【Episode Y:The Tuner Pulls the Trigger Silently/調律者は静かに引き金を引く】
物語が急展開してしまった…
<Chapter:3> <33>
雨が落ちる。地に伏した異形の怪物は引き金を引いた者を睨み付ける。今にも噛みつき喉笛を噛み千切りそうだがそんな力はなく視界がぼやけているのかよろめいている。銃口からは熱を冷ますかのように煙が上がる、まるで線香のように
「ようやく静かになったな…お前みたいなのがいるから悲しむ者が増え続ける。俺はお前の存在理由なんて知らないし知る気もない。ただ、お前と接しているのはこれ以上悲しませる人を増やしたくないだけだ。もし、俺の言葉がわかるなら大人しく消えてくれ」
「ギッギギ…ギルル」
地に伏した異形は獣のような声を上げて起き上がろうとする。
「マジかよ、もう諦めろよ。もうじき俺の呼んだ増援も来る。お前はもうじき死ぬ。“動物”みたいに未練があるみたいに起き上がるなよ。」
異形の者は起き上がり翼を広げて爪を向ける。それを見た男は下げていた銃口を怪物に向けて力を込める。キィンと拳銃に玉が込められて、光る。すると銃口の先から光の粒子が構成されてカタナのような刃が構成される。
お互いにエモノを相手に向けて間合いを取る。刹那、2人の相手の命を奪う殺気をのせた刃が交差し、強い方が相手を射貫く…
「マジかよ…あれだけの手負いでここまで出来るのか…ただの異形ではあり得ない」
貫かれた方は銃を持つ男の方だった。急所はそれているものの右脇腹を抉られていた。しかも、持っていた銃を奪われてしまった。
奪われた銃をみて託された人を思い出す。
“もう、奪われて嘆くだけではなく、奪わせない為に守る力をお前に貸すから、これでお前は人々を守れ”
それを思い出して血液が沸騰し、怒りがこみ上げる。
「お前たちはまだ俺から奪うのか!あれだけの命、私の大切な人を奪っといて、まだ奪い足らないのか!」
異形に言葉を向けても通じないのはわかっている。ただ、言わずにはいれなかったのだった。怪物に恐怖の感情が無いとしても、同じぐらいの手負いで今が好機と思ったのか、後ろに飛ぶ。
2メートルぐらい飛んだことに男は驚いたが傷が痛み、後を追うことを断念する。逃がすことになってもあの傷では長くはもたないだろうと考え、姿が遠く小さくなるまで見送ってから地面に寝そべる。
「この異形は噂以上の化物だな…あの傷でまだあんなに飛べるのかよ…こっちはもう限界だぜ。」
禁止区域なので道路の真ん中で寝そべっても注意されることはない。傷口を押さえながら冷静に考える。戦闘中は頭に血が上っていたが、精神的にも肉体的にも血が抜けてきたので冷静に考えられる。
「あの怪物の最後の顔、何か“自我を取り戻した”風で人ぽい感じだったな。いや、まさか…な」
すると灰色の軍服がゾロゾロと現れた。警戒しているようだったのでお腹を押さえてない左手をヒラヒラ動かし
「大丈夫ッス。異形には逃げられましたが、あの傷なら仕留めたのも同然ッスよ。ただ俺の大切な銃、取られちゃいました…」
それを聞いた灰色の軍服の先頭の者が落胆の表情で
「貴殿が無事であれば良かったが、そんなに苦戦するような相手だったのか?」
重傷の男は他の隊員が持ってきた担架に乗せて貰っているところだった。
担架の上から男は疑問に思ったことを聞く
「あの異形の怪物って一体何者何ッスかね…。アイツ出会ったときからちょっと他と違ったんッスよ」
話を聞いていた指揮官は「ほう?どんなことだ?」そう聞くと担架についていく、禁止区域のため車が入れないので警備をかねて動向する。
男は話し出す。今日出会った異形の怪物の事を…
~~ ~
駐在所で取り調べ後は数日、仮住まいのホテルで自分が手に入れた情報、集めてくれた情報を壁に張り出して見比べて情報をまとめていた。
