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通貨革命  作者: キャズ
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メリエ編 10

 そしてユーグは自分達の置かれている状況について話し始める。


「あなた達もご存じの通り。ここフィレーゼでは紙の通貨を流通させ、それを金属の通貨と同じ様に使える様にしている。まぁ、この街での通貨不足の問題は解決していると言っていい」


 ユーグは自分が流通させている紙幣を一枚取り出して見せ、言葉を続ける。


「だが、現状この紙幣はこの街限定の通貨、基本この街の物しか買えずその分の信用しかない通貨だ。そしてフィレーゼは土地も豊かじゃなくて鉱物資源も乏しい、他所に回せるだけの供給能力は無くて自分の事で手一杯だ。だから他所の街に紙幣を流したところで、紙幣で買える物が足りなくなるだけなんだよ」


「では、助ける事はできないと?」


 心配そうに尋ねるアーセル。それに対しユーグは首を振り、きっぱりと否定の言葉を放つ。


「いや、単にここで流通させている紙幣を流すだけでは解決策にならんというだけの話だ。他の街もどうにかするとなれば別の策が必要になる」


 今度はメリエが聞く。


「じゃあ、他の街でもその街限定の紙のお金を流通させるんですか?」


 フィレーゼは供給能力は手一杯で物資は提供できない。フィレーゼで供給されている紙のお金を渡してもダメなので、紙のお金をただ渡して解決ともならない。であれば、別種の紙のお金を作るのかとメリエは考えた。

 しかしそれは違うらしく、ユーグは再び首を振り答える。


「それも違う。街限定の通貨がいくつもあったら混乱の元だ。後々面倒な事になりかねん。第一まともに紙幣の管理が出来るのは俺くらいなもんだからな。他の奴には任せられん。俺が考えているのは紙幣の経済圏拡大だ」


「経済圏の拡大?」


 アーセルの問いにユーグは頷き答える。


「うむ。今も紙幣は通貨として機能しているが、それはあくまでフィレーゼ限定。この街で生産供給される商品の引換券にしかなっていないが、もし他所で作られている商品もこの紙幣で買える様になるとなれば、その分紙幣の信用は高まり、より完全な通貨に近づく。紙幣で取引される商品が増える事は、紙幣を流通させている俺にとっての利益になる訳さ」


「つまり、ユーグ殿は貧困に苦しむ人達と商売を行いたいと?それも紙のお金で」


「そういう事。こちらは紙幣を流して通貨不足で苦しむ人達を助ける。働けばカネを稼げて十分に家族を養っていける社会を提供しよう。そちらは支援内容の変更の手筈を。支援を行う人達や支援対象の街や村、そこの住人への情報伝達を頼みたい。紙幣での取引が出来る様にするための手筈をな」


 その提案にアーセルは少し思考を挟み、再度ユーグへ聞く。


「私達としてもその申し出は有難いのですが、ユーグ殿はよろしいのですか?」


「ん?なにがだ?」


「支援を必要としている人達は仕事にありつけなかったり働いても十分に稼げない様な人達。つまり、たいした商品を供給する事は出来ないという事です。それでユーグ殿の商売の利になるのでしょうか…」


 アーセルの意見にメリエは静かに頷く。


(だよねぇ。稼げていないから助けを求めているんだし、そんな人達を集めてもねぇ)


 メリエの不安をよそにユーグは余裕の表情。


「かまわん。むしろ俺が欲しいのはその稼げていない人達の方だ。それこそが通貨の信用に必要なのさ」


 商談というにはあまりに自分達に都合のいい条件。そんなので大丈夫なのかと戸惑いつつも、それで良いのならと修道服3人組はユーグの案を受け入れ、交渉は成立となった。


 その後、修道服3人組とユーグは細かな調整とその話をし、それぞれのやるべき事を明確化、約束をたがえた場合どうするのかまでを決め、誓約書を書き記し話し合いを終えた。

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