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カップのアイス
カップのアイスの端っこが溶けはじめていた。
平らな木のスプーンはすんなり入って、くるりと一周走らせ口に頬張る。
二口目を躊躇う甘さとバニラの香りが広がった。
まだ湯気の立つストレートティーを飲む。
本のページをめくる。めくるといっても電子書籍だけれど。
エアコンの温度を一度上げた。夜はここからが長いのだ。
通知が入ってスマホのロックを外す。
味のしないSNSをスクロールしていく。
気になる投稿でさえ指は止まらない。一つのベルトコンベアを止めるためには、連なるラインの機械を全て停止させる必要があるのと同じ理屈だ。いや、そこまで大げさじゃないけれど。
アイスの表面をスプーンでなぞる。
東京の人が大騒ぎする歩道の雪みたいな量を口に運ぶ。
中心はまだ、固いまま。