「やっぱりか。各地域で不審な失踪事件の場合、“灰の巡礼者”の目撃と禁止区域が一定期間設置されてる。これは隠蔽なのか…」
「おいおい…物騒なことになってるな。誰かに聞かれたらどうするんだよ。無用心すぎるぞ」
声のする方を見たら猿渡さんがあきれた顔して紙袋を持って立っていた。
「いきなりビックリするじゃないですか!ともかくお疲れ様です。」
「ビックリするのもなにも、ベル押しても返答ないし、声は聞こえるからノブに手をかけたら鍵かかってないし、入口で声かけても全然聞こえてないからここまで来たんだよ。ほら、差し入れだ。」
「すいません。ちょっと集中し過ぎました…」
「カンザキお前、あの警備兵に連行されたって聞いたぞ。しかもさっきの話もヤバイ匂いがするな。一体、どーなってるんだ?」
2人はテーブルに座り、猿渡さんが持ってきたおにぎりを口に入れる。
「猿渡さん、灰の巡礼者は“何を守って”るんでしょう?監視塔もそうですけど、このシェルターでこんなにノアス関連の事件が起きてるのに公開されていないどころか、ここの住人は知らなさすぎる」
猿渡さんは飲み物を置いて腕を組ながら、メガネを上げる。
「失踪事件や崩壊事件の全てがその怪物と決まったわけではないが警備兵たちが何かを隠そうとしてるのは、お前の推測でわかったが確認のしようがない。ただ、これは“ブラックボックス”だ。お前は1度、目をつけられてる。もしこの先“真実”に近づいたら…」
猿渡さんは話の途中でメガネを取って目尻を押さえる。表現が正しいかはわからないが間違いなく機密事項の案件である。そんなことを“ただの一般人”が知っていいわけがない。
「自分は覚悟の上です。ただこれ以上は猿渡さんや会社の仲間に迷惑がかかる。だから手を引いてください。」
「わかった。カンザキお前も深追いはするなよ。」
「大丈夫です。俺はひなたの仇を取りたいだけであって、知識欲を満たしたいわけじゃないんで」
猿渡さんは少し肩を落として
「本来は敵討ちすら、させるべきではないのだがね」
猿渡さんが帰った後、片付けていたノートを開く。そこには極秘で入手した、監視塔の周辺の地図だった。
「すいません、猿渡さん。俺…もう引き返せない所にいるんです。」
その周辺の地図を持ってクローゼットを開けるとそこには灰の巡礼者の軍服が。しかし本物ではなくて精巧に作られたレプリカである。そのグレーの軍服をカバンに詰めて部屋を出る。
「知りたければ、知ってるやつから聞くのが一番だな」
ホテルを出て一旦寄り道。新都の家によって、赤く染まった玄関のフォトフレームから写真を取り出す。外は真っ赤だが中の写真は無事で結婚式の2人の写真が残っていた。
「ひなた…ごめんな。」
そう呟いて胸のポケットにし舞い込む。そして目的地に向かう。そこは“監視塔”。一般人は立ち入り禁止だが近くの駐在所まで行けばある程度の情報は入手出来るだろうと思う。
ただし、禁止区域に近づくと、“本物の”灰の巡礼者に捕らえられるので、手前のガス漏れ地域があり、そこはまだ禁止区域ではないのと、駐在所に隣接していることは数日前に入手した情報だった。
姿を隠しながら目的地に到着。ガス漏れと書かれているが、ガスが漏れているわけではなく、不自然な規制線が張られているだけで、デバイスは通常通り機能している。
デバイスが優秀過ぎるが故に、身体が入らなくても禁止区域にデバイスを入れるだけで機能が停止する。しかも5分の猶予があり、5分以内であれば灰の巡礼者に気付かれることもない。
もちろんこの情報を知るために何度、拘束されたか…
この精巧に作られたレプリカが仲間だと認識させてサーバールームまで入ることができる。もちろん禁止区域ではないので警報は鳴らない。すると後ろから声をかけられる。
