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偶像
気持ちが悪い。
規則的な電子音が耳の奥にまでこびりついていた。
目を開けると暗くて狭い部屋を視界が捉えていた。
体には色々な管が付いていて、口元はマスクに覆われている。
何も、なにも、思い出せない。
次第に瞼が重たくなっていく。
抗うことはできず、意識は再び暗がりへと落ちていった。
次に目を覚ますと、世界は明るかった。
息を呑む音が聞こえた。
わずかに首を動かし目を向けると、口を開けて呆けた女性が立っていた。
はっとしてその女性が部屋を出ると、他に数人を伴って戻ってきた。
何事かを尋ねられたが、声が出ず返答に困った。
その後も、たくさんの人がやってきた。
その誰もを俺は知らなかった。
その誰もが俺になる前の俺しか知らないのだ。
全員、俺自身も、俺だったものを見ようとしていた。
ただひたすらに、気持ちが悪かった。




