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壱話・八百比丘尼は微睡みの内に夢を紡ぐ

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11138697の続きが書けました。。。

夢主さんの名前が出てきました。デフォルトの名前は佐伯千早になります。

前回といい今回といい、全体的に設定が緩めです。

今回、メフィストの出番はお休みになります。

自分なりに消化しきれて完結出来ると良いな……(´-ω-`)


※このシリィズは偶然名前が同じだけでBlack Cycより発売されたアダルトゲームのタイトル、もしくはそのシリーズ名とは無関係です。

千早は、微睡みの中で声が聞こえた。

心地良い声が、千早の耳の直ぐ傍から語りかける。

その声に、千早の沈んでいた意識が浮上する。

千早が緩やかに瞼を開ければ、目に飛び込んだのは自分以外の者の姿。

 

「ああ、お目覚めのようで良かった」

 

声の主はそう言って、千早の顔を覗き込んだ。

千早と目が合ったのは、紅い眼。

鮮やかな紅が、口角が上がると共に柔らかな色味に弛んだ。

どうやら、いつの間にか相手の男性の膝の上に座って寝ていたらしい。

 

「来ていたのなら、起こしてくれて良かったのに」

 

千早が拗ねた様に言う。

自分でも知らない間に、幾ら顔見知りとはいえ異性の膝の上に座って寝るとは思っても見なかったと千早は思った。

千早の言葉に苦笑した男は、

 

「起こそうとしましたよ、声を掛けてね。

 僕が声を掛けても、千早さんが寝ていただけじゃあないですか」

 

と、返して来た。

そうは言うものの、怒っている訳ではないらしい。

 

「だって真尋は、気配を感知出来ないのだもの」

 

「別に、僕にステルスなんて無いですよ。

 まあ寧ろ、それだけ貴女に僕は警戒されていないとも言えますし」

 

「それはそうなのだけれど……貴方が来るのは毎度(いつも)、私の寝ていた時だわ」

 

「却説、如何してだと思います?」

 

にこりと笑って真尋に言われた千早は、考える。

何故、真尋は自分が寝ている頃に会いに来るのか?

初めて会った時から、今までずっとそうだった。

そんなに頻発していなければ、只の偶然で済んだかもしれない。

だが、時間帯はまちまちでも、必ず千早が寝ているタイミングで訪れるのだ。

つまりは、そのタイミングに意図してやって来るのである。

……態々(わざわざ)他人の寝顔を見に来る趣味でも有るのだろうか?

 

「……数百年も生きたババアの寝顔なんて、見て楽しいの?」

 

「おや、つれない事を言いますね。

 趣味という程ではありませんが、千早さんの寝顔である事に限るなら楽しいですよ」

 

「……変なの」

 

「知ってます?

 人の好悪の理由は後づけで、直感的な第一印象がまず有りきなのだそうですよ?

 つまりは貴女が生きた年数は関係無く、好きなものは好きだという事です」

 

あっさりと真尋はそう言った。

千早の方は、結局真尋の返答に納得がいかないものの、質問の答えは解らなかった。

 

「……結局、如何して寝ているタイミングに来るの?」

 

「それはですね、実はこの空間は僕の精神世界であり、貴女の夢の延長線上でもある空間だからですよ。

 最初は偶然リンクしてしまったものだったのですが、今では貴女の波長を探って意図的に繋げています。

 まあ要するに『夢の中で会いましょう』な状態なので、僕達は一度も現実には会っていないのです。

 ……お影で『夢を紡ぐ力』で精神世界を創る事の真似事も、大分慣れて来ましたが」

 

「うーん……何か、胡散臭い。

 『夢を紡ぐ力』とか、精神世界とか……如何やって実証するの?」

 

「まあ、信じなくても結構です。

 要約すれば僕と千早さんは、夢の中で逢引きしているという事ですね」

 

「じゃあ私、夢の中でも寝てるのね……真尋と夢で会う時。

 それにしても、胡散臭い話を実証するのをあっさり放棄したわね……」

 

「所詮は聞き噛りで構築した、モドキですからね」

 

そう言って真尋は、再び苦笑した。

 

「……それはそうと、逢引きという言葉に何も思ってくれないんですね」

 

「よく判りもしないで言葉を振り回しているのかと、思ってしまったの」

 

「……如何してです?

 二人きりで会いたいが故に、僕はこうして夢の中に来るのに?

 それとも千早さんは、百年にも満たない人生しか生きていない小僧は恋愛対象外なのですか?」

 

困った様に眉尻を下げた真尋は、少し悲しげに言った。

千早は間近に有る真尋の表情に、僅かに罪悪感を感じた。

真尋と会うのが、厭な訳ではない。

真尋と会話するのも、厭な訳でもない。

嫌なのではなく、失う事が怖くてその手を取る事に躊躇があるだけ。

 

「夢の中でなく……現し世(現実世界)で会いに来てくれたら、ね。

 ……そうしたら、考えてみる」

 

千早は少し考えて、真尋にそう言った。

真尋はそれに対して嬉しそうな表情になって、

 

「ええ……貴女のお望みなら、必ず探し出して会いに行きます。

 ですから、あの喧しいコウテイペンギンには秘密ですよ」

 

と、言って千早の手を取り、掌に口づけた。

真尋の言う「コウテイペンギン」はメフィストの事。

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