「そこの新人、本部への報告頼みたいんだが」
「あ、え、はい。了解しました」
急に声かけられたのと、新人扱いされたので戸惑ってしまったが席に着く。声かけてきた男が肩に手を置く。
「着任早々にすまんなぁ。人手が足りないし、それに事務作業は苦手で。あ、名乗ってなかったな俺は霧島蒼だ。隊長とかじゃないんで気楽にしてくれたらいい。」
霧島と名乗った灰の巡礼者の幹部らしき人は自分の事を疑うこともなく、サーバーのアクセスの仕方を教えてくれる。
「君すごいなぁ。“カミサキ”君だっけ?優秀で羨ましいよ。俺は戦うしか脳がないからなぁ」
すると腰のホルスターをポンポンと叩く。
「霧島さんは“灰の巡礼者”は長いんですか?」
霧島はホルスターを握り悲しそうな顔をする。
「ああ、嫁さんを異形に奪われ殺されてから、復讐心で入ったからもう5年になるかな?色々あったよ。もう悲しむ人を増やすまいと思い戦ってたな。けど、バディを組んでたこれの前の持ち主もこの銃“ラストレイン”を残していってしまった。失うばかりの5年間だったよ」
そんな霧島の言葉に近親感を覚えた“カンザキ”は胸に手を当てて気持ちを吐露する。
「俺も奥さんと子供を失いました…遺体はまだ見つかってないので希望は捨ててないですが、俺を置いて消えるような人じゃなかったので…ノアスって何なんッスかね…」
“カミサキ”の思いもよらない告白に霧島はため息をつきながら肩を優しくポンポンと叩く。
「俺にもあの異形が何で、何が目的なのかもわからない。けど、俺もお前もこれ以上俺らみたいな悲しむ者を増やさないように俺らは頑張り続けるしかないんだ。お前チーム組んでるのか?まだなら一緒に行かないか?お前となら良いバディが組めそうだ。けど、俺を置いて先に行くなよ」
霧島はそう言って先程より強い力で肩を叩く。自分も悪い気はしなかった。もし霧島さんとこんな形で会ってなければお互いに協力できたのに…ユウマはそんなことを考えながら霧島の提案を受けるのであった。
霧島の案内で監視塔の麓に行く事になったが問題が1つデバイスだった。
「霧島さんすいません。急な配属と移動でデバイスが禁止区域の侵入不可のままなんです。どうしましょう?」
この問題を解決しないと、次のステップには進めない。それっぽい言い訳をしてどうするか確認する。
「そうなのか、じゃあIDもまだだったか。すまんすまん。デバイス制御の装置は隣の部屋にあるから持っていって、IDは俺と一緒に通れば大丈夫だから心配するな」
そう言って隣の部屋の金庫を開けると、カバーのような物がたくさんあり、1つを渡される。
「それをデバイスの上に被せたらいけるよ。構造はわからないけど、俺ら戦闘員は危険地域も行かないと行けないからそれの通行証なんだってよ。どんな仕組みかもわからねぇけど行けるようになるらしい」
願ってもいないチャンスだった。こんなに簡単に最短で目的地に安全に行けるようになるだなんて…これでここに長居の必要はないな。
「霧島さんすいません。ちょっと席はずします。また戻ったら続きお願いします。」
霧島は「おうよ」と言って自分を見送る。
自分は直ぐに駐在所を後に禁止区域に入る。カバーは付いているが通常通りに動いてて、5分その場で息を潜めていただ。他の“灰の巡礼者”に追跡されていないことがわかるとレプリカの制服を脱ぎ捨てて、監視塔内部に潜入を図る。
「よくわからないが、ラッキーだった。霧島さんには悪いことをしたけど、真相を知るために必要なことだ」
意を決して今の場所から監視塔の入口に向かう、東西南北4ヵ所の入口があり今回は西口から向かう。しかし…急に足が止まる。禁止区域のはずなのに一般人の女性がその場で立っていた。
