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消火!
パトランプとサイレンの音が周囲に緊張を走らせる。
俺は急ブレーキを掛けて運転席から飛び降りた。
「ちょっ、何してんだ」
「何って火事ですよ! 消化しなきゃ!」
車両後方へと回り、ホースを取り出す。
ノズルをはめてバルブを回そうとしたとき、先輩の手が重なった。
「待て待て待て」
「邪魔しないでください! 人命が!」
「あれは火事なんかじゃない!」
「どう見ても燃えてるじゃないですか!」
「違う。あれは、ただのアツアツなカップルだ」
「くそっ!」
何が聖なる夜だ。性なる夜の間違いだろ。こんな人通りの多い場所でいちゃいちゃしやがって!
先輩とバルブの取り合いは力が拮抗している。血涙が流れそうだった。
消火だ。小火でも消火だ。消火消火消火消火消火消火。
先輩をぶん殴ってバルブを回した。
「放水!」
カップルが吹き飛んだ。
ははっ、これで俺の命が救われた。




