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接点
「なんの話だっけ」
とは生まれた時から数十年を一緒に育った友人の口癖だった。
早いうちから確立されていた自己の世界に陶酔しており、親兄弟親族はおろか学校の先生や友人、会社の同僚や上司の話でさえ聞いていなかった。自然とそれをフォローするのが私の役目になっていた。
「なんで人の話を聞かないんだ」
病に伏して、病院のベッドとその数メートルが世界となった晩年でも変わらぬ友に、幾度と尋ねてきた質問を重ねた。
「聞こえてましたよ」
「は? じゃあ、なんで」
「私の世界に入っていたのがあなただけでしたから」
「分かるように説明してくれよ」
「ふふっ、あら、何の話でしたっけ」
朗らかな笑みを浮かべた友人と交わす最後の言葉が、呆けたのか口癖だったのか、私には判別できなかった。




