メリエ編 3
次は融資の様子を視察していく。
ユーグは紙のお金を流通させる方法として少し手の込んだ流し方をする様で、ただお金を渡すのではなく、融資という形で市場に流すとの事。そこで、どういった融資を行うのかメリエが視察し確かめるのだ。
一件目。
最初に向かった先はフィレーゼで昔から服飾業を営んできた老舗の店。店内の見学を終えた後、ユーグはメリエに見られながらその店の三代目と融資の交渉を進めていく。
「私の店は昔から服飾業を営んでおり、これまで庶民の手に届くおしゃれとして手頃な価格のドレス等を販売し、シェアを伸ばしてまいりました。ですが、昨今の経済情勢の変化によって今まで売れていた商品が売れなくなっている状況です。そこで私は今の需要に合わせた商品を作っていく必要があると思い、これからは普段着にもおしゃれををコンセプトに低コストと美しさを両立させた商品を展開させていこうと考えております。新しい事業を始めるためには設備や人材育成に投資が必要なので、ユーグ殿にはそのための資金を融資して頂きたい」
「ふむ。今に合わせた商売を始めるとの事ですが、これまでの商売はどうするおつもりですか?」
「続けはしますが、規模の縮小は避けられないと考えております。うちは長い間今の商売を続けてきたおかげで愛用してくださる方も多く、今でも一定の売り上げは確保できております。ですが所詮贅沢品。経済状況が悪くなれば切り捨てられるのも当然と言えましょう。既存の顧客を守りつつ、新規事業で新たな顧客増加を目指すという感じですな」
「なるほど…」
ユーグは資料に目を通しながらしばらく考えた後、ペンと一枚の用紙を取り出してサラサラっと文字を書き、老舗の三代目に見せる。
「では、この条件でいかがでしょう」
条件が書かれた用紙を見て老舗の三代目は少し悩ましい表情をしつつも答える。
「少々厳しい条件ですが、これなら…。この条件でお願いします、ユーグさん」
こうしてこの融資の交渉は成立した。
その結果を見てメリエは思考を巡らす。
(ふぅーん。現状の不景気をかんがみてその対策を考えているのは良いけれど、不景気の状態で新しい試みというのはリスクが高い。だから少し高めの金利での融資って感じかな)
二件目。
次に向かったのは、金属と木材を組み合わせた工芸品を作り売っていた小さな店。さっきと同じく、メリエに見られながらユーグはその店の地味な顔の店長と交渉を進めていく。
「うちは店に置かれている様な木材と金属を組み合わせた工芸品を作っておりましてな。これまではそれで十分に稼げていたんですが、最近は工芸品もめっきり売れなくなりまして…。もう贅沢品はろくに売れない。このまま今の仕事を続けるという訳にはいかなくなりました。そこで、これまで副業としてやってきた工具の製造を本業にしようかと思うのです。工芸品の店から工具店へと改装したいので、そのための融資をお願いしたい」
資料に目を通しながらユーグは言う。
「ふむ。贅沢品で生計を立てるのが厳しくなったから、必需品で生計を立てようって事か」
「はい」
ユーグは用紙を取り出し、サラサラっと条件を書いて地味な顔の店長に見せる。
「じゃあこの条件でいかがかな?」
地味な顔の店長は頷き答える。
「お願いします。ユーグさん」
これで融資の交渉は成立。
ここでユーグは少し間を置き、地味な顔の店長に提案する。
「そうだ。ここが工具店に変わる事をこちらで宣伝もできますけどいかかですか?お安くしておきますよ?」
ユーグのセールストーク。地味な顔の店長は「うーん」と少し考え答える。
「おいくらですか?」
不安そうに聞く地味な顔の店長に、ユーグは条件を書いた用紙にサラサラっと書き足してそれを見せた。
「これくらいですね」
条件を見た地味な顔の店長は再び頷く。
「じゃあそれもお願いします。ユーグさん」
「毎度ありー」
追加で商談も成立という事でユーグと地味な顔の店長は握手を交わした。
そんな様子を見てメリエは思う。
(ちゃっかりしてんねぇ。融資の交渉を成立させながら、宣伝を商品として金儲け、それに加えて宣伝で商売の成功率を上げるって感じかー)




