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第24.1章:頭を持つ騎手

【漆黒の駿馬、戦場を駆ける】


シュッ!!!


黒曜石の槍が金属的な甲高い音を立てて空気を切り裂き、エンジの三角筋に深く突き刺さった。その凄まじい衝撃波によって、周囲にそびえ立つ樹齢百年の巨木の幹が、悲鳴を上げるように激しく軋んだ。


「くそっ――!」


エンジの咆哮は、凍てつく冷たい空気の塊に一瞬で飲み込まれた。彼の双眸は、激しい激痛と完全な困惑が混じり合った表情で大きく見開かれる。


「うっ……あの馬、一体どこから現れたんだ!?」

「ローズ!」


マルセリンが叫んだ。漆黒の重装甲をまとった堂々たる騎士の姿を目にした瞬間、彼女の胸を容赦なく締め付けていた絶望の重みが、霧が晴れるように軽くなった。

今や鋼鉄の駿馬にまたがった長い髪の少年――ローズは、金属製の手綱を強く引き絞った。人馬一体のシンクロ率は完璧だった。身体を覆う重装甲の重量など微塵も感じず、ただ底なしの圧倒的な力強さだけが脳内に伝わってくる。


「うわっ……これ、すごく……いい感じだ」


ローズは金属製の兜の下で低く呟いた。放浪者ヴァガボンドとしての鋭い銀色の瞳が、完全に獲物を捉えて釘付けになる。


「さあ、今の俺がどれほど強いか、その身で試してみろ……処刑人」


金属の馬は、内部の歯車が互いに激しく擦れ合うような重低音を響かせていななき、機械式の鼻孔から灼熱の白い蒸気を勢いよく噴き出した。


「くそっ……! 『スパーク・セン』……!」


エンジは辛うじて動く右手を掲げ、紫電の放電を放とうとした。しかし、ローズは手短に精神の合図を送る。

まるでそのテレパシーに応えるかのように、エンジの肩に深く突き刺さっていた槍が、肉を裂いて激しく引き剥がされ、音速で手元へと飛び戻ってきた。騎士の手が、その柄をガッチリと掴み取る。


「うっ……!」


エンジはその場に激しく膝をつき、口から残留する電気を帯びた赤黒い血を吐き出した。


――あの馬……純金属製だ。ネクロ・フローの痕跡が微塵もない。エネルギーの法則を完全に無視するような怪力を、一体どこから引き出しているんだ!?


「この槍はすごい。俺のこれまでのボードアーマーの武器より、ずっと馴染むな」

ローズは、太古の飢えと闘争本能を帯びて激しく振動する漆黒の武器を見つめ、低く笑った。


「名前をつけるべきだな……」


すると、鋼鉄の馬が不満げな声で低くいななき、鋭い鋼の蹄で焦げた地面を荒々しく叩いた。自分の名前が先だと言わんばかりに。


「おや? お前も名前が欲しいのか? そうだな……」


ローズは兜の奥でニヤリと微笑んだ。


「キョウ(饗)と名付けよう」


キョウは、金属的な満足感を帯びた高い響きのいななきでそれに応えた。


――今のところ、頭が重く感じられない……。これこそ、今の僕に最も適合する最高の鎧だ!


「あいつを仕留めに行くぞ、キョウ!」

「チッ! 火花散る(スパーク)――!」


ローズはエンジが身振りを終えるのを待たなかった。完璧に息の合った駆動音を立て、キョウが音速の壁を突き破るような速度で突進する。ローズは槍の柄を太い棍棒のように一閃させ、エンジの胸の真ん中を容赦なく殴りつけた。強烈な打撃音が響き、エンジの身体が茂みの奥へと消し飛んでいく。

エンジは吹き飛ばされながらも、空中で必死に体勢を立て直そうとした。


「うっ……ちっ……『インプー』――!」


ドカンッ!!!


エンジが地面に叩きつけられるよりも早く、ローズがその上空へと先回りして出現していた。

『ナイト・アーマー』の槍が、あり得ないほどの超重量と速度で、何度も、何度も、容赦なくエンジの身体へと振り下ろされる。ローズは決して最速の戦士ではなかったが、その一撃が繰り出されるたび、まるで巨大な山がエンジの頭上に崩れ落ちるかのような絶望的な衝撃が大地を揺るがした。

エンジの血がローズの銀色の装甲を赤く染め上げたが、少年はそれすら気にも留めていないようだった。


「ハハハ! 悪くない、悪くないぞ!」


アドレナリンと、初めて手にした圧倒的な力が少年の判断力を曇らせ、ローズは狂気交じりに笑った。


「これならどうだ!? 『神の槍』――!」

「もう、うんざりだァァァッ!!!」


エンジが地獄の底から響くような声で咆哮した。

次の瞬間、周囲の空気が急速に重くなり、まるで夜そのものが凝固したかのように、世界がドロドロとした漆黒に染まった。空から降り注いでいた月明かりが、絶対的な虚無の闇の中に引きずり込まれ、消え去っていく。


「なるほど……」


エンジは、骨を削るような歪んだ声で言った。


「それが、リュウさんが言っていた『鎧の一部』か。確かに強力だ……。だが、我が『VOID』はそんな微々たる力には決して屈しない。我々こそが、世界の頂点に立つ!」

「――『無限の虚無ボイド・インフィニティ』――」


禍々しい紫色のオーラが、大地を粉々に震わせるほどの圧力でエンジの肉体へと還ってきた。ローズは激しい衝突に備えて身構えたが、処刑人の冷酷な視線が、背後で立ち上がろうとしている吸血鬼の少女へと向けられたのを見逃さなかった。


「 えっ!? マルセリン――ッ!! 」


「 『ネクロエクスタシス』…… 」


エンジが冷酷に呪文を紡ぐ。


「走れ、キョウ(饗)――ッ!!」


ローズは必死にキョウの腹を蹴り、拍車をかけさせた。これ以上の攻撃は生身の彼女を灰にする。さらなる絶対的な防御が必要だった。何が何でも、彼女を守らなければならなかった。


「雷――」


「『万丈のボードアーマー』:……『城塞ルーク・アーマー』――ッ!!!」


「『セレスティアル』……!」


「『アーマー(全装甲展開)』!!!」


マルセリンには、視界のすべてを埋め尽くす漆黒の金属と、眩い青い魔力の光の壁が、自分と世界の終焉(天災)の間に立ちはだかるのが見えただけだった。


ドーーーーンッ!!!!!


天を割って、暗紫色の巨大な超弩級の稲妻が、罪人を排斥する神の怒りの如く轟音と共に降り注ぎ、ローズの全装甲を直撃した。その爆鳴はあまりにも凄まじく、発生した衝撃波は、ベネシアの首都から最も離れた辺境の家々の窓ガラスさえも一瞬で粉々に打ち砕いた。



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