メリエ編 14
そこそこの広さの会議室。そこには色々な人が集まっていた。
マルザ教からは回帰派の有力者や貧困層支援の責任者らしき人が何名か。慈善活動として協力しているであろう商人や資産家もこの場に来ている様子。
メリエは辺りを見回して参加者の顔ぶれをチェックしていく。
(あの服装、マルザ教の大神官か。回帰派には大神官が3人居るって話だから、回帰派のトップは皆来てると…。回帰派も結構本気っぽいね。民間からは商人っぽいのが何人か、慈善活動家で有名なハシュマーさんも居るし。回帰派に援助している人達かな。回帰派の貧困層支援に関わる顔役全員集合って感じだねぇ)
この場の視線は一点に集まっている。今回の主役と言ってもいい存在ユーグ・リーデンに。
そんな注目が集まる中、回帰派の大神官の一人がユーグへ問う。
「さて、ユーグ・リーデン殿。確か、我々の貧困層支援は修正する必要があるとの事でしたな?」
ユーグは頷き答える。
「正直あなた方回帰派の支援策はなっちゃいない。無計画に赤字を足れ流しているせいで持続性がないし、与えるばかりで自立を促せていない。何の計画性も無く進めているのは明らか。これじゃあお互い苦しみ続けるだけだ。金目当てで動く奴を嫌悪するのは結構だが、それで金勘定を軽視してりゃあ元も子もないだろ」
生意気な口調でダメ出しをするユーグ。その態度に腹を据えかねたのか、神官の一人が席を立つ。
「貴様!その態度はなんだ!このお方が誰か分かっているのか!!?」
対してユーグは軽い口調。
「マルザ教の大神官、ローレス・ルーグライトだろ?マルザ教の主流派である教皇派の活動内容を問題視し、回帰派を立ち上げてここまで拡大させた立役者。実施的な回帰派のトップだな。後二人の大神官は、フェイン・イルブートとスレト・ホードマン。どちらもマルザ教で人格者として称えられる人物だな。下手すりゃ一国の王以上の権力者。違うか?」
「こいつ…知っていてそれか!」
(まーたつっかかってるよこの人…)
口論になりそうな空気。それに大神官ローレスが待ったをかける。
「よい。我々は教えを乞う側、謙虚な姿勢であらねばならん。それに彼のいう事はもっともじゃ。ワシらは救うべき人達を十分に救う事は出来ておらんかった。ここは心して彼の話を聞こうではないか」
ローレスは穏やかな笑顔をユーグと神官へ向け、この場を収めた。
ユーグはフッと嬉しそうに笑い、堂々とした態度で話していく。
「そもそも、回帰派の貧困層支援に持続性が無いのも、それで自立に向かわないのも、ただ与えるだけで見返りを求めない支援を続けているからだ」
民間の参加者の男が口を挟む。
「しかし私たちは慈善活動をしているのですよ?利益を追求しない事は当然では?」
ユーグは首を振り、反論を返す。
「貧困層への支援の場合、その考えは当てはめるべきじゃありません。与えるだけの支援というのは災害時とかにするもので。貧しさで苦しむ人を救うのに適していないのです。貧困層というのは、働いてもろくに稼げなかったり仕事にありつけなくて困っている人達の事。つまり、彼らは社会の一員になれずに苦しんでいる訳です。貧困層を救うというのは、貧困に苦しむ人達を社会の一員として受け入れる事。奴隷の様に働く様な状態も、慈善家の援助がなければ存続できない状態も、貧困層を救った内には入りません。彼ら自身が稼げる様になる事はもちろんの事、彼らと取引する者達も利益を得られなければならない。双方が得をしなければ解決とは言えません」
(あれ?なんかタメ口止めてる。大神官にはタメ口だったのに)
民間の参加者達は納得した様子で静かに頷いた後、その内の一人がユーグに問う。
「では、貴方は私達も得をする様にすると?」
「えぇ。現状、民間の協力者の方々は無償で物資や資金の提供をしているんですよね?」
「あ、はい。私は主に食料品全般を取り扱っておるのですが、今のままだと売れ残ってただ腐らせてしまうだけなので、それで困っている人が助かるのならと譲渡しようと考えたのです」
「そのタダで譲渡していた品が利益に変わるとしたら?」
その問いに民間参加者の面々は少しばかり思考を巡らす。彼らも商人の端くれ、商売に関わる者としてこれまでの慈善活動が利益になるとしたらどうなるかを考えているのだろう。
そして沈黙の後、答える。
「私達としてもとてもありがたい話にはなりますね。これまでは援助の対象として
物資を送っていたものが、商売相手として取引で物資を送る様になると思います」
その答えを聞いたユーグは神官たちの方を向き、プレゼンでもする様に語る。
「現状の関係性は貧困層に余り物を与えて生き長らえさせている状態。支援する側の物資や資金に余裕がなくなれば支援は途絶えてしまう。支援する側の余力と善意ありきの策では長続きはせんだろう。しかし、商売相手として対等な関係になれるのであれば、物資を供給する側は商売として物資の供給を続けれる様になる。資金を提供する側も、譲渡という損をする形から投資という利益を得られる形になり、金銭的な支援も続けやすくなる。こうして助けが必要だった貧しい人たちは、社会の一員として助け合いの輪に入れる様になる。それを目指す事こそが真の貧困層支援だと私は考えるが、いかがかな?回帰派の皆さん」
ローレスは納得した様子で頷き、言葉を返す。
「そのための策があると言うんじゃな?ユーグ・リーデンよ」
「えぇ。これからその策の全貌をお教えしましょう」
ユーグは堂々とした態度で自身の策を語っていく。
紙の通貨をどの様に流通させるのか、どの様にして産業を立て直していくのか、そのために回帰派や民間の協力者はどういった対応をしていくのかを話していき。それに対して特に反対意見も出なかったため、ユーグの支援策が今後の回帰派の方針として進められる事となった。