威圧感がすごく足が動かない。黒のロングコートに黒いタートルネック、黒いスキニーにヒールブーツと黒ずくめだったが、コートの襟には金色のラインが入っていて目を引く。それよりもライトに照らされると金髪の髪が星のように輝く。自分の気配を感じて黒ずくめはこちらに向いて
「なんですか貴方は?一般人は入れないはずですが?“灰の”方々とは違いますね。何者ですか?」
その言葉に殺意が乗って身体が震える
「おや?“ノーヴァ”で“アスル”ですか?じゃあ、貴方には興味はありませんね」
聞いたことないワードを言ったと思ったら手であしらうように帰れと促す。その右手には“デバイスがない”。震える手を押さえながら
「あんたは興味無いかもだが、俺にはあるんで、悪いが詳しく聞かせてくれよ、あんた何者だ?“ノアス”を知っているか?」
“ノアス”、そう聞くと空気が変わる。ただでさえ禁止区域で張り詰めている空気が、今にも割れそうなぐらい張り詰める。動物の本能があれば逃げていたかもしれない。それくらい目の前の女性が怖くてたまらない。
ユウマはただこの女性が知っている事を聞いて、相手の話に合わせて、会話するだけで得られる情報だけで良かったが“好奇心は猫をも殺す”ということわざがあるぐらい。自分は目の前の女性は、前に会った、黒コートのように話が出来ると考えてしまった。それが身を滅ぼす事になるだなんて思いもしなかった。
気がついたときには震えていた手を押さえていた右手が“肩から消えていたのであった”すれ違った女性の手にはいつの間にか大剣があり、音もなく振り下ろしていたのだった。
あまりのスピードに痛みも感覚もわからずに切られたことが先にわかってしまう事になった。金髪の女性はため息混じりに
「少しは抵抗されるかと思いましたが、気にしすぎですね。ただ、私の邪魔になりそうなのでここで消しておきましょう」
大剣をふり、付着した血を払う。そのあと、自分に急激な痛みと、欠損部位からの大量の血液が…すると辺り一面自分の血で真っ赤になる。
コノ光景、ドコカデ見タ…
ドクンと心臓が弾けるように動く、出血も原因としてあるが目の前のアイツがもしかして…震える左手で胸ポケットの写真を出す。そして目の前の女性に見えるようにつき出す。
「おい、お前。この女を知ってるな?お前がひなたを…」
金髪の女性は写真を見ても顔色1つ変えずに
「ノーヴァでもない、“モナント”の事なんて覚えていません。そんな人、何処にでもいますよ」
その言葉で血液が沸騰するように感情が高まる。切られた痛みなど既に感じない。すると出血は止まり傷口がぬり絵のように黒く塗りつぶされてよくわからない事になっている。ただ、手の感覚はなく喪失したことだけがわかる。それを見たら自分より先に金髪の女性が驚いたように
「まさか、あなたも…その“黒”は…。彼女だけではなかったの…」
金髪の女性はさらに警戒したように振り下ろしていた大剣を肩に担ぎ、左手の手のひらをこちらに向けて構える。それに合わせてひなたの写真を胸ポケットに入れて自然と自分も構えをとる。
左手で拳を作り、無いが右腕の方も拳を腰の辺りで握るイメージをしていると毛糸を編むように黒い糸が切られた傷口から伸びて形を作る。
みるみる糸を縫うように、黒い糸が折り重なって1つの形になる。それはイメージした右腕が腰の辺りで出来上がる。驚くしかなかった、自分は出来上がった“黒い”右腕を上げて目の前で指を動かすと元々の自分の指のように動き違和感がなかった。それをみた金髪の女性は
「まさか、あの“黒”にそんなチカラが…これでは間違いなく脅威にしかならない。その領域は化物に匹敵する」
「よくわからないが、お前のような化物に化物とは言われたくないが、これで対等に戦える」
「対等とは聞き捨てならないですね。そのチカラはまだ貴方に馴染んでいない、年期の違いは埋めれないですよ。」
そう言うとうっすら顔が笑っている。あれ?この顔どこかで…?
