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Snowdrop ~雪の華 あなたの死を望みます~  作者: 黒龍
動き出す

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12.動く

 アリアスから昨日の出来事を報告された時、かなりの高揚感を覚えてしまった。

 ムーンライトに何度も調べさせても何一つ情報がわからなかったのに、たまたま遭難した山岳警備隊が情報を持ち帰ってきたのだから。

 まぁ、遭難のことに関しては、厳しく指導する様に伝えたが……。

 ただ、しかし、シュルムー山の洞窟に奴らのアジトがあるとは思わなかった。

 近場ならまだしも、ここから約150キロ離れているんだぞ?そんな遠くから襲撃されると思うか?普通。

 なにより悪質なのは、ウィリアムだ。地位を盾にムーンライトでスノードロップの居場所を探り、地域が判明しても報告も何もしなかった。

 まぁ、やつの場合は私を殺すために探していたから、報告することはまずないか。

 さて、ここからどうするか。シュルムー山中にやつ1匹なら、数にものを言わせて生け捕りにするのが筋だろうが、アリアスの報告では、正体不明の5人が黄金色の防具をしてエルトゥーヤ同様、戦闘態勢に入ったとのこと。

 しかも、魔法攻撃を使ってきた。

 他の魔力が扱える奴らが相手なら一般の兵士には大きく影響はない。しかし、エルトゥーヤがいると別だ。

 やつは魔法を使わず、武器で応戦することもできるからな。

 とりあえず、偵察部隊を送り込んで、中の状況を確認させて機械兵を送り込むか。

 機械兵は、人的被害が内容に作られた人型攻撃ロボットなんだが、破壊しようとするなら、爆発・爆風が伴う。それを奴らは知っている。

 やつらの強引さに、機械兵が爆発した理由を国民に説明するとき、ごまかすのに苦労した。

 機械兵の弱点は、主に雷属性魔法と炎属性魔法だ。

 両方の魔法を使われると、通信ケーブルがやられて制御不能になるし、炎属性魔法を使われると、爆発を誘われる。

 あと、この前やられて発覚したのは、首を刎ねると爆発する。ということ。これには私も驚いた。

 それに、爆発となると、帝都外にも爆風・振動が派手に響いてしまう。

 前回は、帝都の入り口で機械兵を投入して、爆発・爆風を発生させられた。ただ、今回は山の中だ。少しの揺れは発生するだろうが、ほとんど問題はないだろう。あのあたりに人は住んでいないはずだし。

 とにかく、準備ができた偵察部隊を送って報告を受けてからにするか。

 アリアス……は、ジュリエッタのもとに行ったか。戻ってくるのを待つか。

 戻ってくるまで、少し姿勢を崩して楽にするか。

 こんな姿、アリアスにすら見せたことないよな。なんて思いながら天井を見上げる。

 すると、ドアがノックされる。アリアスが戻ってきたのか?

「開いている」

「失礼いたします」

 そういって入ってきたのは、やはりアリアス。

「もう戻ってきたのか?」

「いえ、そのようなわけでは……」

 アリアスは何か言いにくそうにしているな。なにか問題ごとか?

「クラシア様、わたくしも普段から召喚鳥を召喚して手紙などを運んでもらっていますが、わたくしも今気づきました。召喚鳥は、微力の魔力で召喚させることはできますが、飛ばしたり運んでもらったりとなると、召喚の魔力以外に飛ばすための魔力も必要です。さすがに約150キロメートルも離れるとなると、相当な魔力消費が考えられます」

 ……そうだった。アリアスやレイチェルの召喚鳥と同じように考えてしまっていた。この二人、召喚鳥を飛ばす距離はだいたい片道300キロ。それが当たり前と考えていた。

「アリアス。もし、魔力を使える偵察部隊が召喚鳥を飛ばそうとするなら、何キロくらいが限界だと思う?」

「おそらくですが、街から街までのわずか。場所によると思いますが、片道15キロメートルが限界かと」

 約15分の1か。できること、なにかあるか?

「リレー方式を取りますか?」

 アリアスが提案してくる。

 そうか。その方法があったか。それなら、徒歩や乗り物で帰ってくるより速く中の様子を知ることができるか。

「名案だ、アリアス。探すのが難しいかもしれないが、少なくとも20人を確保してくれ。あと、それが終われば、防衛相に出向いて、機械兵の手配もしてほしい」

「機械兵、ですか」

「あぁ、生身の人間だと、向こうも容赦はしないだろう。向こうで人員被害を出したくないというのもあるが、なにより、帝都の警備に人員をかけたい。機械兵なら、金銭的損失は出るが、もともと反政府勢力を潰すために作らせたものだ。これが終われば使い道がなくなるわけだから、使っておきたいというのもある」

「かしこまりました。それでは失礼いたします。クラシア様はいかがされますか?官邸にお戻りになりますか?」

 そうだな。奴らのせいで仕事も溜まっているし、片づけていくか。

「あぁ、そうする。やらなければならない仕事が多すぎて、少しでも片づけておきたい。ことあるごとに執務室へ報告に来てくれ」

「かしこまりました。それでは失礼いたします」

 アリアスはそういうと、出ていき、私も頃合いを見て応接室を出て、官邸に戻る。

 久しぶりに歩いて戻るか。少し気分転換もしたい。というのが本音だ。


 ……そういえば、なぜ山岳警備隊が戻ってくることができたのだ?

 アリアスの報告では、遭難した後、スノードロップと遭遇し、交戦。怪我をしたものの、重傷者・死者なしで戻ってきた。

 普段の奴なら、殺すはず。なぜ、生きて返した?

 私なら、口封じのために殺して埋めるか、人質交換のための手段に使う。

 しかし、今回はそれすらしてこなかった。

 今までの反政府グループは私も含めてずっとそうしてきた。殺されて返されたなら、こちらも殺して返した。それが交渉術というものだろう。そして、その交渉は秘密裏にして、できるだけ部隊の安全を図ってきたつもりだ。

 だから、怪我を負いながらも生きて帰ってきたと言われたとこは幻でも見ているのかと思ったほどだ。

 こうなってくると、さらに政府(わたしたち)が混乱する。それが目的なのか?

 エルトゥーヤ。貴様は何を企んでいるんだ……。

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