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通行料
小さな子どもというのは境界が曖昧で、しかも簡単に飛び越えてしまう。
ユイはくろすけを追いかけて行ってしまった。
後を追おうにも、私だけではもう越えられない。
路地から二又の斑猫が顔を出した。おいでと私を呼んでいるみたいだ。
「ごめんなさい」
私はむくむくと大きくなった斑猫の背に飛び乗った。
ぐんと風を感じて目を瞑り、次の瞬間には景色が変わっていた。
「ユイ!」
立ち止まる斑猫の先に、くろすけを楽しそうに追いかける背を見つけた。
ここじゃダメだ。
これ以上は行ってはいけない、と警鐘が頭蓋を割る。
でも——。
「おねがい」
背をぽんと叩いた意図を汲んで、斑猫がユイの目の前で私を下ろした。
「あーちゃん!」
「ご飯の時間だよ」
「うん!」
くろすけを両手で掴んだユイを私の代わりに斑猫の背に乗せた。
ごめんなさい。
走り去るその背を見送ることしか私にはできなかった。