「まさかあんた、失踪した俳優の“水城リゼ”か?」
その言葉に金髪の女性は動きを止める。
水城リゼとは幼年期から演劇をして、若くして劇団のトップの俳優となり看板を支えた。プライベートの彼女は愛想がお世辞にもあったとは言えないぐらいクールだったが、舞台に上がれば憑依してるのではないかと思うぐらい、別人になる。
時には少女、時には夫を失った未亡人。役の幅は広くてどの作品に出ても彼女の個性が光っていた。誰にでもなれる、誰にも真似できない俳優とスターの道を歩んでいた。
何故ここまで詳しいかと言うとユウマは1度、彼女のインタビュー記事を書いたことがある。その時の彼女は舞台上ではなかったので無気力だったが、彼女に「演技とは?」と聞いたら珍しく目に炎が宿り。
「私にとって演技とは生きる意味そのもので、演劇の中で生きていきたい。それ以外に興味はないの」
そんな事をインタビューで言ったのが初めてで、その時の雑誌は注目を浴びるきっかけになった。その後、トップスターとして活躍するだろうと誰もが思っていたそんな時、彼女は失踪したのだった。
主演の映画の公開の日、楽屋に手紙を残し失踪したのだった。その手紙は世間には伏せられていたが、記者のユウマは知ることができた。
【永遠に続く芝居ほど、退屈なものはない】
残された手紙の筆跡は間違いなく彼女の物だが今までの彼女の心情とは真逆だった。演劇の中で生きたいと言った彼女が永遠の芝居を断ると言うのは不可解だったが、本人が居ない以上、確認することは叶わなかった。
動きを止めた彼女は大剣を下ろし、ため息をつく
「まさか、あれからだいぶ経つのに覚えてる人がいるだなんて」
「君ほどのトップスターが何でこんなことをしている?君の演劇は誰もが認める唯一の存在だった。なのに何故!」
水城リゼは嘲笑をして、下ろした大剣を片手で軽々と構える。
「あなたにはわからないでしょうけど、私たちは限られた時間があるから美しいのよ。なのに…私は世界を嫌悪する。“あの男”もこんな世界も私は否定する。」
言ってることはめちゃくちゃだが、彼女は何かがあって表舞台から姿を消したんだと思った。ただ、そんな心配よりも優先すべきは、自身の安全。黒い右腕にチカラが籠る。
ーーー次ハ、躱ス。遅レナイ。ーーー
自身で早い動くイメージをする。すると目の前の水城リゼが姿を消す。だが見える。右手で水城リゼの大剣をいなすイメージ。
大剣が右腕に食い込む瞬間、手の甲から枝のように流れて翼が生える。その翼が大剣を下に流す。水城リゼは勢いと共に下に倒れる体勢になるが、左足で倒れるのを踏ん張って切り上げる動作に切り替える。先には自分の手のひらがあるので切り落とす様に切り上げる。しかし、そんな刹那の瞬間持ち上がってきた。刃を掴む為に手のひらを刃の方にする。
その瞬間イメージに合わせて手が変化して鳥のような爪で大剣を掴む。
時間としては数秒の出来事で、土煙が晴れると。水城リゼが自分を見上げるようにしていた。大剣は自分の爪がガッチリ止めていた。
「まさか、こんな事が出来るなんてね。」
先に口を開いたのは水城リゼだった。彼女との距離は近く、吐息を感じる距離。自分も皮肉を込めて
「確かに、自分でもビックリだよ」
水城リゼはチカラを抜き自身から大剣を離す。柄から手を離すと光の粒子になって大剣が消える。
「先ほどの写真の女性は貴女の大切な人?それだったら失礼を謝罪します。貴方の攻撃には悲しみを感じました。私と同じ、成し遂げる目的があるのですね。それなら、私たちは戦う必要はありません。」
水城リゼは深々と頭を下げる。顔を上げて
「貴方は何故と言った。私も同じ奪われたモノを取り戻すために戦っています。私は止まった時計。進みたくても、針が折れてしまってるのだから…」
続きを言おうとしたが、何かを感じて顔を上げる。
「マズいわ。ここはお互いに退きましょう。貴方とは改めて話がしたいわ。これを」
渡された紙には住所と番号が
「普段はここに出入りしてるので改めて話をしましょう。」
そう言って水城リゼは軽い跳躍でビルの5階に飛び移り姿を消す。
さて、これどうしょうかな…
右腕は黒く染まり、手の甲から体を包めるぐらいの羽。手は鷹のような鋭い爪を持っている。隠しきれる大きさ出はない。元に戻せるのか…
