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途中下車
知らない駅で降りた。
それは無人駅で、線路も一本しかなくて、見渡す限り人の気配というものがまるでない。
ポケットから取り出したスマホには大量の通知が入っていた。
今まで無視をしていたけれど、観念して電話を掛けた。
「何時だと思ってんだ。無断欠勤だぞ。今どこだ、いつ出社すんだ」
「捲し立てないでくださいよ」
通話越しから怒声が鼓膜を打った。朝起きたら抜け毛が五十本くらい枕に落ちていればいいのに。
「いまはー、えー、どこだろここ」
「ふざけてんのか」
「いやぁ、電車の中で寝過ごしちゃって」
「あー、もう分かった。午前休で申請しとくから午後には出社しろ」
「いや全休でお願いします。ついでに明日も」
「……一応、理由は」
「プライベートの所要につき」
「ふざっ」
通話を切って機内モードに変更し、海に向かって歩き出す。
無人駅にはすっかり人がいなくなった。




