表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/37

第19.1章:力の重みと風の香り

ベネシアの使節団が選出されると、一行は国境を越えて二日かけて移動する馬車に乗り込んだ。しかしローズにとって、この旅はSランクのダンジョンよりもはるかに過酷なものだった。


馬車内の空気は重苦しかった。重く、まるで電気が張り詰めているかのようだ。


(なぜこんな奇妙な空気が漂っているんだ……?)


ローズはそう考えながら、横を見ないように必死に耐え、冷や汗を一滴、こめかみに流した。馬車の御者台に座り、大げさなほど優雅に馬を操る五条ゴジョは、悪戯っぽい笑みを漏らし、繊細な仕草で耳の後ろの髪を整えた。


「へへ……マルセリン、君は本当に小悪魔だね。そのスタイル、最高だよ!」


車内では、マルセリンがローズの腕にほぼ溶け込むように寄り添っていた。彼女の微笑みは、瞳の鋭さだけで火の呪文を唱えそうなリリアの視線への、あからさまな挑発だった。


「うーん……ローズぅ」

「は、はい……?」


青年は、ほんの一センチでも身を引き離そうと、たどたどしく答えた。


「急に『女たらし』になったの? それとも、枕代わりにされるのが好きなのかしら? 自分の立場をわきまえなさい!」


マルセリンの陶酔的で挑発的な香りと、リリアの殺気立ったオーラに挟まれ、ローズは馬車の隅に向かって無言のSOSを送った。


(老いぼれ、助けてくれ……!)

「グゥ……ピー……」


スワッチ僧侶は、道の凹凸に合わせて鼻の提灯が上下する中、安らかに眠っていた。


(役立たずのジジイ……)ローズは心の中で毒づいた。

「ところで、ローズ……」マルセリンはさらに身を乗り出し、猫のような自信に満ちた様子で彼のパーソナルスペースに侵入した。

「どっちの方が、お・好・き?」


シーン……。


沈黙が支配した。正面からゴジョの透き通るような笑い声が漏れ、リリアの目は純粋な怒りで輝き、スワッチの鼻の提灯がパチンと弾けた。ローズは、その自殺行為とも言える質問に答えるくらいなら、アンデッドの軍団と戦う方がましだと思った。


「マルセリン……」リリアのオーラが膨張し、窓ガラスをみしりと震わせた。

「彼は私の奴隷よ! 女王様が私の私有物だと宣言したの!」


(これで本当に俺の奴隷扱いが確定したのか……?)


圧力が耐え難いほど高まったその時、皮肉たっぷりの甘美な声が彼を地獄から救い出した。


「ローズ、お利口さん。僕のそばへおいで」


ゴジョは歌のような口調で命じた。


「この手綱を助けてほしいんだ。このありふれた風で、僕の手がカサカサになっちゃうからね」

「五条先生、ありがとうございます!」


ローズは、沈没船から飛び出すかのように、御者台へと飛びついた。


*


【「風の踊り子」の教訓】


道中の風がローズの顔を涼しく撫で、恥じらいの熱を和らげた。ゴジョは彼を横目で見て、口調をいつもより温かくした。とはいえ、特有のあの軽妙な色気は失われていなかった。


「ねえ、こんなにも力のあるフローレスを見られるなんて思ってもみなかったよ。僕の可愛いリリアの支えになってくれるなんて、本当にありがたいことさ。彼女は時々……すごくネガティブで、ちょっと輝きに欠けるからね」

「そう思いますか?」

「ハハハ! 信じてくれ、君は彼女のことをまだよく知らないんだ。でも、本題に入ろう……」


ゴジョの声が一オクターブ下がり、戯れのような口調は消えた。


「君も経験しただろう? 中央首都への襲撃を」

「ええ……」

「あいつらは別次元だ。だが心配ないよ」ゴジョは手を振って軽くあしらうように言った。

「知ってるだろう? 君が去った後、十二人のうちの一人が瞬く間に問題を解決した。世界は広大だ、ローズ。そこには本当に強い人間がいる……僕のような人間がね」


ローズは膝の上で拳を握りしめた。


「でも、僕は……?」

「君が彼らと戦ったことは知っている。他の誰にも見えないものを見たんだろう? だから君を連れてきた……その情報が必要なんだ。でもその前に……」


ゴジョはいたずらっぽい目つきで、危険なほどローズの顔に近づいた。


「僕自身が試してみたいんだ」

「えっ?」ゴジョの吐息がすぐそばにあるのを感じて、ローズは顔を赤らめた。「な、何を試すんですか?」

「お前の力だよ、このバカ! なんて下品なことを考えてるんだい?」ゴジョは笑いながら、ふざけて彼の肩をポンと叩いた。


「何を期待してたんだ?」

「そんなふうに驚かせないでください、五条先生!」

「腕試しなんて、悪くないな」


スワッチの声が頭上から響いた。僧侶は文字通り、馬車の屋根の上にぷかぷかと浮かんでいた。


「ちょうど正午だし……昼食の休憩を兼ねて、ついでに君のあの金属がどれほど頑丈か試してみようじゃないか」


*


【ポーン vs ハリケーン】


彼らは果てしなく広がる緑の野原に立ち止まった。そこでは空気が澄み渡り、肺が洗われるようだった。まさに今、破壊されようとしている牧歌的な風景だ。


「スワッチ僧侶……本当にこれでいいのですか?」リリアは心から心配そうに尋ねた。

「ローズは二頭のドラゴンと戦ったばかりで、まだ回復途上なのです」


「ハハハ! 心配するなよ。ゴジョは五%も使わないって約束したんだ。彼なりのやり方で、紳士なんだよ」


「私もローズの陣営に加わろうかしら」マルセリンはそう付け加え、少年に向かってウインクした。「私たちの『カップル』なら無敵よ」


リリアは嫉妬で顔を赤らめ、頬を膨らませた。


ゴジョは劇的な仕草で「ダンサー」の威風堂々としたマントを脱ぎ捨て、長い髪を絹のように風になびかせた。彼の存在そのものが周囲の草を押し倒しているかのようだった。空気の圧力が、変わり始める。


「準備はいいかい、お坊ちゃん?」ゴジョは、野性的で猫のような輝きを瞳に宿して尋ねた。


「遠慮はするなよ。さもないと髪が乱れちゃう……それこそ悲劇だ」


ローズは緊張を和らげようと、大きく足を伸ばした。彼の心は、戦闘戦略と、ある不適切な考えとの間で揺れ動いていた。


(くそ……お腹が空いた……それに、この男、怖い!)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