メリエ編 9
マダンとの会話を終え、修道服3人組と合流し、メリエは銀行へと向かう。事前に話を通していたという事もあり、事情を話すとユーグは快く話し合いに応じてくれた。
ユーグは修道服3人組から一通りの話を聞いた。
内容は相変わらず。自分達がマルザ教の神官である事、恵まれない人の支援を行っている事、予算を削られて困っている事といったもの。
(にしても、こんな人達の話を聞いてユーグさんはどうするつもりなんだろ。他所を助ける余裕なんてないのに…)
メリエがそんな事を考えていると、ユーグは呟く。
「なるほど…」
そしてユーグは、落ち着いた様子ながらも高圧的に、そしてしかりつける様に修道服3人組へ言う。
「まず、あなたたちが行っている支援策の問題点をいくつか指摘させてもらう」
その言葉に修道服3人組は唖然とした。
あまりに快く聞いてくれたものだからてっきり助けてくれると思っていた所、突然の説教モードに彼らもついポカーンとしてしまった様子。
そんな3人組を無視する様にユーグは勝手に話を進めていく。
「まず、計画がずさん過ぎる。自分達はどこまでの事ができるのか、人材や資金の規模も把握せず、とにかく困っている人を助けようって考えで進めているから行き当たりばったりだ。その上、あれもこれもと助ける対象を増やしているもんだから、そりゃあ計画も破綻するさ」
そんなダメ出しに待ったをかける様に3人組の一人、マルツが口を挟む。
「で…ですが。この国には貧困で苦しむ人が大勢居るんですよ?こっちの資金繰りが厳しいからといって見捨てる訳には…」
「で、結局助けられませんでしたってなるのが良いとでも?貧困層を支援します、あなた達を助けますといって現地にやって来たのに、予算も人材も足りないからやっぱり助けられませんってなるなら、相手側からしたら迷惑でしかないだろ。貧困に苦しむ人に届けるなら、自分達は助けたいんだって自分達の気持ちよりもこれで助かるぞって安心感を現地人に届けろよ」
「うっ…」
ユーグの言葉にマルツは叱られたペットの様に縮こまってしまった。
ユーグはさらに説教を続ける。
「支援の仕方も悪い。炊き出しや物資の譲渡といったただ与えるだけの支援ばかりで、自立に繋げるための支援を行っていない。これじゃあ助ける側の負債が増える一方だ」
ユーグの話に今度はニアが口を挟む。
「待ってくださいユーグさん。我々は貧困に苦しむ人々を助けるために活動しているのですよ?助けるべき人達に与えていくのは当然じゃないですか。それに助けるべき人達を負債だなんて…。あなた達商人は損得勘定で考えるのが普通なのでしょうが、私達はそんな考えで動いてはならないのです」
崇高ぶった言い方に呆れながらもユーグは言い聞かせる様に言葉を返す。
「逆だ。貧困から救うなら損得勘定は必須。助ける対象が働いてちゃんと稼げる様になんなきゃ救った内に入らん。助ける側にとっての負債のままじゃあ、支援対象を依存状態にしているだけだからな。それとも、お前たちは永遠に面倒を見続けなきゃならん要支援者を増やし続けるつもりか?」
その言葉を聞いたニアはうつむき黙ってしまった。自分たちの現状で思い当たる節があるのだろう。
ユーグは畳みかける様に続ける。
「正直、今のあなた達はマルザ教の主流派をどうこう言える程大層なものじゃない。現状のマルザ教主流派に問題があるのは確かだが、回帰派はその不満によって支持を増やしているだけに過ぎない。一応私利私欲で動いては居ないようだが、それだけだ。私達が貧困に苦しむ人々を助けますと当てつけの様に言っておきながら、助けるための策は雑でずさん、無制限に負債を増やす様な内容だ。これなら、お布施を減らしたくないからと回帰派を排除せずに予算を回している主流派の方が是々非々をわきまえてるってもんだ。回帰派の予算を削る理由も、無制限に予算を使う案を問題視しての事みたいだしな」
アーセルはうつむき何かを考えている様子。
そんなアーセルを横目で見ながらメリエは思考する。
(まぁ、これは言われても仕方ないよねぇ。回帰派の人達、主流派はカネにがめついだのみっともないだのと言って対立しておきながら、自分達は予算度外視の計画を立てて、カネが足りないからって他所に助けを求める始末だもん。信者からのお布施で活動できる人達に他人の金銭欲をどうこう言わないでほしいよ)
この雰囲気では交渉は決裂だろう。修道服3人組にも諦めの表情が見て取れる。そんな中アーセルは口を開く。
「ご指摘ありがとうございました、ユーグ殿。貴方のお言葉で自分達がどれほど愚かなのか思い知らされました。協力を得られないのは残念でしたが…」
と諦めの言葉を言おうとした時、それを遮る様にユーグは言う。
「ん?誰が協力しないって言った?」
「え?先ほど私達の支援の仕方がダメだと…」
「それは修正が必要だからダメ出ししたまでだ。ここからは、俺が協力した場合に進める策と、協力する際の条件の話。ここからが交渉だ」




