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種のようなネズミ
身ごもった一匹のネズミがいました。
そのネズミには種の繁栄という使命がありました。
繁栄にはとにかく数が必要でしたので、ネズミは十匹の子どもを産みました。
それらのネズミも同様の使命を帯びていましたので、ある者はさらに子を産み、ある者は種をまきました。
細々と暮らしていたネズミたちは、いつしか人の世の隙間に入り込んでいきました。
寝ている間に殺されることはありません。
無闇に歩いても食べ物が転がっています。
子は好きな時に際限なく産み増やせます。
もはや絶滅などという言葉は死に、ネズミたちは栄華を極めました。
ゆえに、繁栄を謳歌していたネズミたちは、次第に使命を忘れていきました。
そうしてネズミは、ただのネズミになりました。




