96/100
夜が明けたら君は①
チャイムと同時に駆け出した。
財布とスマホと定期券と、ナイフとロープとライターと、「さよなら」で括った手紙を入れた鞄を持って、帰り道とは反対方向の電車に乗る。
揺れる電車が、藍色の空に押しつぶされそうな夕陽を追い抜いていく。
生きなければいけない朝は、もはや過去にしかない。
片道分の切符を手に、私は、わたしは、行けるところまで行くの。
うとうとしながら夢を見た。
足元が水に濡れて、嵩が増え、電車が海の中へと沈んでいく夢だ。
息苦しい。
顔が紅潮して、涙が泡のように溶けていく。
鞄の中身がバラバラに飛び散って、私だけが沈んでいく。
夢から覚めると、世界は夜だった。
車窓からは真っ暗な海が見えた。
何かに呼ばれるように、導かれるように、名前も知らない駅に降りて、少しだけワクワクしながら、海を目指した。




