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通貨革命  作者: キャズ
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メリエ編 7

 休憩を終え、商業ギルドへと戻り、資料の整理に取り掛かろうとしていると、職員の一人がメリエに声をかけてきた。


「あのー、メリエさん」


「ん?なぁに?」


「マスターがちょっと来て欲しいって」


「何か問題でも起きたの?」


「うーん、問題が起きたとかじゃないみたいなんだけど、例の紙のお金の件でお客さんが来てて、その対応をしてほしいみたい」


「ふぅん。なんだろー」

(紙のお金の件って事は、ユーグさんに用事がある人って事?でもって、直接銀行に行かないって事はユーグさんが舵取りをしているって知らない人だろうから、街の外から来た人かな。紙のお金の噂を聞きつけてこの街にやって来たってとこか)


 などと考察しながら、メリエはマスターが来客の対応をしている応接室へと向かった。


 応接室に入るとそこには商業ギルドのマスター、マダン・ガダラン。それと向かい合う様に修道服姿の男女が3名座っていた。


「お待たせしました」


「おう、来たかメリエ。まぁ座りな」


「はい」


 メリエは修道服の3人組と向かい合う様に座った。そして来客であろう3人を観察する。


(あの修道服、マルザ教か。あそこが紙のお金に興味あるって、なーんか嫌な予感する)


 マルザ教。この国の国教であり、ブランツ王国以外にも多くの国が国教としているとても大きな勢力を持つ宗教だ。その権力は圧倒的で、一国の王ですら逆らう事ができない程。多くの国が国教とする宗教だからこそ、国の境を超え、多くの国に無視できない影響を及ぼせる力を持っている。

 だがしかし、圧倒的な権力を持つ存在の宿命とも言うべきか、今のマルザ教は自身の権力に溺れ、その影響力を私腹を肥やすために使い、各国から富を吸い上げる存在に成り下がっている。いまだに信仰する者は多いものの、失望している人も多い、そんな存在だ。


(この国がお金が足りなくて困っているのも、元はと言えばマルザ教が国に対して高額な寄付金の強要をしたからだしなぁ。もしかして、紙のお金に興味を持って、一枚かませろとか言ってくるのかなぁ。それとも、紙のお金の流通が気に入らないからって妨害でもするつもりなのかなぁ。嫌だなぁ。帰って欲しいなぁ)


 そんな嫌な気持ちを顔には出さず、にこやかな表情を修道服姿の3人組に向けていると、


「こちらはマルザ教回帰派、その中の、主に貧困層の支援を行っている部署の方々だ」


 マダンが来客の3人組について教えてくれた。


「あぁ、回帰派の方…」


 マルザ教回帰派。マルザ教には主流派である教皇派とは別に回帰派という派閥が存在する。権力に溺れ腐敗していくマルザ教の現状を憂い、本来の謙虚さと誠実さを重んじる本来のマルザ教の回帰しようと考える派閥で、主流派と対立しているマルザ教内でも微妙な立ち位置の人達。こちらは私利私欲で動く人達ではないものの、主流派と対立していて変に関係を持つととマルザ教教皇派に目を付けられそうで、これはこれで関わりたくない感じ。

 回帰派の面々は順々に軽い自己紹介をしていく。


「マルザ教、回帰派の神官アーセル・ラントです」


 白髪交じりの優しそうな高齢男性だ。


「同じくマルツ・メイヤース」


 小柄の中年男性だ。


「同じくニア・レイゼッテです」


 長髪糸目の中年女性だ。


「どうも。メリエ・リエラです。紙幣流通の責任者の監査役をしている者です」


 メリエはその3人と順々に握手を交わしていった。

 そして握手をし終わると、マダンが本題に話を進める。


「ではアーセル殿、もう一度ここに来た理由をお聞かせ頂いてもよろしいですかな?」


 修道服3人組の一人、アーセルが頷き理由を語っていく。


「今回我々がここに来たのは、この街で行われている紙の通貨というものを貧困層の支援に活用できないかと思い話を聞きに来た次第です。ご存じかと思いますが、この国では力の弱い村や街、そこに住む人達が半ば見捨てられている状態にあります。選択と集中の名の下に地方への予算は減らされ、産業の維持もままならない状況下でも税を課され、多くの罪のない人々が苦しんでいます。我々としてはそんな人々に救いの手を差し伸べたいのですが、我々回帰派もまた予算を削られ、貧困層への支援活動も十分に行えない状況。どうしたものかと思い悩んでいた折、ここフィレーゼでは紙の通貨を流通させて通貨不足を解決しているという噂を耳にしたのです。そしてこの街を見て回って確信しました。紙の通貨は、通貨不足で苦しむ人々を救えると。どうか、どうかお願いします。貧しさで苦しむ人々のために協力を、いえ、仕組みを教えて頂けるだけでも構いません。どうかご助力を…」


 その語りを聞いたメリエは心の中で深いため息を吐いた。


(あーヤダヤダ。こういうちょっと成功したらすり寄ってくる奴。弱い立場の人を助けたいって気持ちは分かるけど、それで営利団体を非営利活動に巻き込まないでほしいよね。謙虚そうな物言いでタダで情報を教わろうとしてるし、営利団体に交渉するなら泣き落としじゃなくて商談をしろって話だよ、全く)


 さすがにこんな申し出を受けたりはしないよねとメリエがマダンに目を向ける。だが、結果はメリエの考えとは異なるものだった。


「メリエよ。この方達をユーグ・リーデンの元へ案内してくれ。奴と直々に交渉してもらう。いつも通り、話した内容の報告も頼むぞ」


(え!?この人たちの申し出を受け入れるの!?)


 メリエは顔には出さずに心の中で驚いた。いつもならこの手の泣き落としでどうにかしようとする輩は門前払いにするのだけど、なぜか今回は申し出を受け入れ、ユーグの元へ連れていくらしい。

 メリエは口には出さず(良いんですか?こんな申し出、断らなくて)と目線でマダンに問うと、マダンはかまわんと言わんばかりに頷いた。

 話を聞いてもらえるという事で浮かれる様子の修道服3人組にマダンは告げる。


「では、こちらは2人で少し話す事があるので、お先に銀行へ向かう準備をして待っていてください」


「はい」


 修道服3人組は深々と頭を下げ、マダンとメリエの二人を残し部屋を後にした。

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