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落としもの
泉に斧を投げ入れた。
しぶきを上げて落ちていく斧を眺めていると、美しい泉の女神が噂通りに現れた。
「あなたが落としたのはどちらの斧ですか」
右手には金、左手には銀の斧が握られている。
「どちらも私の物です!」
さあよこせ。俺はそれらを売っぱらって、木こりなんてやめて遊んで暮らすんだ。
女神は金の斧を水平に持ち上げると、横なぎに払ってみせた。
「は?」
くるくると視界が回る。
何かに頭を掴まれて、首のない体が音を立てて泉の中へと倒れ込んだ。
不摂生でだらしのない、怠惰を絵に描いたような俺の体。
首から溢れ出ている血で泉が真っ赤に染まっていく。
血の気が引いて意識が遠のいていく。
「あなたが落としたものは命でしたね」
優しく穏やかで憐みのこもった声を最後に、俺は泉の中へと沈んでいった。




