決着
俺は痺れを無視して立ち上がる。
「へぇ……。まだ立てたのか。それで? そいつの敵討ちってか? ハハハ!」
ケアンを無視して、倒れるキースに近づく。
「…………阿呆が」
ピクリとも動かないキースにそっと触れてから、俺はケアンを見た。
「……っ!」
俺の視線に、ケアンが怯む。
「なっ…何だ、その目は! この死に損ないが!!《雷よ、貫け!》」
雷の槍が俺に向かって来る。
「……阻め」
だが、俺の一言で雷の槍は地に落ちた。
「なっ!!?」
ケアンが驚愕する。
「何をしやがった!?」
俺は黙ったまま、一歩ケアンに近付く。
「なら……《雷よ!》」
ケアンの言葉と同時に雷が飛来するが、これも俺に届く前に地に落ちる。
俺はまた一歩、ケアンに近付く。
ケアンの顔色が変わり始めた。
「何でだよ!!《雷よ!》《雷よ!!》《雷よぉっ!!!》」
雷を連発するが、その全てが地に落ちた。
「……!!? ブ、ブラッコ!!」
「はっ!《大地よ、貫け》」
ブラッコがそれまで唱えていた呪文を中断して、新たに呪文を唱えた。
しかし、俺を貫く筈の床は、僅かに亀裂が走っただけで沈黙する。
もう一歩進んだ所で、ケアンが立ち上がりかけた。
しかし、俺はそれを遮る様に手を翳して呟いた。
「もういい。貴様は座っていろ」
メキッ!
「な゛っ!?」
ケアンの身体が椅子にめり込む。
まるで、上から何かに押し付けられたかの様に。
「ケアン様っ!」
それを見たブラッコが叫ぶが、
「五月蝿い」
俺の一言でブラッコの身体も地面に押し付けられた。
ケアンが喘ぐ様に言った。
「て、てめぇ……何を、しやがっ……。そんな、呪文は…しら、ねぇぞ……」
当たり前だ。
この世界の呪文では無いのだから。
普通の数倍の“重力”の所為で、椅子から動けないケアンを見てため息を付いた。
「まったく……。俺様とした事が、何で人間に合わせてやってるんだか……」
俺は独り言の様に呟く。
「最初からこうすれば良かったんだよ。……なあ?」
「何を、言って……?」
「星霊魔法って知ってるか? お前らが使うのとは字が違うぜ?」
喋りながらも、ケアンに掛ける重力を増やしていく。
もう、ケアンには口を開く事も儘ならない。
俺は頭痛がし出したが構わずに重力を掛けていった。
「貴様は俺様の持ち物に手を出した。……呪いなんざ関係無い。星の力で潰してやるよ」
「ぐ、ぎ……い゛《雷よ゛!》」
ケアンが放った雷は、俺を大きく外れて後ろへと向かった。
「阻め」
振り向きもせずに唱えた呪文は、餓鬼の目の前まで来ていた雷を地に落とした。
この期に及んでまだ餓鬼を狙うとは……。
「よっぽど死にたいらしいな」
俺の呟きと共に、ケアンにかかる重力が増える。
「ぐ…が……がはっ!!」
呻き声と共に、ケアンが血を吐く。
重力による圧力で、内臓にまでダメージが行ったのだろう。
同時に、俺の頭痛もピークに達しかけていた。
……あまりの痛みに意識が飛びそうになる。
だが……。
俺は、チラリとキースを見た。
……俺を侮辱したケアンは、殺す。
ケアンにかかる重力を一気に増やした。
ケアンの絶叫が響き渡る。
「ぐ、あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ゛!!!」
次の瞬間。
ゴガッ!!
重みに耐えきれず、ケアンを中心に床が抜け落ちた。
ガラガラガラ……。
瓦礫と共に、ケアンも落ちて行く。
すぐに、ケアンの姿は見えなくなった。
……ここまですれば、ケアンもまず生きていられないだろう。
そう思った瞬間、俺の意識は暗転した。