ーーー我ガ敵…。殲滅…。星ハ我ガ物ダーーー
心臓に大きな衝撃を受ける。内側から沸き上がる
“破壊衝動”
黒い腕が別の生き物のように動き出す。自分の左腕で押さえるが地上に上がった魚のようにいうことを聞かない。
「ぐっ…なんだよこれ…」
すると黒い腕にヒビが入りライトでも入ってるかのように赤く光だす。
ーーー星ハ何処ダ。星ハ何処ダーーーー
頭のなかで誰かが叫んでいる。頭の中にメガホンが入っているかのように声の大きさが頭を揺らし、意識を遠ざける。ヒビが黒い腕だけでは身体まで侵食してくる。
「ダメだ…意識が…」
周囲が赤い爆発と共に光を放つ
~~ ~
ビービー
デバイスより緊急の連絡がくる。すかさず、近くの隊員が駆け寄る。
「霧島さん。近くで異形の反応です。一瞬、複数体の反応があったのですが、1体が強烈な波動を出してるそうです。場所は区域北北西です。」
おいおい、そっちの方面はさっき“カミサキ”が向かった方向じゃないのか?慌てて自分の持つ“ラストレイン”をホルダーから抜いて
「そっちの方面は隊員がいるかもしれない。戦闘ができる隊員は俺と共に来い!異形を狩る」
霧島は隊員3人と報告の地区に向かう。向かう途中に壁を大きな爪で引っ掻いたようなキズがついていた。ついてきた隊員の一人が
「でかい獣でもいるんですかね…?」
「わからん。これは獣というよりは鳥っぽいな」
霧島はそう言うが鳥のサイズではないことは明白だった。目的地に近づけば近づくほど、傷跡は辺り一面についていた。
バサッという音がしたので、警戒をしたその時。最初は4人だったのに1人“居ない”
回りを見てもいなくて頭上から悲鳴が聞こえる。すると、回りをペンキで染めるかのように頭上から赤い雨が降り注ぐ。瞬く間に3人が赤く染まる。
「上だ、警戒しろ」
霧島が叫ぶが、隊員は自分含めて2人だけ…。バカな…早すぎて目視ができない。霧島はラストレインを構えるが、その存在を確認できない。しかし
「収束し、拘束せよ。光の檻」
霧島が詠唱して、ラストレインのトリガーを引くと空の上に光の粒子が何百、何千が杭の様に現れて雨のように地面を射す。見えないのなら動きを止めるまで。
流れ星のように光の杭が空から降り注ぐ。自身の回りを守るために地面からも杭を出し。シェルターを形成するがもうその場所には“霧島しか”居なくなっていた。
自分を守る格子から外を見ると大きな赤い大きい何かが杭に貫かれている。動けば動くだけ餌食になる技である。赤い何かはたっぷりとその身で杭を受けたのか地面に落下する。
その赤い異形は吸血鬼かのように連れてきた隊員の引きちぎった腕をくわえていたが、落下の衝撃で落とす。
「おい、化け物。よくもやってくれたな。覚悟しろよ。」
赤い異形は片ひざをついて顔を上げる。2足で立っているが腰から大きな翼を生やし、下半身は鷹のように羽毛と鳥足になっており爪は鋭く、血で赤く染まっていた。顔はというと、胸ぐらい届くぐらいの大きな口ばしのようなマスクをつけている。ペストマスクを思わせる感じだがマスクにも牙が出ていて。マスク出はなく、異形の顔なんだと感じる。
「思った以上に化け物だな…けどよお前のその羽に引っ掛かってるデバイスとグレーの軍服の切れ端は“カミサキ”のだぜ、お前、“カミサキ”も襲ったのかよ。」
“カミサキ”も連れてきた部下も3人襲われてしまった。こんな異形は初めてだが、人の味を覚えたヤツは逃がすわけにもいかない。ここで討伐する。
「直列せよ。光の鼓動。」
霧島が赤い異形にラストレインを向けて詠唱する。光の杭がトリガーの回りに花のように咲いたら杭がトリガーの回りに直列に並ぶ。
「放て、雷撃の杭」
その言霊で一斉に杭は赤い異形に飛んでいく。赤い異形は受けまいとして、翼を広げて横に飛ぶ数本は赤い異形の場所に刺さるが残りは明後日の方向へ飛んでいく
杭を避けた瞬間、体勢を建て直し、赤い異形が両手の爪を立てて、こちらに突進してくる。それに合わせてトリガーを空に向けて霧島が追撃に唱える
「2つに分けろ、雷鳴の稲光。」
するとトリガーより、長い剣が伸びる。それをみた赤い異形はは自分の足を地面につけて、避けるためにスピードを落とすがいきなり止まるわけもなく。突っ込んでくる。霧島がトリガーに指をかけながら、自分の左肩の方から接近する赤い異形に向けて振り下ろす。
