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Snowdrop ~雪の華 あなたの死を望みます~  作者: 黒龍
動き出す

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15.アリアスの過去

 あら。お忙しいところをお見せいたしました。失礼いたしました。

 ご一緒に行動されるとのことでしたが、さすがに、クラシア様のご命令となれば、さすがにご一緒していただくわけにもいかず、あの場に隠れていただきました。申し訳ございません。

 気にしておられないようですと幸いです。

 ……ありがとうございます。それでは、わたくしも命令をこなし終えましたので、これからはわたくしのお仕事の様子をご覧いただいても構いませんが、いかがいたしましょう?

 さようにございますか。わたくしに聞きたいことですか。お答えできる範囲で構いませんが。

 そうですね。先にお話しするとするなら、わたくしの生い立ちからについてでしょうかね。

 わたくしは、帝都から西に500キロほど離れた団地に3人兄弟の末っ子として生まれました。

 わたくし、生まれながらにしてほかの家族とは違うところがありました。それは、生まれつき、火の魔法を操ることでした。

 もちろん、生まれたときは家族のだれ一人気付くことはなく、わたくしも魔力を扱うことができるのを知ったのは小学生の時です。

 今は連絡を取ることもできない友人と本で魔法使いがいることを知り、ふざけて本の中身の言葉を真似すると、わたくしの指先から炎がボッと出ました。

 そのときはじめて魔力が扱える魔法使いがわたくしなんだと気づきました。

 そして、その友人と「これは絶対に秘密ね」という二人の秘密として闇に葬るつもりでした。

 ですが、そこからしばらくして、わたくしがなにかの拍子で呪文を唱えてしまい、魔法使いだということが知られてしまいました。

 それだけで済めばよかったのですが、その当時はすでに、魔動力規制法が施行されて10年ほど経っておりました。一般に大きく広まることは当時あまりありませんでしたが、やはり、そのような異端児はいじめられてしまうのが世の流れ。

 そこからわたくしは長い間、いじめと戦う羽目になるのです。

 いじめられるようになってからというもの。いじめを跳ね返すくらい強くなりたいと思ってしまい、魔法のことをムキになって調べ始めました。それが仇になったのでしょうか。

 我慢の限界を迎えたのか、炎魔法が暴発してしまい、いじめの主犯格の子、そして、何も関係のない子を巻き込んで焼き殺してしまったのです。

 当時、魔法で人が殺されるという事件はそうありませんでした。というのも、魔力を持たない人間が魔法の力を受けることはありません。

 ですが、殺してしまった子供たちは、本人たちが気づくことなく、魔力が流れていたのです。そのせいで焼き死んでしまった。ということです。

 こういった事象は世の中を震撼させ、わたくしは後ろ指をさされることになりました。そして、それは、私が家族に見捨てられるということになります。

 もちろん、家族に見捨てられたわたくしは、実家も追い出され、行く宛てもなく、たまに使うことができたテレポートでこの国のいろんなところに飛んでは残飯をあさり、白い目で見られてはその夜にテレポートでどこかに飛び。みたいな生活をおそらく1年弱続けていました。

 クラシア様に出会ったのは、そのような生活に慣れたころでした。

 たまたま帝都に近い場所にテレポートできたとき、目の前にクラシア様がいたのです。もちろん、当時は名前など知る由もありません。なので、クラシア様のお名前が出るまでは、“女の人”と呼ばせてください。

「あなた、今、どうやって私の目の前に!?さっきまでいなかったじゃない!」

 その時、わたくしは、面倒な人の目の前に出てきてしまったんだと思いました。今まで誰かの目の前に出てきたことなんて一度もありませんでしたから。

「わかった!あなたもわたしみたいに魔法が使えるんでしょ?それっ!」

 気が付けば、女の人の手には何もなかったのに、気が付けば、格好いい刀を手にしていました。わたくしは少しあっけにとられていました。

「ねぇ、あなたも私の目の前に現れたって言うことは、何かできるんでしょ?やって見せてよ!」

 人の好奇心がこれほどまで怖いとは、この時まで思いもしませんでした。あのとき、なぜ、テレポートが使えるときに浸かってしまったのだろうと後悔しました。テレポートで後悔したのは初めてでした。

