者なのですかあの少年は?」
「仕方ないよ。定例会議後にあの方と話し合いで内密に処理するって決定したし。悪用されるのを考えたら、この方法が一番手っ取り早い。それにこの方法はユウキくんのためでのあるからね」
数時間も立たずに少年が帰ってくる。ただ、始めて来た時とは違い、向けられる眼差しは焦りと不安を感じる。それは当然のことで“彼はチカラを失った”。どのようにしてなのか、今後彼はどうなるのかは私は詳しくは聞かされていない。
だから私は“知らないふり”をしなくてはならない。
「おかえりなさい。奥の部屋にどうぞ」
彼は私の普通の対応に少し驚きながら胸を押さえている。たぶん状況によっては“カイトさん”と刺し違える覚悟なのだろう。けど、彼にできることは無くなったのだったいや、“出来なくなった”っていうのが正しい。
扉の前に立って止まり、少年は深呼吸をして扉を開ける。中からは気楽な声が聞こえてくる。カイトさんも敵意がないことを伝えたいのだろう。
「あ、おかえりなさい。その顔は疑心を持って帰って来たね。すまない。こうでもしないと、脅威が収まらないからね。まあ座りたまえ。今までの事と、これからの事を話そう」
その声が聞こえて扉が閉まる。中ではどんな話をしているかは私はわからない。
2時間ぐらいはたったのだろう。少年が複雑な顔をしながら出てきた。私にも浅いお辞儀をして会社を出ていく。居なくなったのを見送っていたら。部屋から私を呼ぶ声が
「西園寺さんちょっと来てもらえるかな?」
その声に呼ばれて部屋に入る。カイトさんは椅子に座り、私にも座るように促す。
「はい、何でしょう?」
「君にお願いしたいことがある。君に“ヴォルガ”を目指してほしい。それをコントロールするであろう、この“黒い結晶”を使って」
テーブルには赤い結晶と“赤い箱”に入った黒い結晶。目で2つの結晶を捉えたまま、顔を上げる事なく、疑問を口にする。
「それはカイトさんと“戦え”ってことですか?」
「そうだね。これを持つと言うことは、いずれはそうなるかも知れない。けど、それはそれで仕方のないことだと思うよ。けど、それを受け入れれば“君の果たせなかった願い”も叶うかもしれない」
「相変わらず、交渉が上手いですね。これでは断れないです」
「断るのも仕方のないけど…君の物語は進みだした。だから…」
「もちろん断るつもりはありませんが」
そう言って赤い結晶を握る。手が燃えるように熱く、意識が飛びそうになる。けど、これを受け入れないと…握る手を緩めずに持ち上げ首筋に押し当てる。熱風が吹き上げて身体が溶けるように熱くなる…こんなものに…負けて…られ…
意識が飛びそうになる瞬間に左手で赤い箱の黒い結晶を掴む。黒い結晶は熱風に反応するかのようにスライム状に溶けて、膨張して大きさが私を越える2メートルぐらいに膨れ上がる。
膨張が止まったと思ったら私の身体を覆い被せてきて飲み込む。身体は熱く溶けそうで、身体の回りはスライム状の“ナニか”で覆われて身動きが取れなくなる。ただ数分で視界が広がり、何事も無かったかのように“黒いナニか”が消える。
視界ももとに戻り確認をする。身体も異常無し、感覚も良好。あとは…
おもむろにジャケットとブラウスを脱ぎ捨て背中を部屋の鏡に向ける。鏡には少し痩せているが、無駄のない体つきで筋肉もほど良くあり、戦闘の経験があるような感じの身体。けどそこには、見慣れないものが
背中の中央には赤く輝くタトゥーがある。背中を覆うぐらいの大きさのが
服を脱いだことも、タトゥーの事もビックリすること無くカイトさんは
「やはり無事に適合できたね。君なら“呑まれない”とは思ってたよ」
「白々しいですね。別に心配もしてなかったでしょうに。まあ、これで私も彼らと共に進めますね」
恥ずかしがることもなく、脱ぎ捨てたブラウスとジャケットを取り着ていく、ブラウスのボタンを止めながら。
「カイトさんこの後どうしますか?流石にこれではヴォルガの前に立つことも出来なくなりますけど?」
「とりあえず、まずは“あの人”に会いましょうか。こんなに序盤で会えるとは思ってなかったので」
