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【Episode K :Only the Steam Remained/残っていたのは、湯気だけ】後編

<Chapter?> <???>


「はじめまして、少し話をしてもいいかな?」


声をかけてきた、目の前の男は明らかに自分を目的に待っていたかのような感じだった。ただ、サクラさんとの会話の直後とあって僕は警戒心が高くなっていた。普通の大学生にいい大人が声をかけてくるなんて普通はあり得ないのだから。けど自分の心中を察してか、男は笑顔で


「警戒しなくても大丈夫です。ただ君の“重”カルマスに用があるだけです。」


カルマスといった瞬間に身体が硬直した。やはり狙いは僕の“中身”か。警戒心が更に高くなったことに気がついた男は


「挨拶がまだでしたね。私は“クレア・アグニ”と申します。ヴォルガでカルマスを求めていますが、君を襲うつもりはありません。」


“クレア・アグニ”と名乗ったことにより、自分では埋めれないチカラの差を見せつけられる。本気を出さなくてもこの男は自分を一瞬で消せる。


「強力なチカラを持つ貴方あなたが虫ケラ以下の私に何のようですか?ああ、危険なチカラを野放しには出来ないってことですか?」


皮肉と自傷を込めた最大限の抵抗。ちょっとでも気を反らさないと意識が消えそうになる。意思を強く持とうとした時にフッと相手の男からのプレッシャーが消える。


「すみません。コントロール出来ていなかったですね。まだ“この身体”には慣れてなくて」


気がつけば、異様なチカラの波動がなくなり、身体の重みが無くなる。


「これで、普通に話せますね。先ほどもお話した通り、私はヴォルガではありますが他人のカルマスには興味はないです。けどちまたで噂の“闇の鎧”のカルマスは君ので最後で、完全体になってしまう。それは阻止しないと。」


おいおい、この男は恐ろしいことをさらっと言ったぞ。闇の鎧のカルマスってことは“闇の鎧”もヴォルガと言うことになるし、残りの1つが自分が所有してるってことがどれ程の事か。サクラさんの言う、自分が混沌の中心にいるという意味がようやくわかった気がした。


「あなたの魂と繋がっているカルマスを奪えば貴方の命は尽きてしまう。流石に私もそれは望まないです。けど、無力化はできる。さて君に選択する機会を与えましょう」


既に選択肢を聞く前から答えはわかっている。答えようとした時に着信が…


ピピピピピー


目の前の男に目配せをする。危害を加えないと言われても、一瞬で消されてしまうかもしれないと言う危機感がある。しかし目の前の男は右手でどうぞと言わんばかりに出ることを促す。恐る恐る、確認すると通話相手が【クロセさん】と表示されている。通話ボタンを押し、冷静を装って通話する。


「はい?何ですかいきなり?」


通話口のクロセさんは『はぁ?』と若干キレている感じ、冷静に言ったつもりがケンカを吹っ掛けた感じになってしまった。もちろんこの後一瞬で消されてしまう事を考え、メッセージを残す。


「そんなことより、あの…自分、ヴォルガって、てっきり悪魔みたいなの想像してたんですけど、僕らと同じなんですね」


もう少し、色々遠回しに伝えたかったのだが、言葉の裏を読み解くほど、クロセさんとは関係が出来ていない。けど、言葉の内容次第では一瞬で通話終了することもあり得る。一旦は第1ワードはクリアって感じか…。相手はまだ動く気配はない。


クロセさんは沈黙した。僕の伝えたかったことが伝わればいいが…するとクロセさんが恐る恐る


『待ってユウキくん、君は今“誰と”会ってるの?』


よし、話の大筋を伝えることができた。自分の置かれている状況、立ち振舞い次第では終わることも。クロセさんが恐る恐る話しかけてきたのも通話を聞かれている可能性もわかって貰えて、相手を刺激しないように言葉を選んでくれている。けど、あまり時間をもらえるかわからないので決定的なことをゆっくり話し出す。


「自分の目の前に“クレア・アグニ”と名乗る男性がいます。彼は自分はヴォルガで、僕の持つ“重”のカルマスを渡すようにと言ってます。」


そう言って、間髪入れずに通話を切って通話機器を下に叩きつける。止められたり、封じられない様に身体でガードしながら。


ガッシャーンと大きい音を立てて通話機器が壊れる。それをしても相手は動く気配すらない。すると男が


「君は結構思慮深いですね。あの一瞬で相手を刺激しない様に話を伝えて、通話相手が理解したと思った瞬間、伝えたいことを一瞬で伝えて、相手の情報を敵に流れないように通信機器も破壊する。自分の命を盾にして…中々出来ることではない。」


自分の考えが全部丸見えだったみたいだ。恐る恐る返答する。


「もしかして、理解した上で見逃したんですか?貴方の目的は?」


男は笑いながら


「最初から君に危害を加えるつもりはないと言ってるじゃないですか。それに君の判断力は別の意味で私と行動を共にしてほしい。君ならたどり着く可能性もありそうだからね」


自分の行動も予想した上で行動を許可する。この男は自分では勝ち目がない事を悟る。こちらが理解したとたん、男は


「さて、君の援軍が来る前に話を終わらせよう。改めて私の目的は“割れた空の上”に届く存在を探している。君ならその先に行けると確信したよ。」


割れた空の先?あの災厄の原因の空の先に何かあるのか?

疑問に思っても自分にはわかるはずもなく。


「それに君だけが唯一、“カルマスの所在がわかっている”存在だからね。ノーヴァを越えてヴォルガに一番近い存在だ」


カルマスの所在?先程のこの男は【君ので最後で完全体】と言っていた。サクラさんとの話からも自分は1つ所有してるのは明らかで、たぶんクロセさんもそうなんだろう…と、言うことは…。自分は1つの考えにたどり着く。それを察したかのように


「そう、だから君の同行をお願いしたい。そして君が我々と同じ道を歩むんだ」


それを言われて自分は確信した。目の前の男に向かって臆することなく


「じゃあ、その目的を達成する為に貴方はチカラを貸してもらえるんですよね?むしろ、貴方のバックにいる兵士も」


「流石ですね。君は想像以上だ。もちろん、闇の鎧の討伐には私も“灰の巡礼者”も同行させよう。討伐したあかつきには君が指揮官になればいい。君の安全は保証しよう。」


サクラさんには悪いが、この条件は破格すぎる提案だった。まさか、集団であろうとは思って鎌をかけるつもりで聞いたが“灰の巡礼者”の関係者だったのは意外で好都合。しかも、この男は彼らの上位である言い方なので、家族の安全も保証される。


「交渉は成立かな?君と君の家族は保証しよう。おっと、モナント達には“カイト”と名乗っている。改めてよろしく。」


「言わなくても理解していただけるのは助かります。1つ聞いていいですか?貴方達ヴォルガはみんな偽名なんですか?」


カイトと名乗った男は一瞬で首を傾げるが


「ああ、そう言うことか。クレア・アグニと言うのは自分の属性の名前なんだけど、ヴォルガ名と言えばわかるかな?だから継承する名前と言った方がいいね。そして、私の“カイト”と言う名前が自分固有の名前だよ。先代の王から名を頂いた名前さ。君に会った“ヴォルガも別の本当の名前”があるよ」


本当に全てお見通しのようだ。先に違うヴォルガと接触していて提案を受けているけど、それを上回る条件を出してきた感じかな?


「はい、よろしくお願いいたします。僕は“ユウキ カズマ”と言います。」


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