 そして、当時の記憶がフラッシュバックしていたわたくしは、その記憶を振り切るように、炎魔法を発動させていました。

「おっと」

 やってしまった!と思ったときにはもう遅く、怒りで燃え盛る炎魔法は、暴走気味に発動され、女の人の方に飛んで行ってしまいました。

 しかし、女の人は軽々とわたくしの魔法を刀で受け止めるどころか、受け流してしまったのです。

「威力すごいね!私びっくりしちゃった!私、小さいのに、こんな強力な魔法が使える人にであったことないよ!ねぇ、おうちどこなの?私もついていっていい?」

 まさか、そこに触れられると思っていなかったわたくし。身体が急に硬直し、動かなくなってしまっていました。

 ですが、なぜか、この人になら本当のことを話してもいいかもしれない。と思ってしまったのです。

「わたしに家族はいない。いじめられて、思わずさっきの魔法で人を焼き殺した。そこから、家族に縁を切られて、おうちにも入れてもらえなくなって……」

 今まで起こったことのすべてを名前も知らない女の人に話していました。

 そして、気付けば言葉が言葉にならなくなっていて、なにかをすすっている声がわたくしの耳に届いたとき、私は泣いちゃっているのだと気づきました。

 なんとか話し終えると、女の人は私を暖かく包み込んでくれました。

 忘れかけていた人のぬくもり。久しぶりに感じることができて、わたくしは思わず、泣いてしまい、しばらく泣き止むことはありませんでした。

 そして、わたくしが落ち着くと、女の人は優しく話しかけてきました。

「つらかったね。でも頑張ったね。そんな頑張ったあなたにご褒美上げる。この紙を上げるから、頑張って行ってみて。そこにもっと大きなご褒美があるから。あっ、あと、名前、教えてくれる?」

「カルア・アリアス」

「アリアスちゃんね。私との約束守れる?」

「うん」

 当時、まだ小さく、優しくされたことがなかったわたくし。ご褒美という言葉に大変弱く、トコトコともらった地図を頼りに歩いていきました。

 着いた先は、どうやら孤児院だったようで、それに気づいたのは、そこから通っていた小学校を卒業するときでした。だけど、そんなことはまったく気にしていなかった当時。魔法を封印して、本当の小学生みたいに暮らしていました。


 そして、時は流れ、わたくしはあっという間に高校を卒業する年になりました。

 孤児院には、高校を卒業する時までと決まっていたため、高校を卒業すること。それは、同時に孤児院も卒業をしなければなりませんでした

 しかし、わたくし、本来なら進路を決めていなければいけないところ、何も決めずに過ごしていました。もちろん、院長先生や、いろんな人から心配され、呆れられ、それでも自分の道を決め切ることができませんでした。

 自分がやりたいことを見つけることができなかったから。それがなければ、私はいろんな道に進んでいたことでしょう。今のクラシア様のメイド兼補佐というお仕事に就くことはなかったと思います。

 これからの道をどうするか自室で悩んでいた時、院長先生に呼ばれて、応接室に入ると、わたくしの記憶の片隅にうっすらと残っている女性がわたくしの前に現れたのです。

「久しぶりだね、アリアスちゃん」

 見たときは誰かわからず、一緒にいた孤児院の人の顔を思い出しましたが、誰一人思い当たる人がいません。

 しばらくの間、わたくしとその人の間に沈黙が流れました。

「覚えていないよね。8年前、テレポートで私の目の前に飛び出してきたことすらも」

 彼女の言った「テレポート」という単語。なにか引っかかります。

「これでも覚えていないかしら?」

 そういうと、瞬きをした瞬間、何もなかった左手に剣が握られていた。これを見た瞬間、幼少期の記憶がすべて戻ってきた。

「あのときの……」

「やっとおもいだしたようね。直接会うのはあれ以来かな。元気にしていたかしら?」

「はい。でも、どうしてここに?」

「院長先生とはお母さんが友達でね。それに、あなたをここに誘ったのは私だから、気にしていたのよ。それに、逐一あなたのことは聞いていてね。で、何も進路を決めていないことも知っているわ。だから、お誘いに来たの」