赤い異形は止まるときに翼を大きく広げて手も下の方に向けていたのだが、目の前に刃が迫ってきてることがわかり、両腕を刃に向かわせようとするが霧島が
「拘束せよ。光の檻」
そう唱えると、先ほど対象を失って飛んでいった、杭が頭上に現れ、爪を向けようとする腕に刺さる。腕が下がり胸が、がらあきになり引き金を引きながら刃を振り下ろす。
見事に杭も刃も身体を引き裂いて、赤い異形は悲鳴のような声を上げて、転がり倒れる。その声は女性の悲鳴ともとれる、不快なものだった。
深手を追った赤い異形は地面に寝そべる形になってる。その時の、大粒の雨が辺りを包む。
~~ ~
「てな感じで、入隊早々の部下と参戦してもらった。部下3人に愛機のラストレインまで奪われる始末っス」
霧島の話を聞いていた男がふと疑問を口にする。
「入隊早々の新人?誰の事だ?配属は明日じゃないのか?」
「カミサキって男っスよ。アイツ、システムの事、詳しくて頼りになる新人だなーって思ってたんですけどねー」
担架を運ぶ隊員も皆、首を傾げる。指揮官は困った声で
「着任のやつは“水城リゼ”という女性だぞ?」
数日後
入院中に入隊履歴を調べたが、“カミサキ”なる隊員の所属はわからないままだった。ただ、自分の家族の事を話すアイツの目は間違いなく怒りの炎を宿していた。それは嘘偽りは無いと霧島は思っている。
「アイツも生きてることを祈るしかないな。あとはあの赤い異形…ラストレインもそうだが、アイツを野放しには出来ない。次は必ず狩る。」
そう思い、霧島は病院の窓から寒空の外を眺めるのであった。
<Chapter:???> <??>
コンコン
夜中に裏口の扉を叩く…
白髪の男は本を閉じて、立ち上がる。扉の前に立って丸いメガネを上げて扉を開ける。その扉はキィと音を出して動く。
「いらっしゃい。“神崎”さんどうぞ中へ」
白髪の男に促されて神崎と呼ばれた者は中に入る。
「まあ、座ってください。大体はわかってますので」
白髪の男に促されて椅子に座りうつむく。黒髪は目に被さり表情は伺えない。
「上手く行かないかな…とは思ってましたが、ここまでとは…」
神崎はうつ向いたまま何も言わない。白髪の男はテーブルに紅茶を2つ置いて自分も座る。すると神崎が上着のポケットから何かを取り出してテーブルに置く。白髪の男は疑問符をつけながら
「さて、これからどうしましょうか?」
テーブルの真ん中には赤く光る結晶が…
「これは探し物ではないのですが、私が預かりましょう。」
そう言って白髪の男はテーブルの赤い結晶を見つめる。燃えているかのように赤く、輝いている。神崎は相変わらずうつ向いたまま。
「このままだと、“彼”を探せないですね。それは貴女も望まないでしょう。」
そう言うと神崎はうつ向いたままだがポタポタと涙が溢れる。セミロングの髪が揺れて肩を震わしている。
「“今”は無理でも次は貴女と幸せになる未来もあります。だから泣かないでください。」
数分後テーブルには2つのティーカップで白髪の男が…。提供した1つは紅茶が手付かずのまま残されていた。
「まさか、カンザキユウマさんが所在不明になるとは思ってなかったですね。灰の巡礼者も中々に強敵ですね。こんなものまで用意して対抗策を準備してるとは…」
白髪の男の手には銀の装飾が付いた拳銃“ラストレイン”
「やはり一筋縄ではいきませんね。対処を考えないと」
そう言うと白髪の男は拳銃を凝視する。中には“ヴォラグ”のカルマスが。
「武器化ではなくシステムに組み込むとは考えましたね。これならモナントでも害無く使用できる。ただし、肉体はそのままなので対処は容易い。」
拳銃をしまい、片手にテーブルの赤い結晶を手の中に握ると手品のように消える。部屋の電気を消そうとして思い出したかのように、テーブルに戻る。
「危ない、危ない。こんなの置いといたら危険ですね。」
そう言って、テーブルではなく椅子に手をかけて動かす。自分の対面の椅子の上には黒い結晶が…。
その結晶に白髪の男が
「心配しなくても大丈夫です。彼も、ちゃんと救いますよ。だからそれまでおやすみなさい…“神崎”さん、いえ…“朝倉ひなた”さん」
今後の展開を考えて、登場人物の表記を変更しました。以前までの話もいずれ、修正していきます。