あの人?序盤?相変わらずカイトさんは、よくわからない事を言っている。まあ、この人は謎ばかりだけど…
「さて、“サイオンジさん”も支度してくださいね。“彼は”ビックリするでしょうね。楽しみです」
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2人で数十分かけて何の変哲もない廃ビル群の前にやってくる。会いに行くって言ってたので相手の家や職場等に押し掛けるのかと思ったが、ひとけない場所に来る。目的の人どころか、他の人とすれ違うことすら困難なのではと思い聞いてみる。
「流石にこんなところに誰か来るんですか?人通りは一切ないですよ?」
カイトさんはクスッとしながら
「ここで出会うのは“確定事項”だからね。時間も場所もそれほど重要ではない。君もその内わかるよ、“運命は全て決まっている”のだから。さて、サイオンジさんはここで待っててね。良いタイミングで呼ぶので」
私が物陰に隠れてカイトさんが角を曲がり、ビルの隙間に歩いていくと前に白髪に丸メガネをかけた男性が…。
そんなことがあり得るのか?ただでさえ人が寄り付かない廃ビルで人がすれ違うのがやっとな所に都合良く人が来るのか?しかもその人が目的の人なわけ…そんなことを考えていると、カイトさんが白髪の男性に向かって声をかける。
「なら、補充するのはどうでしょう?」
白髪の男は驚いて振り返る、やはり目的の人だったみたいだった。カイトさん続けて
「お久しぶりですね。“ここで”会うのは初めましてですが」
その後も2人で会話して旧知の仲であることが伺える。そこから数分で会話をしているが言ってることが理解できない。2人だけがわかる会話なのだろう。会話に一区切りがついたのだろう。私を手招きしている。姿を隠していたがカイトさんの近くまで行くと白髪の男性は目を見開いて驚いている。
「気がついたようですね。結城くんから回収した黒いのは彼女が…サイオンジ ナナミさんが取り込みました。」
言い方は私が自発的に取り込んだように聞こえるが、実際はそうではないけれど…たぶんこの白髪の男性は普段は冷静なのだろう。カイトさんの顔は誇らしそうにしている。まあ、私にはあまり興味のない事だけど
白髪の男性がカイトさんの要求を聞いた後、見返りは何かと聞き直すとカイトさんは飄々(ひょうひょう)と
「彼女を君の駒として使用してもいいですよ。彼女はカルマスの適合者でもあり、灰の巡礼者でもある。だから、得られる情報は多いのと“ヴェノリス”の元に向かう手引きは出きます。」
“駒”って…端的に伝えやすいとは言え、言い方があるでしょうに。まあ、そんな扱いは慣れているので苛立ちもないが白髪の男性は違うみたいで
「わかりました。サイオンジさんをこちらで“預かります”。そしてご存知であろう、こちらにあるカルマスを内包した武器の調整後、使いやすい兵器を作成します。後これを…」
そう言ってカイトさんの属性のカルマスを渡す。カイトさんは白々しく受けとるが、これも見込んであれを私に与えたのであろう。相変わらず、抜け目ない…
カイトさんは私を置いて颯爽と帰っていく。用は済んだのだろう、白髪の男性は終始こちらに気を使っているっぽく、話しかけるのも気まずそう
「こんな事になりましたが、よろしくお願いします。カイトから聞いているかもしれませんが、私は訳あって“サクラ”を名乗ってます。」
サクラと名乗った人は私に手をさしのべて挨拶をする。“形式上”フッと笑みを浮かべて握手をする。ただ、ハッキリ言っても良さそうなので私は
「はい、よろしくお願いします。慎重なカイトさんもそうですが、“サクラ”さんも無理はしなさそうですが、私の事は駒として扱って頂いて大丈夫です。無理難題でも命を削る事があっても私は任務を遂行します。この命が有る限り。」
それを聞いたサクラさんは難しそうな顔をして
「困りましたね…優秀すぎる部下を持つと上司は気合いをいけないですね。」
と言っても方向性を決めないといけないので私は確認する
「では、何からしましょうか?」




