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零話・八百比丘尼と時の旅行者と死を克服した男の独白

無謀にもシリーズに挑戦。

作者はシリーズ完結出来ない症候群を克服出来るだろうか…。

今回は誰の名前も出てこない回です。


追記:3ページ目の人物の一人称が僕と俺で混濁しているのは意図的です。


※このシリィズは偶然名前が同じだけでBlack Cycより発売されたアダルトゲームのタイトル、もしくはそのシリーズ名とは無関係です。

八百比丘尼の独白

 

私が、独りぼっちになって数百年。

この手から、数多の大切なものが零れ落ちて。

いつしか失う事を恐れて、失う前に手放して。

それでも、ずっとずっと。

ずっと、一人は怖くて。

ずっと、独りは寂しくて。

それでも、贖罪は終わらなくて。

何時になったら贖罪は終われるのかと、怯え続けて。

一度救われてから再び堕ちる孤独は、救われずに堕ちるよりも深いから。

モノクロームの世界。

独りきりの世界。

そんな世界で独り、朽ちて逝こうと思っていた。

ひっそりと一人で消えれたら、なんて思っていた。

だけどある日、それは唐突に終わりを告げた。

終わらせたのは、二人の人物。

一人は闇色の眼をした、悪夢(ゆめ)の様な男性。

もう一人は、鮮やかな紅い眼をした男性。

彼らは私を暗く色褪せた世界から連れ出し、世界の色彩(いろ)が豊かである事を教えてくれた。

ずっと忘れていた事を、憶いだした。

世界はこんなにも美しかったのだ、と。

ほんの些細な事でも、可笑しくて。

ほんの些細な事でも、嬉しくて。

飽く事無く、倦む事無く、そして、今では手放せなくなった。

いずれ来る、終焉(おわり)があろうとも。

彼らと私、誰の終わりが訪れようとも。

終局に再び怯えながらも、それでも縋らずにはいられない。

だからこそ、終わるまでは精一杯生きていこうと思った。

悲嘆の海に沈んでいた私を、掬い上げて眼を開かせくれて有難う。


時の旅行者の独白

 

昔、僕は独りぼっちの空間に居た。

物理的に他者―特に人間―から隔離された空間。

孤独な世界で、退屈に圧し殺されそうになりながら。

僕は長らく、独りぼっちで居た。

退屈は、魔女をも殺す死に至る病。

代わり映えのしない空間から出してくれた人が居た。

その人はもう居ないけれど、僕は―――。

外の世界を知り、人間の可能性を知った。

たとえ世界が一巡しても、それでも残る絆がある。

だから「死が二人を別つとも」なんて言葉があっても。

僕は知っている、死は悲劇的な最期でも無く、最悪な結末でも無く。

所詮は個人の人生という名の舞台の終幕程度でしか無い、と。

その相手が死んだ後でも、想いを継ぐ者やその人物を覚えている者が居れば終わりじゃない。

勿論僕だって、素晴らしい人間(ひと)しか居ない訳ではない事も知っている。

人間であろうがなかろうが、高慢ちきな愚物(下らない野心の主)が居る事も承知している。

僕からすれば、他者より能力が優れているだけで総ての頂点に立とうという権力思考や支配思想は馬鹿だと思っている。

能力が高いとか低いとか、そんな事が大事なんじゃなくて。

例えば実体がない時の僕は、人間の様な食事をしても真似事程度だった。

実体を持つようになって面倒な事もあるが、実体があれば味や感触が体感出来る。

そういった「感じる」事の方が、僕は重要だと思っている。

だってそれらは、幾ら金や能力があったってそれらでは得る事が出来ないだろう?

とどの詰まり僕は、プライスレスなものの方が好ましいと言いたい。

そしてそんな僕はある日、彼女を見かけた。

とても寂しげで、とても悲しげで、独りぼっちだった彼女。

僕は彼女が楽しげに笑う表情が見てみたい、と思った。

どうしても放って置けなくて、僕は思わず彼女の傍に行った。

孤獨の沼から掬い上げ、この世界の素晴らしさを彼女と享受したかった。

僕には幾等でも時間はある、なんといっても時間の束縛など受けないからね。

だから、世界の終わりまで……いや、世界が一巡しても。

何度輪廻が巡っても、僕は彼女と世界を愛でたい。


死を克服した男の独白

 

平穏に埋もれるのも、悪くない。

平凡に終わるのも、悪くない。

だが出来るなら……世界の裏側を追求するのも、有りだろう。

そんな風に思っていた。

世界と自身の間に、折り合いという名の薄い結界を張って。

世界は美しくなんてなくて。

でも、世界は醜くもなくて。

素知らぬ振りして、世界を少し斜めに眺めて。

そんな日々の続いていた中で。

ある時見かけた魔性の青(プルシャンブルーフタロ)は、ひどく興味を唆られて。

魅入られて、死ぬかもしれない。

それでも、何時になく気になった俺はその青を選んだ。

色なんて、他にもあったのに。

だが僕は、魔性の青を選び取った。

なにせ、ゴッホも魅入られた魔性の色だ。

魅入られるな、という方が無理というものだろう?

普段は良識という枠に思考を合わせているんだ、たまには枠の外に出るのも良いものさ。

どうせ死は、終わりなんかじゃあないんだから。

人が死んでも、想いが残る。

世間がどう思うとか、そんな事は所詮は目安に過ぎないからな。

世界が一巡しても、輪廻を巡っても、その人物個体の人格は一度限り。

一巡したり輪廻を巡ると魂の記憶はリセットされて、別個体と化す。

それでも本質的なものが変わらないなら、同一とも言える。

考え方次第、とも言うな。

それなら俺は、人生という舞台を途中降板せずに、しかし、自身の人生の主役ではなく、世界の狂言回しの役回りで有りたいものだ。

それ故に僕は、死を以って生が完成するという人間という生き物で有り続けよう。

人を超える、或は、人を廃めるなんて事は思ったより簡単なのだ。

人間の定義の範囲で、人間として生き続ける方が難儀というものだからさ。

人間の定義というのも、最大公約数のものだとなお苦しいだろうな。

個人の認識での人間の定義というのも、まァ人間それぞれな訳で。

兎に角……そんな人間の俺は、彼女の様な不老不死もアイツの様な時間の旅行者(タイムトラベラー)でもないが、魔性の青の先で見つけた人生で二人に出会った。

アイツは他人で有りながら俺で、僕で有りながら他人。

種族とか出自とか過去が違うと言っても、本質は『同じ』なのだ。

そんな関係だからこそ解る。

僕もアイツも、彼女を見かけて一目惚れしたのだと。

だからこそ俺は、彼女に知って欲しい。

闇も恐ろしいだけのものじゃあない、包容力を持った暖かなものでもあるという事を。

pixivで自分(作者)が書いた最初のシリーズものを、改めてなろうにも投稿した次第。

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