「院長先生に、私のことを?」

「あれだけ身体も心もボロボロになっていたのに、見捨てられるわけないじゃない。でも、あれから肉付きもよくなったみたいだし、一安心ね」

「私の顔が見たかったということ?」

「うーん。それもあるけど、さっきも言った通り、お誘い。無理に決めることはないんだけど、私のもとで働かない?」

「あなたのもとで?なにをするの?」

「えっと、そう、ねぇ。私、今何しているかわかる?」

「そんなの、わかるわけないよ。名前も聞いてないし、そもそも人間に興味ないし」

「ちょっと、アリアスちゃん!」

「院長先生、いいのよ。よく考えたら、私も出会ったとき、名乗ってないから、知らなくて当然だと思うよ」

 そうなのです。私の記憶から薄れていたのも、この女性の名前も知らないというのもあったのです。

「アリアスちゃん、この子はルーカス・クラシアさん。最近、この国の最年少で首長になった人よ。ニュース見てなかった?」

 わたくしは首を横に振ります。いかんせん、ニュースなど蚊帳の外だと思っていましたし、ずっとここにいられるから、外のことなど関係ないと思っていましたから。

 そして、時間が経つにつれて、院長先生の言っていることがだんだんととんでもないことになっていることに気づいたのです。

「えっ、ちょ、なんで!?待って!なんでこんなところにいらしたのですか!?しかも、無気力な私を仕事に誘うって、そんな学なんて私には無いですよ!」

 興奮して自分でも何を言っているのかわからなくなりました。

「ちょっとね。人を探していてね。あと、そんなかしこまらなくていいから。そんな関係じゃないでしょ?」

「あっ、いや、でも……」

「いいから。今だけだよ。だんだん慣れてくれたらいいから」

 いやいや、そうおっしゃいますけど、たぶん無理です。当時のわたくし、そう思っておりました。

「それに、あなたに私からお願いがあるの」

「お願い?」

「そう。実はね、私には補佐と専属のメイドがいるんだけど、体調を崩しちゃってやむなくやめちゃったのよ。その代わりを今探していて、そういえば、何も決めていないアリアスちゃんがいるなって思ってさ」

「そ、そんな決め方でいいのですか?私、何もできないし、そんな、政治のことなんて、なおさら……」

「大丈夫。私も今勉強中よ。それに、私も少し甘く見過ぎていて、今がものすごい大変でね~。でも、充実した毎日を過ごしているわ。……ねぇ、アリアスちゃん。行き場をまたなくすなら、私のところに来ない?それなりに大変かもしれないけど、充実した日々を送れると思うの。もちろん、強制はしない。イヤだって言えば、私はもう来ない。でも、成績優秀なアリアスちゃんが私の補佐かメイドになってくれるなら、頑張れる気がする」

 クラシアさんの声は、本当に私のことが欲しそうな声をしていた。正直、この声を聴いてものすごく悩んだ。

 正直、進路が決まっていない私。このまま流れで孤児院の手伝いを無給でしようとしていた。だけど、命の恩人でもあるクラシアさんのこともある。

 このまま命の恩人でもあるクラシアさんと一緒に人生を過ごすか、それとも、クラシアさんと別れて、自分の人生を生きるのか。

 いろいろと天秤にかける中、幼い時の記憶も一緒に天秤の上に乗りました。

 そうだ。またふとした瞬間に魔法を使ってしまうこともある。もしそんなことをすれば、今度こそ殺される。それが、優しいクラシア様の前だとしても助けてくれないだろう。

 そう考えると、お仕事は大変かもしれないけど、平穏にクラシアさんと過ごせるほうがいいのかもしれない。

 だけど、クラシアさんについていくと、一般の世界で友達ができることはないだろう。

「アリアスちゃん、無理はしなくていいから。アリアスちゃんの人生だし、アリアスちゃんには後悔の無いように強く生きてほしいから。また決めたら院長先生に言って。アリアスちゃんが私に就いてくれるっていうなら、迎えに来てあげるし、自分の人生を生きるって言うなら、そっとしておいてあげるし」

 それじゃあね。それだけ言って、クラシアさんは応接室を出て、黒い車の中に身体を滑り込ませ去っていきました。


 そして、あれから数日。眠れない日々が続き、悩みました。ふだんしないミスもいっぱいしました。だけど、私は決めました。

 生きている間は、命の恩人でもあるクラシアさんにお仕えすると。

 そこからは風が過ぎるように物事が進んでいって、気付けば、わたくしはクラシア様の側に仕える身になったのです。

 まぁ、最初こそ、失敗ばかりでクラシア様には大変ご迷惑をおかけしました。ですが、クラシア様はわたくしを責めず、許していただきました。

 そんなクラシア様との生活が長く続き、今では昔のように馴れ馴れしいことはありませんが、クラシア様と仲良くさせていただいております。

 ただ、そのクラシア様、ここ3年ほどずっとピリピリされ続けておりますが……。

 わたくしも刺激しないように気を付けているつもりではいます。

 これくらいでしょうか。わたくしの昔話は。懐かしい記憶も戻ってきました。思い出させていただき感謝申し上げます。

 さて、ほかに何かお聞きなりたいことはございますか?ないようでしたら、帝都の大雑把なご紹介をさせていただきましょうか。

投稿開始から早10日。

ご覧いただきありがとうございます。

お陰様でPVが500を超えました。

こんなことで喜んでいいのか?と思うところもありますが、

たくさんの人に読んでいただければ幸いです。


さて。お話もそろそろ終盤に差しかかろうとしています。

これからどうなっていくのでしょうか?お楽しみに。


黒龍

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