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第21.2章:陰鬱ないななきの残響

【裏切りとの遭遇】


首都の冷たい裏通りを歩きながら、マルセリンはポケットの中にある首飾りの不気味な重みを感じていた。


(なんだか昏くて、冷たいな……)


その物体に奇妙な親近感を覚えながら、彼女は口元を歪めた。


(ふふ、私にぴったりじゃない)


一体どのような呪いによって、これほど凶悪な遺物が作られたのだろうか。そんな思索に耽っていた瞬間、霧の中から現れた不意の人影とぶつかり、彼女の思考は遮られた。


「おや、お嬢さん、もう少し気をつけて歩かないと……おや。マルセリンじゃないか」

「え? レモン……?」


マルセリンは足を止めた。そこには完璧なスーツを纏った男が立っていた。


「ここで何をしているの? 本部にいるはずでしょう?」

「ああ、まあ……ちょっとした仕事の用事でね」レモンはぎこちない笑みを浮かべ、わざとらしくネクタイを直した。

「ライデン(雷電)を探していてね……おっと、藪蛇だったかな」

「ライデンを探している?」マルセリンの吸血鬼としての嗅覚が、即座に大気の緊張を察知した。

「どういう意味?」

「ハハハ、ええと……ジリおじさんが、一緒に来てくれって頼んできたんだ。状況が厳しくなってきてね……ほら、最後に会った時、一緒に行こうって言っただろう……」


マルセリンは眉をひそめた。


「え? でも、私がレンの国で彼に会った時、彼は『直接セミナリー(神聖本拠地)に行く』って言っていたけれど……」

「そ、そうだったのかい? だから手紙に返事がなかったんだね、ハハハ……」


レモンの言葉が泳ぐ。マルセリンは、吸血鬼の本能によって彼の心拍数が異常なほど跳ね上がったのを見逃さなかった。皮膚から立ち上る恐怖と冷や汗の匂いは、紛れもない裏切りのそれだった。


「レモン……どうしてそんなに怯えているの?」

「僕が? ああ、そうね……神学校の任務はすごく大変だしさ。それに、ジャックおじさんは時々すごく厳しいから……くそっ! また口を滑らせた!」レモンは最悪の失策に気づき、目をぎゅっと閉じた。

「ジャック……?」


マルセリンの周囲の空気が、一瞬にして氷点下へと凍りついた。


「レモン……ジャックって誰? まさか……ジャック・ザ・……」


突如として、マルセリンの思考は鉛のように重くなり、脳内が耐え難い雑音で満たされた。目に見えない圧倒的な圧力が、彼女の身体を四方から縛り上げる。


「くそ……僕って本当に口が軽いよね、エンジ?」

「十二人の第六位ともあろう者が。もうお前を信用するのはやめるべきだな」


路地の闇から、背が高く威圧的な人影が音もなく現れた。犯罪組織『VOID』の一員であるエンジが、その瞳に破壊的な電撃の光を宿し、彼らに向かって歩み寄ってきた。

レモンは歪んだサディスティックな笑みを浮かべ、拘束されたマルセリンを見つめた。


「まだスワッチ僧侶には会いたくないな……五条にもね」


*


【騎士の覚醒】


「あっ……!!」


その鋭い叫び声が、宿屋の静寂を暴力的に切り裂いた。


冷や汗で全身をびっしょりと濡らしながらベッドに横たわっていたローズは、弾かれたように激しく身体を起こした。脳内のいななきは止むどころか、今や耳をつんざくほどの咆哮となって響き渡っていた。まるで鋼鉄の種馬が、自らの眼球の裏側を縦横無尽に駆け回っているかのようだった。


「ああっ! これは何だ?! 止まれ、止まってくれ……っ!」


彼は両手のひらをこめかみに強く押し当てながら、狂おしく咆哮した。

異変を察知し、リリアが顔面蒼白で部屋に駆け込んできた。


「ローズ! どうしたの?!」

「その……あの首飾りは……」ローズは、もはや自らのものとは思えないほど掠れた声で、かろうじて言葉を絞り出した。

「え? それなら、マルセが持って……」

「あの首飾りを、今すぐ俺に引き渡せ!」


その怒号はあまりにも突発的で凄まじかったため、リリアはその衝撃に本能的な恐怖を覚え、一歩後ずさった。


「ごめん、ローズ、私が持っているんじゃないわ。彼女が預かっているのよ……」

「マルセリンはどこへ行った!?」


ローズは四肢を焼くような痛みを力任せにねじ伏せ、ベッドから飛び起きた。首飾りの叫びは、今や彼の脳内で世界の終わりを告げる警報のように鳴り響いていた。


「万丈のボードアーマー:ビショップ・アーマー!!」


――フッ!!


部屋の空気が一瞬にして重厚な金属の圧へと変わる。残留する黒鋼のエネルギーが激しく火花を散らす中、ローズは人間の限界を遥かに超越した速度で、宿屋の窓枠を蹴って跳ねた。

闇の底から自らを呼び続ける金属の微振動を正確に捉え、彼は漆黒の夜のとばりへと身を投じた。


*


【沈黙の洞窟:ドラマと恐怖】


石に滴り落ちる水の冷たい音だけが、マルセリンの早鐘のように鳴り響く鼓動に重なっていた。彼女は太い鎖で拘束され、その吸血鬼としての強大な力は、全身に刻まれたルーンの封印によって完全に封じられていた。


「うっ……? ここは……どこ……?」魔法の鎖の冷たさに喘ぎながら、彼女は必死に腕を動かそうとしたが、びくともしなかった。

「マルセリン・ダークネス……」暗闇の奥から、吐き気を覚えるほどの不気味な礼儀正しさを帯びた声が響く。

「偉大なるウラジミールの娘よ……一体どのような不運に見舞われて、こんなおぞましい穴ぐらに迷い込んだんだい?」

「レモン!」マルセリンはその忌々しい名を憎しみを込めて吐き捨てた。

「何が起きているの? 私に何をするつもり!?」


レモンは松明の揺らめく明かりの中に姿を現し、困ったように首筋をかいた。


「個人的な恨みがあるわけじゃないんだ。君のような鋭い舌を持つ鋭敏な女性の前で、余計なことを口走ってしまった私の不徳の致すところさ」

「ジャック……? まさか、本当に……」

「その通りだよ」レモンが告げたその声には、隠しきれない傲慢さが満ちていた。

「ジャック・ザ・リッパー。VOIDの絶対的なリーダーだ」

「レモン、もういい」エンジが冷酷に割り込み、拘束されたマルセリンを冷たい獲物のように見つめた。「彼女は、組織の機密を知りすぎた」

「ここでの問題はね、お嬢ちゃん……」レモンは邪悪な笑みを浮かべ、不気味に輝く紫色の短剣をゆっくりと抜き放った。

「……これから、君の存在をこの世界から完全に消去しなければならないってことさ」


マルセリンの背筋を、かつてない不快な死の恐怖が走り抜けた。今の彼女は完全に無防備だった。

しかしその瞬間、破れた服の奥深くに隠されていた『遺物』が、彼らの殺気に呼応するように激しく反応を始めた。ポケットの中の首飾りがリズミカルに輝き出し、周囲の闇を侵食するような、どす黒い光の鼓動を打ち始めたのだ。


――ドキ……ドキ……ドキ……


神の都の闇の中。一条の影のようなシルエットが、その首飾りの放つ金属の鼓動に導かれるように、物理法則を置き去りにした圧倒的な速度で、夜の街を駆け抜けていた。


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